フエゴ火山噴火災害の教訓を活かした避難所運営シミュレーション(HUG)研修を実施しました

2019年3月5日

2019年3月5日、グアテマラ共和国内のプロジェクト対象地域であるパカヤ火山地域にて、2019年第1回火山防災協議会が開催されました。今回の議題は、避難所運営ゲーム(HUG)の演習を中心とすることとしました。HUGとは静岡県で開発された、避難所運営をシミュレーションするために日本各地の自治体で普及が進んでいる図上訓練手法です。

グアテマラでは人材育成研修も兼ねて、同地域内のプロジェクト対象3市の防災担当者、避難所運営担当省庁である大統領夫人庁(SOSEP)、教育省(MINEDUC)、社会開発省(MIDES)、カウンターパート機関である国家防災調整庁(SE-CONRED)の地域担当官や火山ユニット技官などを含め24名が参加することとなり、HUG手法を学ぶことを通じて、事前の避難所運営の具体的な準備の重要性を再認識する機会となりました。

日本人専門家チームからは協議会当日に4名が参加し、開催を支援しました。
小野寺専門家が今回のHUG研修を主導し、前原専門家、井後専門家、伊良部専門家が研修実施中の支援を行いました。
グアテマラの直近の火山災害としては、2018年6月3日に、フエゴ火山の噴火に伴い400名以上が犠牲になる災害が記憶に新しいところであり、今回の研修では、その時の教訓を活かしてグアテマラの実情にあったHUG研修内容となるように日本人専門家チームが工夫を重ねました。
「過去の災害の教訓を活かしていく」という取組みも日本型の防災の経験や知見の技術移転において重要な点だとプロジェクトチームは考えています。

2018年11月から日本人専門家チームにより研修準備が開始され、数回の専門家チーム内での意見交換を経て、2019年1月に伊良部専門家がフエゴ火山災害時に避難所運営を担当したSOSEP職員への面談を実施しました。
その面談では、被災者のみならず避難所を運営するチームが日を追うごとに疲弊していく様子など、生々しい現場の様子が語られ、そこから課題を分析・抽出し、その結果をHUGの状況付与カードや避難者情報カードに反映させることができました。

今回の協議会を通じた研修には、上記の避難所運営担当省庁職員だけではなく、消防職員も参加しましたが、彼らも含め「グアテマラの実情にあった状況が付与され、今回の図上訓練が非常に身近に感じられた。研修中にとった各状況や避難者への対応も、より現実的な意思決定の積み重ねになった良い訓練だった」との感想が、多くの参加者から聞かれました。
また、教育省からの参加者からは「ぜひ避難所に指定されている学校でも同手法を実施したい」との要望が出され、実施に向けた調整を行うこととなりました。
2019年1月の本邦研修に参加した2つの市役所の防災担当者も、今回の研修に積極的に参加している様子が確認でき、過去の本邦研修参加者も含めると合計4名の帰国研修員が、開催側と参加者側の両面から参加をしました。

次回は、サンティアギート火山地域の火山防災協議会で同内容の研修を実施する予定です。

作成:伊良部 秀輔(長期専門家)

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パカヤ火山防災協議会及びHUG研修開催前に趣旨説明をするカウンターパート機関火山ユニット職員

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プロジェクト対象3市ごとにHUGに取組む様子。各テーブル約8名で構成された

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HUG手法について火山防災協議会メンバーに説明する小野寺専門家

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読み上げられるカードに対応する参加者の様子。写真右から2人目は市役所防災担当者(帰国研修員)