プロジェクト成果共有のためのクロージングセミナーの開催(フィジー)

2020年4月15日

2020年3月9日に、本プロジェクトのクロージングセミナーを開催しました。当日は、保健省や保健センターの医師・看護師・栄養士約60名に加え、企業から約50名のマネージャーや労働衛生担当官、WHOやオーストラリア等の開発パートナー、在フィジー日本国大使館、JICA関係者など、総勢150名が参加しました(写真1)。午前の部は、医療者によるモチベーショナル・インタビュー(Motivational Interviewing, MI)手法を用いた、保健センターでのウェルネスクリニックの成果報告と討議を行いました。午後は職域でのプロジェクトの介入成果や、保健省と企業とが行っているNCD対策についての報告と討議が行われました。本セミナーはテレビや新聞など複数のメディアで広報され、Fiji TVでは参加者へのインタビューを含め30分の番組として3月15日に放映されました。

【画像】写真1:午前の部参加者集合写真(着席者左から西部地区医師長、JICA フィジー事務所長、国家NCD顧問、保健省大臣、在フィジー日本国大使、プロジェクトチーフアドバイザー、WHO南太平洋事務所NCD技術調整官)(Photo by the Department of Information)

午前の部:プロジェクト成果とグッドプラクティスの共有

フィジー保健省ワンガイナベテ大臣(写真2)と在フィジー日本国大使の挨拶(写真3)に続き、国家NCD顧問ツカナ医師による、フィジーのNCDの現状説明で開会しました(写真4, 5)。ツカナ医師が強調したことは、フィジーのNCD対策は、本プロジェクトが対象としている都市部(中央地域)の人口増加による、アーバンヘルスという新たな挑戦の段階にあるということ、そのためにNCD予防の行動変容を目的としたMIカウンセリングの役割と可能性が説明されました。

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写真2:保健省ワンガイナベテ大臣

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写真3:在フィジー日本国大村大使

濱田チーフアドバイザーからは、本プロジェクトの成果が報告されました(写真6)。特に、エンドライン調査で収集した、コロボウヘルスセンターのウェルネスクリニックで、薬を用いずにMIカウンセリングのみで高血糖が改善した割合が、2回受診した場合では33%、3回では58%の患者の高血糖が正常範囲に改善していたという結果が、参加者の関心を引いていました。

この結果は、NCDに影響を与える喫煙や食生活などの行動変容は容易ではないということを知っている医療者には驚きです。MIカウンセリングを受けたことで、患者の行動変容が起きたことに関して、実際にウェルネスクリニックでMIカウンセリングを実施している看護師からは、これまでいかに医療者が一方的に患者に指示をしていたかに気づき、看護師自身が変わったと報告されました。また、医療者と患者では感じ方にギャップがあることから、セミナーではウェルネスクリニックでMIカウンセリングを受けている患者(男性53歳、高校教諭)にも登壇してもらい、これまでの医療者と患者に対する態度がいかに変わったかが述べられ、そのカウンセリングを受けたおかげで、自身の食生活が変わり血糖値が正常化したエピソードが語られました。

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写真4:聞き入るスバ地区看護師マネージャー(左)

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写真5:国家NCD顧問ツカナ医師

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写真6:濱田チーフアドバイザー

午後の部:職場におけるプロジェクト成果とグッドプラクティスの共有

午前の参加者に加え、企業の人材部のマネージャーや労働衛生担当官を招待し、職場でのNCD予防のための「保健省-企業-NGO」の連携強化を目的としたセミナーを実施しました。根底にはプロジェクトが2018年に2つの企業でBMIが30以上のスタッフを対象に実施した“Wellness Watch Program”(3回のMIカウンセリングと運動プログラム)の結果、参加者の高血圧や高血糖が改善した成果があります。

その成果報告に続き、この介入先企業である労働衛生担当官とそのプログラムの参加者のそれぞれの立場から、報告をしてもらいました。その後に行った保健省、看護師、NGO、労働衛生担当官が登壇したオープンディスカッションでは、フロアから多くの具体的な質問があったことから、多くの企業が真剣にNCD対策に取り組もうとしていることが明らかになりました(写真7)。

閉会では、JICAフィジー事務所大野所長(写真8)、産業省事務次官、WHO、オーストラリアエイド(The Facility)からコメントをいただきました。WHOからは、既にフィジー全土で行われている心血管疾患予防のリスク評価(通称、PEN)で医療者に必要なスキルとしているMIを、本プロジェクトはさらに深めた研修を実施、その効果が表れていることから他の大洋州でも広めていきたいと述べられました。オーストラリアエイドは、NCD検診結果の電子化を進めていることから、以前から本プロジェクトと連携しており、特にその開発過程において、NCD検診後の介入を見据えた本プロジェクトからの助言に謝辞が述べられました。ツカナ医師からは、エビデンスのあるMIをフィジーのコンテクストに合わせて実施したことが成功の秘訣であると述べられました。

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写真7:オープンディスカッション

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写真8:JICA Fiji事務所大野所長によるリマークス

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写真9:ウェルネスコーナー

セミナーの会場には、企業に提案をしている、職場に血圧計や体重計を置くウェルネスコーナーを設置し、参加者に体験してもらいました(写真9)。また、プロジェクトで開発したNCDに関する教材や、これまでの取り組みを掲示、ランチタイムにはクッキングデモビデオを流し、プロジェクトの成果物を参加者に広く知ってもらう機会としました。参加者からは「スタッフのウェルネスのための様々なアイディアを得ることができた」とコメントがあり、プロジェクト成果の共有と発信というセミナーの目的が果たせました。