国内6カ所のユースセンター向けオンライン研修を実施

2022年10月21日

2022年10月18日から3日間、ファブラボCSTは、ブータン国内の6つのユースセンターのコーディネーターとボランティア、10名を対象に、3Dプリントに関するオンライン研修を主催しました。1日1時間のオンライン集中講義とし、講師はプロジェクトの山田浩司専門家が務めました。

ユースセンターは、地域の小中高生の放課後の憩いの場、青少年の健全な育成の場として、教育省青年スポーツ局が設置したもので、「トムデ(thromde)」と呼ばれる4つの政令指定都市(ティンプー、プンツォリン、ゲレフ、サムドゥップジョンカル)のほか、地方都市のいくつかにも置かれています。

2019年、STEM教育推進の場としてユースセンターに注目したユニセフが、プログラミングやフィジカルコンピューティングの学習キット「Pi-Top(パイトップ)」をユースセンターに供与しました。プンツォリンでは、配備されたPi-Topでプログラミングを学んだ高校生の1人が、その後、ティンプーのファブラボ・ブータンが請け負って行われたPi-Topプログラミング研修のインストラクターになるまでに成長し、さらにティンプー郊外のITパークに入居する外資系企業で職を得るといったケースも生まれています。

ユニセフはさらに、青少年が思い付いたアイデアをすぐに形にする手段として、2020年、3Dプリンターの供与を行いました。当初は4つの都市に配備される予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で南部3都市への配備は見送られ、教育省の判断により、別のユースセンターに当面配備されました。

感染が落ち着きを見せはじめ、私たちのプロジェクトで日本人専門家の任地入りがようやくかなった今年5月、山田専門家がプンツォリンユースセンターを訪問し、科学技術単科大学(CST)に間もなく開設されるファブラボにも3Dプリンターが配備されるので、プロジェクトの成果4にある地域へのアウトリーチ活動を、ユースセンターとともに進めたいと打診しました。その際に、同専門家は、コロナ禍でプンツォリンへの配備は凍結中だと聞かされました。

山田専門家は続いて、5月末のティンプー出張の際に教育省青年スポーツ局を訪ね、ユニセフの供与機材が有効活用されるようプロジェクトも協力するので、プンツォリンへの配備の検討を求めました。その際、同専門家は、3Dプリントした具体的な造形のサンプルを見せ、重要なのはつくるものに関するアイデアであることや、配備される機種についてはプロジェクトでも操作経験があり、メンテナンスや修理の要点も理解していることを強調しました。

青年スポーツ局では、コロナ禍で閉鎖されていたユースセンターのスタッフ退職や交代、ボランティアの離脱などによって、すでに配備されていたセンターでも供与機材を使いこなせないケースがあることを憂慮していました。初期の配備の際に導入研修の委託先となったファブラボ・ブータンは、今年8月に他組織に移管され、同局は研修委託を行うことができなくなりました。そこで、プンツォリンのユースセンターとの関係を深めようとしていたファブラボCSTに白羽の矢が当たり、プンツォリンだけではなく、他のユースセンターの関係者も集めた、オンラインで研修を開いて欲しいと、山田専門家に要請がありました。

3日間の研修には、4都市のユースセンターの他に、クルタン、カサダプチュのセンター関係者が参加し、1)3Dプリンターができることの幅の広さ、2)配備された機種(UP mini ES)及びスライサーソフトウェア(UP Studio)の操作と機械のトラブルシューティング、3)原料(フィラメント)の種類と調達方法、4)印刷データの入手方法と3Dモデリングプログラムの操作などを学びました。

プロジェクトでは、プンツォリンユースセンターとの関係をさらに深め、新たに配備された3Dプリンターを使いこなせるスタッフとボランティアの育成に努め、プンツォリンが他のユースセンターへの指導も行えるよう、見守っていく考えです。

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プロジェクトでもUP mini ESを導入

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三次元データから印刷に至るまでのプロセスを説明

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スライサープログラム「UP Studio」を画面共有

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実際の3Dプリンターの操作も実演

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3Dプリント時に起きる現象とその対処法についても説明

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原料(フィラメント)の選択についても言及

【画像】受講者との集合写真