ニカラグア防災機関職員が、コスタリカの災害情報管理研修に参加しました

2019年7月31日

2019年7月29日から31日まで、ニカラグア国家災害管理・防災システム局(CD-SINAPRED)の職員2名が、コスタリカ国家災害対策緊急委員会(CNE)とコスタリカ国立大学(UNA)を訪問し、災害情報や情報管理に関する研修を受講しました。

中米広域のプロジェクトであるBOSAI フェーズ2では、日本からの防災技術協力の他に中米域内の知見の交流を推進しています。これは、国の制度や仕組み・文化的背景が類似する国同士では、他国の取り組みが自国で活用しやすく、近隣の優良事例がそのまま各国の防災対策の進展に繋がるからです。ニカラグアでは災害情報センターの開設が計画されており、同分野については、中米ではコスタリカがその知見を十分に蓄えていることから、今回の研修を実施する運びとなりました。

まず、CNE内にある災害情報センター(CEDO)にて導入研修を受講しました。CEDOは1990年に開設され、約30年に渡ってコスタリカの災害履歴や災害調査・論文等の収集と蓄積を行っています。導入研修で印象的だったのは、何よりも継続することの重要性の指摘です。情報というのは時に軽視されがちであり、CEDOも何度か存続の危機があったようですが、「一人でもいいから熱意のある人」、「施設よりも人材が大事」との言葉は、言い換えると「たとえ一人だったとしても、できることはたくさんある」というニカラグアへのエールにも聞こえました。

その後、防災分野に関わらず、情報センターとしての役割と機能を学ぶためにコスタリカ国立大学(UNA)を訪問しました。中央図書館では、書籍をはじめとした情報をどのように収集・取りまとめて一般公開するのかについて体系的に学ぶことができました。また、論文などの学術文献は別途データベースで管理し、学術研究者や学生がアクセスできるようになっており、これはコスタリカの各国立大学データベース、それらを統合する全国立大学のデータベース、さらには中米国立大学連合データベースで管理されていることを知りました。調べてみると、ニカラグアも複数の国立大学が中米国立大学連合データベースに登録していることが分かり、こうした学術情報についてはこれらのデータベースと連携することで、効率的な防災情報の検索ができるようになります。逆に、その他の防災情報を取りまとめるデータベースがないことも明確になり、CNEのCEDOのようにニカラグアに災害情報センターを設立する意義について再認識する機会となりました。

今回の研修では、情報管理の方法論や運営手法、さらには広報の重要性について学ぶことができました。2日間に渡りかなりタイトな日程でしたが、「濃密な時間であっという間だった。」というニカラグア参加者の言葉が印象的でした。

最終日は、ニカラグア災害情報センター設立に向けたアクションプラン作りを行いました。「鉄は熱いうちに打て」とばかりに、ニカラグアに戻ってCD-SINAPRED長官への発表の機会を早急に確保すべく朝早くから準備に取り掛かり、日本人専門家も長官とのアポ取りに奔走させられるほどの熱の入れようでした。また、今回研修機会を利用して、コスタリカとニカラグアの交流も行いました。双方から、本研修実施について満足の声が聞かれるとともに、「次はニカラグアで是非フォローアップの研修をして欲しい。」との要望があり、「そのために全力で災害情報センターの設立に努める」ことがニカラグア参加者から表明されました。

3日間で学べることにはもちろん限りがありますが、今回の研修を通じ、コスタリカ側の熱意がニカラグア側に伝わり、その熱意がニカラグア災害情報センター設立の原動力になり、また2国間の協力関係の継続への力にもなることを期待しています。BOSAIフェーズ2では、引き続きニカラグア災害情報センターの設立に協力していくとともに、中米域内の協力を通じた防災の発展にも貢献していく所存です。

作成:川東 英治(長期専門家)

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研修の様子

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情報センターでのコスタリカ人・ニカラグア人のやり取り

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ロシアの論文まであり、みんなで談笑する様子

【画像】コスタリカ・ニカラグア全参加者による記念撮影