プロジェクト活動の近況について

2020年10月5日

ブータン国内では新型コロナウィルスの初めての感染症例が3月に出て以降、約5か月間市中感染は起きませんでした。しかし、隔離者以外からの感染者が出たことをきっかけに、8月11日に全国的にロックダウンが発令され、緊張感が一気に高まりました。その後もインドとの国境地域を中心に感染者が増え、ロックダウンは3週間続きましたが、9月1日から段階的に解除されました。現在も制限があるものの、人々の行動範囲も広く許可されるようになりました。これまで第5代国王の献身的な取り組みとブータン政府のイニシアチブにより、大きな混乱もなく現在に至っています。

このような状況だったため、4月以降プロジェクト活動も制約を受けておりましたが、9月3週目からようやくプロジェクトの拠点であるバジョ農業開発研究センター(Agriculture Research and Development Centre(ARDC)Bajo)での活動を本格的に再開できることになりましたので、今回はここ数週間の出来事をご紹介しています。

第5回合同調整委員会開催

9月18日に第5回合同調整委員会(Joint Coordinating Committee:JCC)(注)を、オンライン会議システムを利用して開催しました。オンラインによる初めての実施であったため事前の調整は大変でしたが、農業林業省次官や農業局長、JICAブータン事務所、そして東京のJICA本部とつないで行い、当日はインターネットが途切れることもなく無事に最後まで終えることができました。

今回のJCCではプロジェクト開始から現在に至るまでの活動成果と残されたプロジェクト期間の活動予定についてカウンターパート(C/P)であるサイトマネージャーが報告しました。次官からはプロジェクトの成果に対する感謝、プロジェクトマネージャーからは進捗状況の報告、そしてJICAブータン事務所長からも専門家及びC/Pに対する感謝と今後のさらなる成果発現に対する期待が寄せられました。

(注)合同調整委員会:プロジェクトの意思決定機関で、中央政府の高官や JICA 関係者など、プロジェクトの全ての関係者が集まり、これまでの経過報告や今後の予定などを報告し、承認を得る重要な会議。

柿の脱渋講習会

9月28日に柿の脱渋の講習会をプナカ県タロにて実施しました。タロ担当の農業普及員、農家5名を対象とした小規模なものでしたが、コロナに配慮して、距離をとりつつマスク着用のうえ、野外で実施しました。また,日本で研修を受けたカウンターパート2名が,圃場の渋柿(日本からの導入種)を使って樹上脱渋,干し柿,アルコール脱渋,温湯脱渋の比較試験を始めています。

ビニールハウス組み立て

ロックダウン前に発注していたビニールハウスが納品されたので、その組み立て作業を行っています。長さ20Mのビニールハウスともなると作業には人手も時間も要しましたが、9月末には何とか形になりました。これからブータン政府が指定した優先作物であるトマトを中心に栽培をする予定で、土作りと苗作りをすすめていきます。

液肥づくり

有機栽培志向の強いブータンでは有機肥料を作りたいとの要望があり,生ゴミ等で発酵有機液肥を作成するために,供与機材の500Lタンクをつかった発酵促進剤作りの指導を行いました。材料は砂糖、塩、地方のこうじ種、過熟果実,ヨーグルトなど、身近にある素材で作ることができます。ブータンでは各家庭で穀物利用の地酒を造ることがあるのですが、その醸造・蒸留酒と作り方も素材も似ていることと、化学肥料との混用施肥が非常に効果的であることから、農家への普及ならびに継続的な活用をどう展開していくかを今後検討していきます。

映像教材の開発

農家向けにゾンカ語(ブータンの公用語)のナレーションを入れた栽培技術指導用映像教材の開発を進めています。日本人専門家とバジョ農業開発研究センターの担当研究員が中心となり制作して、カウンターパート全員で精査し、最終的には農業省関係者の意見も反映させています。映像制作は非常に労力を要しますが、農家さんにとってわかりやすい教材として活用してもらうことを目指しています。

オートクレーブの修理

ロックダウンの間、人の出入りがなかったためか、センターの実験室に設置してあったJICAが供与したオートクレーブ(滅菌処理装置)の内部にネズミが入り込み、配線をかじって切断してしまいました。日本人専門家が修理をしたところ、無事に治り、動作確認もできました。

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発酵促進剤の作り方を指導する専門家

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発酵中の促進剤

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ビニールハウスの組み立て作業の様子

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完成したビニールハウス

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開発中の映像教材(有機発酵肥料)

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柿の脱渋講習会の様子

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修理したオートクレーブの内部

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修理中のオートクレーブ