農業・農村開発に寄与するソリューションの検討-タラヤナ財団イベントへの協力

2023年6月6日

プロジェクトサイトのある王立ブータン大学科学技術単科大学(CST)では、2013年から、ブータンの代表的市民社会組織の1つである「タラヤナ財団」の資金協力を受けて、工科大学生が農業・農村開発の課題に対するソリューションを検討する、「グリーン・テクノロジー・チャレンジ」が毎年開催されてきました。毎年春学期恒例の行事として定着しており、上位入賞した試作品は、同財団の支援地域における実装が期待されます。

コロナ禍で2年間中断されましたが、2023年は同チャレンジが再開され、タラヤナ財団から開催要請を受けたCSTでは、電気工学科が主体となって、3月上旬には学生へのチャレンジ参加募集が始まりました。その準備段階で、電気工学科から協力要請を受けたファブラボCSTでは、参加チームの試作段階での施設利用を支援するとともに、参加チームには、1)複数学科の混成チームを推奨、2)試作プロセスを記録すること、の2点を求めました。

5チームがエントリーし、早いチームはファブラボCSTでの試作を4月下旬にはスタートさせました。今年のテーマは「冷蔵施設(Cold Storage)」で、農家が収穫した野菜や果物、加工した乳製品などを長く保存して、市況が有利な時に出荷するような時期の調整や、逆に市場で調達してきた野菜、肉類の自宅での長期保存を可能にし、かつ世帯ないしは生産者グループレベルで導入可能な、廉価なソリューションが求められます。

5月下旬の本選会に向けて、早めに試作に着手したチームもあったものの、本選会がCSTの学期末のプロジェクト試作課題提出時期とも重なり、3Dプリンターやレーザー加工機の前には行列ができました。こうした状況から、閉業時間の夜19時以降や、本来休業日である日曜日のファブラボ利用について、学生からの要望が相次ぎました。予約システムの改善は、今後の大きな課題です。

5月29日の本選会に臨んだ出展作品は以下の通りです。
1)高地ルナナでの使用を想定した太陽光利用冷蔵庫
2)竪穴式倉庫
3)地元土材を壁材に用いた倉庫
4)緑色LED照明を用いたジャガイモ保存施設
5)運搬用小型冷蔵庫から大型冷蔵施設まで、モジュール化された冷蔵施設
全チームが試作段階でファブラボを活用し、うち3チームは複数学科の混成チームでした。中には女性だけで作られたチームもありました。

審査は、ブータン食糧公社(FCB)、タラヤナ財団、ブータン企業家協会、ファブラボCST等から選ばれた5人の審査員が、各チームのプレゼンを聴いた後、個別に行った質問に対してどう答えたかによって評価が行われました。その結果、4)緑色LED照明を用いたジャガイモ保存施設が最優秀作品に選ばれました。審査員からは、「緑色LEDを使うという発想がユニーク」との声が聞かれたほか、試作を早めに終えて実験結果も提示していた点が高く評価されました。

上記作品のうち、3)~5)については、タラヤナ財団が実装を検討するため、試作品をティンプーに持ち帰ることになりました。

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参加チームによるファブラボでの試作の様子(写真/山田浩司)

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全参加者が集まっての集合写真(写真/CST)

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竪穴式倉庫(写真/山田浩司)

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地元土材を壁材に用いた低コスト倉庫(写真/山田浩司)

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緑色LED照明を用いたジャガイモ保存施設(写真/山田浩司)

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緑色LED照明で最優秀賞を受賞した計装制御工学科4年生のチーム(写真/CST)

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モジュール化されたスマート冷蔵施設を提案したチーム(写真/CST)

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地元土材を壁材に用いた低コスト倉庫、屋根をとると…(写真/山田浩司)