新カリキュラムが承認されました

2022年4月22日

小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ3では、2019年11月より、初等カリキュラム(理数科分野)の改訂支援を行ってきましたが、2022年3月末、初等大衆教育省(MoPME)により改訂カリキュラム(以下、「新カリキュラム」)がついに承認されました。これから新カリキュラムに基づき、小学校1~5年生の教科書・教員用指導書が順次改訂されていきます。今年(2022年)は、1、2年生の教科書・教員用指導書の改訂作業が計画されており、1)教科書・教員用指導書のドラフト作成、2)パイロット校での試行、3)試行結果に基づく修正、というプロセスを経ながら、2023年1月より1、2年生教科書・教員用指導書が全国の小学校に導入される予定です。

新カリキュラムの改訂プロセス

基本的なカリキュラム改訂の進め方としては、まず、本プロジェクトの教科専門家が現行の初等カリキュラムを分析し、現行カリキュラムの課題や問題点を明らかにしながら、それらを提言書として取り纏めていきます。その提言書は、バングラデシュ政府側のカリキュラム開発者と共有され、理数科カリキュラム改訂に係る方向性を確認しながら、日バの協働で改訂が進められていきます。特に、カリキュラム改訂に係る現地の人材育成と能力開発の観点から、本プロジェクトの教科専門家はカリキュラム改訂の方法、手順、注意事項等を詳細に取り纏めた理数科カリキュラム改訂マニュアルを作成し、複数回のワークショップを通して現地に知見と技術を移転してきました。

こうしたプロセスを経て改訂され、承認された初等カリキュラムは、今後、パイロット校での試行を経て、2023年1月より全校に導入予定です。

新カリキュラム改訂のポイント

算数と理科の現行カリキュラムをブルーム・タキソノミー(注1)の認知領域に基づき分析してみると、低次の領域である「知識(Knowledge)」に偏っていることが明らかとなりました。これは、バングラデシュの初等カリキュラムでは、知識の習得を重視していることを意味しています。しかし、算数や理科の学習を通して、児童は「知識」だけでなく、「技能」や「態度」を育成していくことも非常に重要になります。また、他者とのコミュニケーションを通じて、自分や他者と共通する目標を達成する技能である「社会的スキル」の育成も21世紀を生きる子供たちにとって必要です。新カリキュラムはこうした点に対して十分に留意しながら作成されています。また、新カリキュラムは、学習内容の系統性・スパイラル性も考慮されているため、同じ系統の内容を反復学習しながら、発展的な学習に無理なく移行できるようになっています。新カリキュラムでの教育を通じて、知識・技能、コミュニケーション能力や問題解決力を身に着け、変化の激しい21世紀をたくましく生き抜いてくれることを願っています。

(注1)ブルーム・タキソノミーはブルーム(Bloom, B. S.)らによって開発された教育目標の分類体系。教育目標は、認知・情意・精神運動領域の3つの領域に分類され、さらに各領域はそれぞれレベル分けされている。認知領域は、「知識(Knowledge)」、「理解Comprehension)」、「応用(Application)」、「分析(Analysis)」、「総合(Synthesis)」、「評価(Evaluation)」の6つのレベルで構成され、レベルごとに教育目標の例とその目標に対応するテスト項目の例が紹介されている。(梶田叡一(1983)『教育評価(第2版)』有斐閣)

文責:大橋悠紀(教員研修2/業務調整)

【画像】

公立小学校で学ぶ児童たち(ダッカ市内)