自作スクーターで世界の障害者に勇気を与える-2022年第2回オンライン・ミートアップを開催

2022年6月3日

6月3日(金)、当プロジェクトでは、今年2回目の「オンライン・ミートアップ」を開催し、多摩ファビリティ研究所の倉本義介さんにお話しいただきました。

倉本さんは、もともと技術ライターのお仕事をされていましたが、2000年に滞在先のカナダで交通事故に遭い、車椅子生活を余儀なくされました。その後、肢体障害者用スクーターの存在を知り、さらに2014年に慶應義塾大学SFCの田中浩也准教授の著書『FabLife』と出会い、電動スクーターの自作を思い立ちます。台湾のファブラボ台北のネットワークに頼って部品調達を進めた後、国内では横浜・関内にある田中准教授の研究室やファブラボ浜松の施設を利用し、ボディパーツを製作しました。

2015年には最初の「ファブ・スクーター」完成しました。このファブ・スクーターは世界のものづくり愛好家の間でも注目を集め、同年の第2回ファブラボ・アジア・ネットワーク会合(台北)、2016年の第12回世界ファブラボ会議(中国・深圳)、さらには2019年にはドバイ・メイカーフェアにも基調講演者として招聘されました。また、東ティモールでもこのファブ・スクーターを自作したいとの動きがあり、倉本さんは現地のメイカーグループに対して、助言を行っています。そしてこの間も「ファブ・スクーター」の改良を進められ、2021年3月には、「バージョン3」を完成させました。

当日は、倉本さんが用意されたスライドを使って30分お話しされた後、東ティモールから聴講された、マルフィム・ギマランエスさんから、同国での取組み状況についてもご紹介いただきました。倉本さんの場合も、東ティモールの場合も、最も難しかったのは部品の調達だと指摘されました。

自作の電動スクーターを日本国内で走らせるのに、日本の法規制に抵触することはないのかとの問いに対しては、倉本さんは、「日本の道路交通法を調べて、その範囲内で収まる規格としてデザインした」と回答されました。ただし、製造物責任法には注意が必要で、自分のファブ・スクーターを複製して他の人に売った場合、その人の使用中の事故の責任が製造者にかかってくることがあり得るため、現在は自身の個人使用だけを目的として、製作・改良を続けているとのことでした。

部品調達の難しさはあるものの、それを克服できれば、あとはほとんどの部品や大型CNCマシンや3Dプリンターで製作可能で、「おもちゃを組み立てるようなもの」だと倉本さんは言います。特に、プラスチック成型でないと作ることが難しいと思っていたボディが、大型CNCマシンで合板を切り出したものでも利用可能だとわかった時には、大きな進歩を感じたそうです。

「自分でもできるのだから、他の人でもできます」と倉本さんは断言されました。当日参加した30数人の聴講者の間からは、「とても勇気づけられるお話しだった」との声が多く寄せられました。

関連リンク

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富士山を背景に日本からご登壇される倉本義介さん

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ファブスクーター

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最初の試作において、主要なパーツは台湾から輸入

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2019年のドバイ・メイカーフェアでの基調講演の様子

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東ティモールからコメントを下さったギマランエスさん