パナマ市フアン・ディアス地区で洪水避難ワークショップを開催しました

2017年10月26日

開催日:2017年10月24~26日

2017年10月24日~26日にパナマ市フアン・ディアス地区での洪水被害を軽減し、命を守るための防災体制を行政と住民で確立するためのワークショップを開催しました。洪水被害を受ける地域が広範なため、ワークショップは3日間に分けて行われ、初日を日本人専門家主導で行い、残り2日は防災機関であるパナマ災害対策機構(SINAPROC)を中心に実施しました。

パナマという国はよく知らなくても、パナマ運河についてはほとんどの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか。この運河により、パナマはラテンアメリカ地域だけではなく、世界の物流拠点として機能しており、また近年は金融にも力を入れ、世界から多くの投資が集まってきています。こうした外国資本の流入は国の発展に大きく寄与しますが、一方でそれは急激な都市化を生み、本来人が住むべきではない洪水や土砂災害の常襲地域にまでその居住圏を拡大させる結果を招きます。

こうした急激な都市の拡大が生んだ人災とも言えるのが、フアン・ディアス地区の洪水災害です。フアン・ディアス地区はパナマ市の東側に位置し、近くには国際空港もあり、その利便性から新たな住宅開発プロジェクトが次々と進められています。しかしその多くは河口近くの低地であり、大雨と満潮が重なると河川が頻繁に氾濫します。今年8月にも多くの家が浸水被害に遭いました。

フアン・ディアス地区でのワークショップ初日の冒頭、日本人専門家から2つの重要なポイントが示唆されます。ひとつは、「このワークショップに参加している人は、防災意識が十分に高い人である」ということです。こうした人たちは、雨の降り方や洪水にも常日頃から注意しており、すでにやるべきことを実施している方がほとんどです。むしろこうしたワークショップに参加しない人たちにこそ参加してもらう必要があるのです。もうひとつは、「各個人が有している洪水経験を取りまとめて、地域の知恵とすること」です。これは、その数日前に行われたラス・ヌベス地区の土砂災害ワークショップにも共通することですが、地域の知恵をまとめて防災に興味のない人にもその知恵を共有することで、地域の安全を高めて行くことを目指すものです。つまり、このワークショップは参加者個人の利益のためではなく、「地域の安全を守る」という公共の福祉にも資する活動なのです。こうして、地域の安全を地域の力で守るということを参加者(住民)と最初に共有しました。

その後、SINAPROCが作成した洪水地図を基に、その情報が正しいかどうか、足りない情報はないか、地域住民に分かりやすいかどうかなど、住民視点から地域の知恵を追加していきます。すると最初に洪水が発生する地区がどこにあり、その情報を基に他の地区がどのような対応をしているのかなど、災害時の住民の動きが見えてきました。それと同時に、洪水が起きても逃げないという住民の現実的な行動も明らかになってきました。この地区は満潮の影響を受けて発生する洪水のため、人が流されるようなことは滅多にありません。また、浸水する高さも経験則からある程度分かっているため、身の危険はないと感じて逃げない人がいます。一方で、避難の支援が必要な家族がいるが、支援が得られないから逃げられないという事情を抱える参加者がいることも明らかになりました。

今後は地図の取りまとめを行うとともに、避難計画を作成して浸水被害の可能性がある全ての世帯に配布を予定しています。また、洪水が起こっても逃げない・逃げられないという現実を踏まえながら、様々な避難促進策を実施していくとともに、土嚢など日本の知見を活用した地域レベルの洪水被害軽減対策についても紹介していく予定です。

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日本人専門家による説明

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地図を囲んでの住民との議論

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SINAPROCからの説明

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SINAPROCの知見も加える

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2日目以降はSINAPROCが議論を主導

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SINAPROCボランティアが、事前にワークショップの通知と参加勧誘を行う