技術移転の定着と深化を目指して

2019年10月27日

ブータン中西部地域における園芸農業振興の基盤づくりを目指す本プロジェクトは、園芸作物の品種導入や栽培技術開発、農業技術者及び普及員の能力強化、地域農家に対する普及プログラムの整備等、農業試験場や農村を舞台に幅広い活動を展開しています。それら全ての活動を貫く共通の命題は、私たち日本人スタッフが日々の仕事を共にするバジョ農業研究開発センター(以下バジョ・センター)のスタッフ、すなわちプロジェクトのカウンターパートと呼ばれる人たちの能力向上です。バジョ・センターで研究員として働く彼らは、地域農業の発展を支える中核人材です。また、1年後に迫ったプロジェクトの終了後、その活動成果を継続・発展させるのは、彼らをおいて他にありません。プロジェクトの活動を通じて、日本人専門家からカウンターパートへと技術移転を進めることの重要性は、改めて語るまでもないでしょう。

プロジェクト前半の技術移転では、試験圃場や農村でのOJTを通じて、農業の現場で求められる実践的な技術や知恵をじっくりと鍛えてきました。プロジェクト後半の技術移転では、身に着けた技術や知識を定着させるための工夫や、より深く詳しく理解するための活動を取り入れるよう努めています。

技術・知識の定着のための取り組みとして挙げられるのが、栽培リーフレットの作成です。主要な果樹・野菜をピックアップし、それぞれ担当のカウンターパートを決め、農家及び普及員向けのリーフレットを作成しています。リーフレットの案を作り、日本人専門家の指導を受けながら完成させるプロセスで、その作物を栽培する上でのポイントを確認し理解することができます。また、苦労して完成させた原稿が印刷物となって仕上がってくることが、カウンターパートにとって一つの励みとなっているようです。出来上がったリーフレットは、種子や苗木の配布に合わせて農家に届ける計画です。最終的には、20種類程度の作物または個別技術に関するリーフレットを完成させたいと考えています。

より深く詳しく理解するための取り組みとしては、技術移転セミナーがあります。原則週に一回、特定の技術テーマを取り上げ、日本人専門家が講師となって座学を実施しています。試験圃場や農家での継続的なOJTの結果、カウンターパートのフィールドにおける農業技術や調査能力は大幅に向上し、様々な活動をC/P主体で実施することができるようになってきました。本セミナーは、そこから一歩踏み込んで、習得した実践技術を理論的、科学的に理解することによって、様々な状況に対応し得る応用力を身に着けることを狙いとしています。彼らが普段圃場で行っている作業についてなぜそうするのか、なぜそうなるのか、実践と理論を結び付けて理解してもらえるよう、工夫しながら続けていきたいと考えています。

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キウィ栽培のリーフレット

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ボカシ肥料作りのリーフレット

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技術移転セミナーで講義を行う日本人専門家

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セミナーを熱心に受講するカウンターパート