バジョ農業研究開発センターの水事情

2018年5月28日

ブータン中西部地域における園芸農業振興を目指す本プロジェクトは、ワンディ・ポダン県のバジョ農業研究開発センター(以下バジョ・センター)を拠点に、園芸作物栽培に関する技術開発、種苗生産、研修・普及等の活動を展開しています。農業研究開発センターは、ブータン全土に5箇所設置されており、各地の特色に応じた農業技術の研究開発及び普及拠点としての役割を担っています。バジョ・センターもその一つで、従来は主に稲作を対象としていましたが、園芸分野の能力強化を図るため、本プロジェクトを招請したという経緯があります。

さて、このバジョ・センター、2016年のプロジェクト開始当時は圃場の管理不足や付属施設の老朽化が目立ちましたが、プロジェクトを進める中で段階的な整備に取り組んだ結果、2年を経た現在では、見違えるほど機能的な姿となりました。特に力を入れたのは、機能不全に陥っていた灌漑施設の整備と土壌改良です。中でも、農業にとって水の確保は生命線ですが、年間降水量が500mm-700mm程度で、一年の半分以上が厳しい乾季となる当地では、頼れる灌漑施設の存在が農場を維持する上での必須条件となります。水槽を修理し、水路を建設し、水管を埋設し、大型タンクを据え付け、ポンプを設置し…。様々な努力が実り、現在では圃場の隅々まで水を送り届けることができるようになりました。

しかし、バジョ・センターの水問題が根本的に解決されたわけではありません。ここで使用される水は、電気料金が非常に安いこともあって、ほぼ全て付近を流れる河川からの揚水に依存しています。河岸に設置されたメインポンプは老朽化が進み、度々故障しては農場スタッフを悩ませます。プロジェクトにとって、まさにボトルネックと言えるでしょう。現在、プロジェクトでは新たなポンプ設備の導入を検討しています。実は、このポンプも含め付随する導水管、貯水槽等の灌漑設備一式は、25年以上前に日本からの支援で建設されたものなのです。日本が昔に供与した基礎インフラを活用してプロジェクトが行われている事実に因縁めいたものを感じますが、古いものを大事に使い続けてくれていると評価することもできるでしょうし、結局は日本の再支援で命脈をつなぐことになると批判することもできるでしょう。支援効果の持続可能性、自立発展性という古くて新しい課題は、こういった形でも存在しています。

とはいえ、与えられた時間の中で所定の目標達成が求められるプロジェクトは、様々なジレンマや葛藤を抱えつつも、日々の活動に専心し、歩みを止めることはありません。

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プナツァン・チュ(川)の左岸に開かれたバジョ農業開発センターの農場

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日本の援助で過去に導入された揚水ポンプ

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川から中間貯水槽までポンプアップされた灌漑用水

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農場の最上段に据えられた貯水タンクに水中ポンプで揚水し流下させて潅水します

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農場作業員による潅水作業の様子

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作業の効率化を図るためスプリンクラーも導入されています

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貯水槽の大掃除。灌漑施設を適切に維持管理するには地道な作業が欠かせません

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こつこつ続けられてきた圃場の水路網整備もいよいよ最終段階です