食品加工研修

2020年3月11日

2月の終わり、以前から要望のあった加工食品の講義と実習を、カウンターパートと圃場作業員を対象に行いました。

ブータンでは各地に常設あるいは週に1回と決まった曜日に市がたつのが普通で、大きな外資が入っていないこともあって、スーパーマーケットは首都のティンプーで見かける程度です。そのほか、小さな個人商店や露店が基本幹線道路沿いあるいは集落や市街地にあり、そういった個人商店などでは、国営の加工場で生産されたジャム製品やジュース製品が販売されています。しかし、添加物で水増ししたような品質のジャムが多くみられ、材料がうまく確保できていないのが伺われます。家庭レベルの小規模加工品はピクルスやトウガラシ製品が多く、野菜とともに個人商店で販売されていますが.果実加工品はまだ数,種類ともに少ないのが現状です。

研修では、まず理論編として日本人専門家が食品加工(特に果実)の基礎を説明しました。加工の目的、保存を高めるための材料や手法、容器の滅菌など、ジャムづくりの基礎について講義をしました。圃場作業員の多くは英語を使用しないため、ブータンの言葉であるゾンカ語とそのゾンカ語を理解しない人たちのためにネパール語も用い、2言語通訳を通じて講義は進められました。圃場作業員たちは普段こうした話を聞く機会がないこともあり、みな真剣に専門家の話に耳を傾け、質問も活発に出されました。

講義のあとはいよいよお楽しみの実習です。今回は,材料が確保できていたチランの農家が作ったキウィとBajoセンターで収穫したイチゴのジャムとシロップづくりを行いました。とりわけ、保存容器の滅菌・消毒作業は大切であるため、実習では蒸し器を用いて滅菌処理を行う工程も実施しました。

実習をしているとジャムの甘い匂いにつられてセンターの職員がやってきては物珍しそうに様子を伺っていました。中には実習だけ見学してお土産のジャムを手にするちゃっかり者も。

在来ポンカンなど一部を除き、ブータンでは果物自体がまだ新しい品目であるため、生食が主体となっています.しかし,ミバエなど害虫や病気などの被害も多く、販売できない果実から収益を得るための家庭内小規模加工は、今後園芸農業が広がるにつれてさらに必要性が高まると考えられます。食品加工の指導はプロジェクトの活動範囲外にはなるものの、プロジェクトの研修対象農家から基本的な加工についての質問をうけることが多かったこともあり、まずはカウンターパートに基本を理解してもらうことで、将来の果樹生産振興と普及活動につながるものと考えています。農家における収穫後の劣悪な貯蔵環境や無農薬栽培による病虫害の多さを考えると、安く販売するよりも、加工し、瓶詰めにして滅菌処理して常温で1年以上、安定した価格で販売できる果実加工品としての可能性を理解してもらう良い機会になったのではと、反響の大きさからも手ごたえを感じています。

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専門家の説明をゾンカ語とネパール語に通訳するカウンターパート

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講義に真剣に耳を傾ける参加者たち

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ビンの滅菌工程

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専門家からの指導を受けながら実習を楽しむ参加者

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煮詰めたジャムのビン詰め

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瓶詰後再度熱処理することも学ぶ

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出来上がったジャムは首都ティンプーで予定されているインターナショナルフェアで試食に供されます

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ジャムを手にする圃場作業員