プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)パンジャブ州母子保健強化プロジェクト
(英)Project for Strengthening Maternal and Newborn Health Care in Punjab

対象国名

パキスタン・イスラム共和国

署名日(実施合意)

2021年6月11日

協力期間

2021年12月1日から2025年11月30日

相手国機関名

(和)パンジャブ州保健局
(英)primary and secondary healthcare department, Government of Punjab

背景

パキスタンは、南アジアの最貧国の一つであり、国連開発計画(United Nations Development Programme。以下、「UNDP」という。)が発表している人間開発指数は189か国中154位(2019年,UNDP)にとどまるなど、社会開発面で多くの課題を抱えている。保健セクターにおいては、パキスタンの保健指標は南アジアの中でも低い水準にとどまっており、世界で残り二か国となったポリオ常在国の一つであるなど多くの課題を抱えている。特に、母子保健については、2000年から2017年にかけて、妊産婦死亡率は10万人あたり286人から140人へ、5歳未満児死亡率は1000人あたり107.5人から71.6人へ、新生児死亡率は1000出生あたり56.9人から43.2人へと改善したものの、南アジア平均(妊産婦死亡率10万人あたり163人、5歳未満児死亡率1000人あたり44.2人、新生児死亡率1000出生あたり27人)と比較しても一部の死亡率は依然として高い水準にある。また、パキスタンの4州のうち、パンジャブ州は妊産婦死亡率が10万人あたり180人、5歳未満児死亡率が1000人あたり69人、新生児死亡率が1000出生あたり41人(Multiple Indicator Survey Punjab 2017-2018)となっており、特に妊産婦死亡率が国家平均よりも高い状況にある。2014年の国家保健サービス・国家行政・調整省(Ministry of National Health Services, Regulation and Coordination。)による県ごとの調査 では、同州南部の県はいずれの保健指標においても北部の県と比較して低く、5歳未満児死亡率や新生児死亡率では国家平均・州平均を大きく上回る県も存在しており、同州南部での母子保健指標の改善と州内の格差の是正は喫緊の課題である。
パキスタン政府は、国家開発計画「Pakistan Vision 2025」(2014年)の中で、MDGs及びSDGs の達成に向けた7つの柱の一つに「人間中心の開発」を掲げている。また、それをもとに策定された「National Health Vision 2016-2025」(以下「Vision」という。)において、「強靭で対応力の高い保健システムを通じ、すべての国民、特に女性と子どもの健康が改善する」ことを重点課題と掲げているほか、特に新生児死亡については喫緊に取り組むべき課題として位置付けている。さらに、パンジャブ州では、Visionに基づいて「Punjab Health Sector Strategy 2012-2020」を策定し、妊産婦死亡率を出生10万人あたり120人、乳児死亡率と5歳未満児死亡率を1000出生あたり30~40人に削減すること、また低栄養に関し、子供の低体重の割合を30.1%から10%、発育阻害を17.6%から6%、消耗症を14%から5%まで削減することを目標としている。
本事業は、一次・二次医療施設の医療従事者やケアワーカーの、妊産婦・新生児ケアに関する能力強化に加え、同州の保健行政担当者の監督機能強化を行うことで、同州が目指す、住民がより身近な医療施設において、質が確保された母子保健サービスを継続的に受けられる体制構築を支援し、もって同州南部の母子保健指標の改善に貢献するものである。

目標

上位目標

パンジャブ州対象県での妊産婦と新生児の健康状況が改善する。

プロジェクト目標

プライマリレベルを中心とした妊産婦及び新生児へのケアの質が向上する。

成果

1.コミュニティにおける妊産婦、新生児ケアの知識やスキルが向上する。
2.施設レベルでの妊産婦、新生児に対する保健医療サービスが適切に提供される。
3.州及び県における妊産婦、新生児ケアに対する監督機能が強化される。

活動

0.パンジャブ州対象県において、妊産婦と新生児ケアの現状に関する調査を実施する。

1-1.県保健局に妊産婦と新生児ケア改善のための調整機能を担うチームを組織する。
1-2.妊産婦と新生児ケアの現状(トレーニング及び母子保健に関するツールを含む)を共同で調査し、分析を行う。
1-3.コミュニティレベルにおける改善計画を作成する。
1-4.改善計画に基づく人材へのトレーニングを行う。
1-5.対象県同士の経験や教訓の共有と活用を行う。

2-1.各施設レベルにおいてワーキングチームを組織する。
2-2.母子継続ケアや栄養改善のための取組を含めた改善計画を立案する。この計画は、一次・二次医療施設における24時間受け入れ体制構築を踏まえたものとする。
2-3.(母子手帳など)日本における経験や良い実例を共有する。
2-4.妊産婦、新生児ケアのための環境整備(機材/施設の改修/維持管理等)を行う。
2-5.一次・二次医療施設における24時間受け入れ体制の構築、及び妊産婦、新生児ケアの管理能力を強化するためのトレーニングを行う。

3-1.対妊産婦及び母親の保健医療サービスに関する既存のモニタリング・評価の状況を分析する。
3-2.既存のモニタリング・評価のためのツールを改訂する。
3-3.改訂されたツールを用い、保健医療サービスに関するモニタリング・評価、スーパービジョンを行う。
3-4.活動で得られた経験や教訓を州関係者に対しセミナー等の形で共有する。

投入

日本側投入

・専門家派遣:業務主任/母子保健、副業務主任/母子保健計画、スーパービジョン/モニタリング、緊急産科ケア/新生児ケア、医療施設/医療機材、業務調整/研修監理
・研修員受け入れ:本邦研修、第三国研修

相手国側投入

・カウンターパートの配置
・案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供