ビニールハウス内の冬トマト栽培管理

2020年12月3日

プロジェクトが実施されているワンデュポダン県は首都のティンプーと比較し高度が1300メートルほど低く、気温が少し高めです。それでも11月頃から朝晩はずいぶん冷え込むようになりましたが、日中は圃場で作業すると汗ばむ陽気で、乾季のため朝は放射冷却で冷え込み、無加温ハウス内ではさらに朝晩と日中の温度差が30度以上と、大変な温度差になります。

バジョの農業研究開発センター(以下バジョ・センター)では、現在大根や長ネギ、小松菜などの冬野菜が順調に成長しています。一方で日中の気温がある程度上がるため、ビニールハウスでのトマトやトウガラシなどの夏野菜の無加温温室栽培を試みています。今回はトマトの栽培工程のいくつかをご紹介します。

まずは土づくりです。耕運機で土を起こし、畝を立ました。次に畝の一部にプラスチックシートでマルチングをしました。マルチングとは畝の地表面を被う技術で、雑草の繁殖を抑えたり、地温を高く保ち土壌水分を保つ効果があります。今回は地温が上がりやすく、冬場の栽培に適しているポリエチレン製の黒ビニールマルチ、材木廃棄物から作られた炭、敷きわらによる栽培比較試験も実施しています。ビニールマルチは、しわが寄らないように張るのは手足同時に使うテクニックが必要です。ちょうど実習に来ていた農業大学校の学生さんたちがマルチ張りに挑戦したところ、最初は要領を得ずにしわが寄ってしまったのですが、回数を重ねるごとにうまく張れる様になっていきました。マルチを張り終えたら、苗を移植するために適切な間隔でマルチに穴をあけ、ポットから苗を移植し、最初の支柱を立てます。

比較しているビニール黒マルチ、くん炭マルチ、敷きわら、マルチなしの畝の4つの試験区での、1か月後の生育状況の差は一目瞭然で、黒ビニールマルチのものが断トツに良く、2番目がくん炭マルチということがわかりました。

ブータンでは一般的にインド産の野菜や果物が市場に多く並びます。コロナの影響でインドからの輸入タマネギやトマト、トウガラシが不足している今こそ、食料の安全保障の観点から、冬季の温室栽培を有効活用していくことが必要とされています。プロジェクトでは、こうした新たなニーズに対応しながら現地で適応可能な農業技術を開発・普及しています。

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黒マルチを張る

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植穴の間隔を決めるために長さを図る

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植穴の間隔について説明する専門家

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植穴を開ける農業大学校の実習生

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植穴に苗を植える

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移植から1か月後(手前からマルチなし、くん炭マルチ、プラスティック黒マルチ)

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苗ポットへのかん水の指導

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ポットへの幼苗の移植について説明する専門家

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誘引用の枠支柱たて作業

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枠支柱を設置したところ