ロックダウンの中、小中高生に3Dモデリング体験をオンラインで提供

2022年3月21日

2022年3月、私たちのプロジェクトでは、首都ティンプーにあるファブラボ・マンダラとの協働で、「小中高生向けTinkercadオンライン研修」を実施しました。Tinkercad(ティンカーキャド)は、ウェブ上の作業平面で物体を組み合わせることで積み木のように造形できる3Dデザインプログラムで、子ども向けSTEM教育の入門編教材として、欧米を中心に広く利用が進んでいます。

ブータンでは、2月23日から首都が再びロックダウンに入ったのをはじめ、全国各地で厳しい行動制限が続けられています。初等・中等学校は、子どもたちへのワクチン接種が2回完了する4月半ばまで対面での授業が延期されており、子どもたちは自宅でほとんどの時間を過ごさざるをえなくなりました。そこで、私たちのプロジェクトでは、同じく行動制限の影響で在宅勤務を余儀なくされているファブラボ・マンダラに呼びかけ、子ども向けTinkercad研修をZoomで行おうと提案しました。

ブータンの教育制度では初等・中等教育合わせて12年制となっているので、8年生を境に学年グループを2つに分け、3月12日(土)と19日(土)の2日にわたり、午前の部と午後の部で各2時間、合計4回実施しました。ネット上で応募を呼びかけたところ、のべ102名からの応募がありました。ティンプーだけでなく、東はタシガン、サムドゥップジョンカル、南はサルパンやサムツィからも応募者がありました。

また、ブータンの子どもたちが、全員が自宅にPCやラップトップを持っているわけではないため、スマホでも研修の様子を見られるよう、4回すべてFacebookでのライブ中継を行うことにしました。

研修では、ファブラボ・マンダラのスタッフで、教育大学出身のペマさんがインストラクターをつとめ、3Dプリンターの原理を説明した後、Tinkercadの基本操作を説明し、その後、受講者1名の作業平面を画面上で共有し、他の受講者がそれぞれ追加したいブロックを指定して共同で組み立てていくという手法を取りました。質問がある場合、生徒はZoomのチャットボックスに質問を書き込みます。それを当プロジェクトの山田浩司専門家が読み、すぐに回答しました。第1回研修では生徒がTinkercadのアカウント開設に手間どる場面もあったため、2回目以降は主催者側であらかじめTinkercad Classroomのアカウントを作り、URLとニックネームですぐにログインできるよう工夫しました。

反響は上々で、受講した生徒の父兄からも、「プリンターでできた作品をZoomで見て、子どもたちが驚いていた」や「実際に自分のデザインした物が3Dプリンターで形になったら、感動するだろう」とのお声をいただきました。今回作成したTinkercadのアカウントは、自宅でも、学校のコンピューターラボでも、ネットにつなげられればアクセス可能で、子どもたちはデザインを続けることができます。

自分でデザインしたデータを持って3Dプリンターがある近くのファブラボやユースセンターに行けば、実際に形にすることができるでしょう。ファブラボ・マンダラと私たちのプロジェクトでは、今回の受講者には、3Dプリンターの材料使用料を免除にする特典を用意しています。

今回は、プロジェクトの期待される成果4「CSTのファブラボが、個人/市民および学校が自身のニーズに取り組み、スキルを高め、社会・経済的問題対処のためにカスタマイズされた製品を開発するためのオープンイノベーションのプラットフォームを提供する」の一環として、種々の行動制約がある中でこのイベントを開催しました。この経験をもとに、今後も子どもたちの興味を持続させるプログラムを用意してゆきたいと思います。

関連リンク

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Zoomでの研修に参加した子どもたちの様子。

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3Dプリンターで積層造形された花瓶を紹介。

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1人の生徒の共有画面上で、参加者全員がアイデアを出し合い、デザインを進める。

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2時間の研修の後、オリジナルの建物をデザインしてしまった生徒も。

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別の回での共同デザインの成果