2022年2月9日
本プロジェクトは、狂犬病蔓延地域の一つであるルソン島中部ブラカン州において、自治体のサーベイランス能力の向上を目標とする狂犬病ネットワークモデルの導入に産学連携で取り組んでいます。
その一環として、大分大学医学部微生物学講座(西園教室)が大分県の民間企業アドテック社と共同開発した狂犬病迅速診断キットを使った狂犬病診断法のトレーニングを行いました。
動物の狂犬病検査は複雑で高額な機材なため、ブラカン州ではこれまで検査を行うことができませんでしたが、迅速診断キットと簡易検体採取法(ストロー法)を用いることで、リソースが限られた検査室で実施することができます。
これまでプロジェクトでは、ブラカン州の4施設に導入し、すでに10頭以上の狂犬病犬を検出しています。本診断方法は、標準検査法とほぼ同等の検査精度があり、結果は西園教授らにより国際誌(注1)で発表されています。
なお本トレーニングは、JICA専門家で感染症専門医である大分大学齊藤准教授が狂犬病ウイルスの感染予防対策(防護服の着脱、換気など)の指導のもと実施しており、今回は同州パオンボンの農業局に勤務する獣医師へのトレーニングに、JICAフィリピン事務所からは柳内次長、大友職員、イコン職員が現場視察に訪れました。
また当地では狂犬病動物の遺体について適切な処理が行われず、土壌や水質汚染などの環境問題の原因となっています。ワンヘルスの環境面の取り組みとして、本プロジェクトは大分県の民間企業で当地に進出を果たしている木下築炉社と連携し、同州ギギントのイヌ収容施設に動物用焼却炉を導入しました。
当機材は、今後プロジェクトが支援を行っている6つの自治体(注2)から届け出された狂犬病疑い動物の検査後の遺体の安全衛生かつ環境に配慮した焼却処理に貢献することが期待されます。
(注2)Guiguinto, Pulilan, Paombong, Bulakan, Hagonoy, 及びCalumpit
今後も、本プロジェクトはブラカン州における狂犬病ネットワークモデルの導入を通してサーベイランス能力の向上を図り、ワンヘルスアプローチ促進に引き続き取り組んでいきます。