プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ディヴィアカ・カラヴァスタ国立公園における生態系に基づく管理に係る能力開発プロジェクト
(英)Project for Capacity Building for Improving Ecosystem-Based Management on Divjake-Karavasta National Park

対象国名

アルバニア共和国

署名日(実施合意)

2020年10月8日

協力期間

2021年5月16日から2024年5月15日

相手国機関名

環境観光省保護区庁

背景

当該国における自然環境保全セクターの現状と課題

アルバニア共和国(以下、「アルバニア」)は、欧州のバルカン半島の南西部に位置し、国土面積は四国の約1.5倍の国である。国土の約3分の2は山岳地帯あるいは丘陵地帯であり、残りは沿岸部の肥沃な平野と地中海(イオニア海)岸で構成されている。
ディヴィアカ・カラヴァスタ国立公園(Divjaka-Karavasta National Park、以下「DKNP」という)は、首都ティラナから約100キロの地中海(イオニア海)岸に位置する国立公園である。河口、砂丘、干潟、森林などを含む多様な生態学的景観を有し、ハイイロペリカン(VU:絶滅危惧II類)やチチュウカイマツなど希少性の高い種を含む多様な生物種の生息地でもある。公園内のラグーンは1994年にはラムサール条約登録地にも指定されている。
同公園は、首都から車輛で1時間半と近く、国内及び海外からの訪問者が非常に多い観光名所でもあることに加え、地域住民が農業、家畜飼育、水産、伝統手工芸、観光サービスを行う居住区ともなっている。このため、これらの観光や農業等の活動が公園内の生態系に与える影響が顕在化する前に、適切な対策を講じることが必要であると認識され、アルバニア政府から日本政府に協力要請が出された。これを受け、JICAは、アルバニア環境・森林・水管理省(当時)を先方実施機関として、2012年5月から2014年9月の間、DKNPの保全と持続可能な利用のための体制を確立することを目指した技術協力プロジェクトを実施した。右プロジェクトを通じ、地方自治体を含めたステークホルダーの参加による公園管理委員会の設置に加え、環境教育やリソースマップの作成などのパイロット活動を行った。プロジェクト実施による公園管理の推進や生物多様性の保全により、DKNPは国内でも最も優れた国立公園として認識されている。また、これらの活動を踏まえて、プロジェクト期間終了直前の2014年9月には、DKNP管理計画が起草され、その後、管理計画は2015年12月にアルバニア政府によって正式に承認された。さらに、プロジェクト活動を通じた政府への働きかけにより、森林局内にあった国立公園管理部局が改組され、2015年2月に環境省の一部局として保護区庁(National Agency of Protected Areas:NAPA)が設立された。プロジェクト終了後も先方政府及びNGOの活動により、公園レンジャーの追加雇用や禁猟区の設定、植林、ハイイロペリカン繁殖サイトの設置などの活動も実施されている。
一方、保護区庁及びDKNP管理当局の財政・技術的な実施能力は、管理計画を完全に実施するにはまだ不十分であることが関係者間で認識されている。また、市町村合併で周辺自治体の構造が変わったことにより、DKNP管理委員会の構成メンバーが変更となるなど、管理委員会が想定した通りに機能していないほか、ラムサールサイトとなっているカラヴァスタ・ラグーンとイオニア海との間の海峡が堆砂によって遮断されつつあるなど、新たな課題が発生している。このような状況のもと、アルバニア政府は、前プロジェクトの成果を踏まえ、承認された管理計画の実施を行いつつ、「生態系に基づく管理(Eco-system based management)」を通じた、持続的な公園管理モデルの確立を目指す技術協力プロジェクトを我が国に対して要請した。
なお、JICAは2017年に詳細計画策定調査を実施したが、当時DKNPにおいてリゾート開発計画があり、国立公園の生態系への影響が懸念されたため、計画の撤回もしくは生態系に重要な影響を与えない程度への計画見直しを前提条件とした。2019年に、先方政府から「DKNPの保護と持続可能な利用」に係る書簡が発出されたことを受け、2020年10月にRDを締結し、2021年4月にプロジェクトを開始した。

目標

上位目標

生態系を基盤とした管理(Ecosystem-based Management(EBM))に基づく保護区の保全や持続可能な利用がアルバニアにおいて強化される。

プロジェクト目標

DKNPの経験に基づき、保護区管理に関する生態系を基盤とした管理(EBM)モデルが開発される。

成果

1.公園管理委員会の監督機能や関係者調整機能が強化される。
2.DKNP管理当局の管理計画や行動計画に関する実施能力がEBMアプローチを通じて改善される。
3.DKNP管理計画の実施を通して、生態系を基盤とした管理による保護区管理に関する知見や経験が国内外において共有される。

活動

成果1関連

1-1.DKNP管理委員会のメンバー選出促進。
1-2.ステークホルダー分析の更新。
1-3.DKNP管理委員会内のテーマ別作業部会設置。
1-4.公園管理委員会の運営。

成果2関連

2-1.生物多様性と関連する物理的要因に関するモニタリング。
2-2.持続可能な漁業の促進。
2-3.持続的農業の促進。
2-4.エコツーリズムと環境教育の促進。

成果3関連

3-1.生態系に基づく管理の知見収集。
3-2.ワークショップやセミナーの開催。
3-3.国際会議での発表。
3-4.ウェブサイト等を通じた広報活動。

投入

日本側投入

1.専門家(短期専門家も含め約68MM)
・チーフ・アドバイザー/生態系管理
・業務調整/環境教育・エコツーリズム
・短期専門家(モニタリング、堆砂対策、漁業、持続可能な農業、環境教育・エコツーリズム等)
2.本邦研修
3.機材(自動車、調査・研修等活動に必要な資機材、必要に応じその他)

相手側投入

1.プロジェクトスタッフの配置
・プロジェクト・ディレクター
・プロジェクト・マネージャー
・専門家各分野のカウンターパート
・支援職員
2.管理・運営費
3.プロジェクトのための事務所、施設、機材