クロージングセレモニー 「プロジェクト成果の共有」と「糖尿病啓発イベント」の開催(キリバス)

2019年11月20日

2019年11月20日にクロージングセレモニーを開催し、3年6ヶ月の本プロジェクトの活動が終了しました(写真1)。セレモニーでは、エレシ・ティメオン保健省公衆衛生局長から、本プロジェクトが取り組んだHealth Outreach Program for Equity(HOPE)という生活習慣病(NCD)対策のヘルスプロモーション活動が「キリバスNCD戦略2020~2023」に組み込まれ、他省庁を含めたマルチセクトラルな取り組みとして、今後も保健省がリードして継続していく意思が表明されました(写真2)。当日は、大洋州で流行している麻疹対応により参加できなかったスタッフもいましたが、プロジェクト関係者43人が参加し、参加者全員でプロジェクト成果と今後の取り組みを確認しました。

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写真1:プロジェクトクロージングセレモニー

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写真2:住民を激励する保健省公衆衛生局長

セレモニーでは、カウンターパートであるアンジェ・レイハーNCD専門官からのプロジェクト活動全体と、成果と目標がほぼ達成されたという報告に続き、ナニカイ地区福祉グループのミリ・カウエア代表が、HOPEを実施する住民の立場から、HOPE実施による住民の変化や今後の計画が発表されました(写真3, 4)。HOPEは、コミュニティでNCDスクリーニングを実施し、その結果を踏まえ、NCDのリスク要因である喫煙(Smoking)、栄養(Nutrition)、アルコール(Alcohol)、運動(Physical Activity)の4項目SNAPに沿って、住民自身がアクションプランを作成し実施します。地区を一つの単位とし、住民グループとその地区の看護師を中心に活動を進めますが、HOPE開始当初はNCDやSNAPを住民にわかってもらうことがいかに大変であったかが報告されました。同時に、2017年と2019年に実施したNCD検診の後は、ヘルスセンターに検診目的で来る住民が増え、少しずつ住民の意識や行動が変わっていったことが嬉しかったとも述べられました。

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写真3:プロジェクトの全体を説明するカウンターパート

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写真4:住民グループ代表によるHOPEの意義について

本プロジェクトで実際にHOPEの介入を行ったのは、キリバス南タラワの13地区のうち、ナニカイ地区のみのため、プロジェクト終了後に保健省がHOPEを普及・継続できる仕組みや環境を整えることも、本セレモニーの重要な目的でした。そのため、HOPEの次の候補地である、ビキニビウ・ウェスト地区とエイタ地区の看護師と住民リーダーにも参加してもらいました。参加した看護師からは「生活習慣病対策は住民自身の取り組みが必要であることから、自身の地区でのHOPE開始が必要である」ということが力説されました。この候補地は、保健省やプロジェクトによる選定ではなく、プロジェクトが2019年9月に地域看護師を対象に開催した、HOPEの計画-実施-モニタリングの方法を共有するワークショップで、HOPEを開始する意思を表明した地区です。セレモニーの中で、「プロジェクトの成果はナニカイ地区の住民の成果である」という公衆衛生局長から住民への激励もあり、それを聞いていた他地域の参加者にもポジティブなメッセージを伝えられのではないかと感じます。

また、外部予算の比重が大きいキリバス保健省の現状から、キリバスNCD対策に関わるWHOやMFAT(ニュージーランド)などの開発パートナーもセレモニーに参加し、HOPEの内容とその成果を知ってもらうことを目指しました。本セレモニーの内容は、プロジェクト活動の一つであるNCDニュースレターにも詳細を記し、他省庁や開発パートナー会議などで配布される予定です。さらにキリバステレビ、ウエケラ新聞とラジオによる取材も入り、全国に放映されました。

プロジェクト成果の確認後は、「糖尿病啓発イベント」として、糖尿病に関するミニ講義と参加者全員でのズンバ体操を行いました(写真5)。ミニ講義は、以前ナニカイ地区で糖尿病の知識に関する調査をした時に「子どもは糖尿病にかからない」と考えている住民が一定数いたために、子どもを含め誰でも2型糖尿病にかかるリスクがあること、またその予防や早期発見のためにHOPEの有用性が説明されました。また、11月は世界糖尿病連合が提唱する糖尿病月間であることから、糖尿病啓発を目的としたブルーサークルで参加者集合写真を撮りました(写真6)。

本プロジェクトは終了しますが、公衆衛生局長が「クロージングではなく、これから保健省がプロジェクト成果を引き継ぐ日である」と述べた通り、今後のキリバス保健省のNCD対策の一助になったのであれば幸いです。

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写真5:理学療法士による参加者全員でのズンバ

【画像】写真6:糖尿病啓発ブルーサークル参加者集合写真