プロジェクト活動終了にあたって

2021年6月9日

2016年1月に開始したプロジェクトは6月末をもって終了します。5年半のプロジェクト期間中、園芸農業技術、特に果樹栽培の技術を中心に活動を実施してきました。プロジェクト活動を進めるにあたっては、バジョ農業開発研究センター(以下ARDC バジョ)のカウンターパートとの対話を通じ、農業政策の動向や、文化や慣習に留意し、いろいろな気づきを得ながらブータンに適した協力を行いました。
また、重要な活動の一つであった果樹農家育成研修では合計129名の農家の人たちが研修を受けました。時間と手間をかけて質の良い農作物を作る技術を持ち合わせていなかった農家の人たちが、技術を身に着け、成果を出すまでにはもう少し時間がかかりそうです。
日々の果樹や野菜の栽培技術の指導以外には、プロジェクト後半での活動として取り入れたボカシや籾殻燻炭といった有機農業資材作りとその活用はとても受け入れられやすく、各所から指導の要請がありました。終盤では特にリーフレットとビデオの技術教材作成に力を入れてきました。またプロジェクトの集大成として普及のノウハウと教材をまとめた果樹農家育成研修実施要領(ガイドブック)を完成させました。ARDC バジョの研究員や各県の普及員がガイドブックを活用して指導を行い、プロジェクト終了後は,C/Pが主体となって技術普及していくという道筋が付けられました。

2020年以降は新型コロナウィルスの世界的感染拡大の影響を受けたものの、ブータン政府の厳しい感染予防対策(すべての入国者は21日間の施設隔離+7日間自主隔離)が功を奏し、感染率をずいぶん低く抑えられていたこともあり、プロジェクトの日本人専門家は現地に残ったまま活動を継続してきました。それでも2回のロックダウンや行動制限のため、計画通りには活動を進められなくなりました。一方で、インドからの農作物の輸入が一時止まったこともあり、国内での食糧自給の重要性が再認識され、農業への関心が高まりました。若者の農業離れや、耕作放棄地の増加が問題となる中、この機会を捉えて、カウンターパートによるプロジェクトの成果が活用・普及されることを期待します。

ブータンにおける長年にわたる日本の農業分野への支援では、地方であったとしても日本人専門家が赴任して現場で現地の人々と一緒に汗を流してきました。こうした日本の技術協力の実施方法は、他の国際機関には見られません。その分ブータン人の日本の支援への認知度と、日本人に対する信頼は高いです。時代とともに協力の内容は変わっていきますが、農業という枠組みで考えると、今後もブータンにおける日本の農業技術支援は求められていくことでしょう。

これまでプロジェクトを支えてくださった関係者の皆様、そしてこのプロジェクトニュースを読んでいただいた方々に感謝申し上げます。

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第1期第3回果樹農家研修(2017年6月)

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果樹農家への苗木配布(2018年2月)

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柿の袋掛け(2018年9月)

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農家巡回指導(2019年2月)

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圃場巡回指導(2019年6月)

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農家巡回指導(2019年12月)

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農家巡回指導(2020年2月)

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普及員研修・ボカシ作り(2020年12月)

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プロジェクトで開発した教材(リーフレット)

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プロジェクトで開発した教材(ビデオ)

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プロジェクトで開発した教材(ガイドブック)