マタガルパ(Matagalpa)県14市の防災職員及び関連機関職員を対象とした防災研修を実施しました

2019年8月24日

2019年8月23日、24日に、マタガルパ(Matagalpa)県下の14市を対象とした防災研修が開催され、防災職員並びに関連機関の職員31名が参加しました。

ニカラグアのBOSAIフェーズ2では、コミュニティ防災を実施する市レベルの能力強化に取り組んでいます。その一つに行政職員研修がありますが、ただ単に研修を実施するだけではなく、彼らが現場に戻って継続的に活動ができる環境・体制作りにも考慮しながら実施していくことが大事になってきます。そのような視点で現場からの声を集めてみると、住民向けの分かりやすい教材が必要なことや、様々な災害種をテーマにした教材が必要なことが分かってきました。そこでプロジェクトではマルチハザード防災教材の作成をすることになったのですが、今回はプロジェクトで作成した風水害防災教材の評価を行うために、特に洪水も土砂災害も多いマタガルパ(Matagalpa)県を対象に教材評価を行うこととなりました。

まず日本人専門家より、防災の基本的な考え方を説明します。中米では、1)新たなリスクを醸成しない対策(土地利用計画・移転等)、2)リスクを低減する対策(ハード対策)、3)災害発生を前提とした応急対策の3つが防災対策として分類されています。そこでその分類に従いながら、どの対策が重要か参加者に尋ねました。多くの参加者は、1)や2)の対策が重要と答えます。しかし日本の経験に照らし合わせると1)~3)全ての対策が重要なことが分かります。

例えば、1)新たなリスクを作らず、リスクのない地域に住むことができればそれに越したことはありませんが、日本は地理的に70%が山間地であり、残り30%の平野に1億2000万人が住まなければならない国情です。そのため2)のハード対策が推進されてきましたが、ハード対策で全ての地域の安全を高めるには長い年月と予算が必要です。また、ハード対策は計画された規模の災害(想定外力)は防げますが、それを超える災害は防げません。さらに、ハード対策が実施されることで災害頻度が低くなり、住民の中に根拠のない安全神話が広がり、災害に備えなくなってしまう弊害も生まれます。災害がいつどこで発生するか分からないのであれば、1)2)のような対策を取りつつ、災害が起こったとしても命だけは守るための備えである3)災害発生を前提とした応急対策も必要なのです。つまり国の経済力と国の責任に照らし合わせながら、これら3つの防災対策のバランスの取れた実施が国の防災指針として重要になってきます。

このように防災の全体像を概観した後で、本題である風水害教材を使った研修と評価を行いました。教材はイラストを多用していることや、ハリケーンのメカニズムなど参加者の興味を引く内容・情報を多数有していることから、参加者も飽きることなく日本人専門家の説明に耳を傾けていました。最後にアンケートを取り、研修内容への評価、コンテンツへの評価、コミュニティ防災教材としての適正評価を行いましたが、プロジェクトが目標とする8割を大きく超える参加者からの高評価を得ることができました。今後も防災教材の評価は続けていきますが、プロジェクトとしても大きな手応えを得る結果となりました。

プロジェクトでは、まだ現場での評価が実施されていない地震防災教材等の評価も行い、マルチハザード教材の完成に努めるとともに、全ての教材が作成された暁にはニカラグア全市に同教材を配布し、ニカラグア全土においてコミュニティ防災の普及に努めていく予定です。

作成:川東 英治(長期専門家)

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日本人専門家による防災の基本的な考え方の説明

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講義を聴く参加者の様子

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グループワークでは、カウンターパート主導で講義のおさらいや議論を実施