近隣サムチ県の高校生とプロトタイピングに取り組む-FAB23への協力①

2023年7月10日

ファブラボのグローバルネットワークは、2年でほぼ倍増するペースで世界的に増え続けるファブラボの担当者が顔を合わせ、お互いの近況をアップデート、ファブラボ間の連携を促す場として、毎年1回、「世界ファブラボ担当者会議(FABx)」を開催しています。これは、世界各国で持ち回り開催されており、2023年の第18回大会「FAB23」は、ブータンが開催国を務めます。7月16日から28日まで、世界各国のファブラボの担当者やものづくり愛好家、約300人がブータンを訪れる予定です。

こうしたFAB23関連イベントの1つに、「ファブ・スクール・チャレンジ」があります。これは、JNWSFLが全国の学校に呼びかけ、主に中高生が身の回りの課題をデジタルものづくりを通じて解決する方法を提案し、実際に近隣のファブラボの施設を利用して試作品を完成させ、FAB23の場で展示してもらおうという企画です。

現在、ブータンには、稼働中のファブラボが5つあります。ファブラボCSTも、ブータン南西部に位置する唯一のファブラボとして、地域の中高生の「ファブ・スクール・チャレンジ」への参加に、協力するよう求められました。

書類選考を経て南西地域から選ばれたのは、サムチ県のサムチ高等中等学校とユセルツェ高等中等学校の2校でした。ファブラボCSTのあるプンツォリンまで、国内陸路で2~3時間はかかる両校ですが、学校が夏休みに入った7月3日から5日まで、両校生徒と引率の先生がファブラボCSTを訪れ、それぞれのアイデアを形にする作業に取り組みました。

一方、ファブラボCSTでは、科学技術単科大学(CST)の学期末試験期間終了後の6月19日から、複数の学科出身1~3年生から構成される10人をインターンとして受け入れています。インターン実習開始からすでに2週間を経過し、デザインから工作機械操作までひと通りのスキルの底上げがなされてきた10人を、私たちはファブ・スクール・チャレンジ参加高校生との協働作業に投入し、学外に実際に存在するさまざまな課題に対して、ユーザーとともに解決策を共創する体験をしてもらうことにしました。

サムチ校のチームは、血液透析のメカニズムの学習を促進するための模型の製作に取り組みました。CST学生の指導を受けて、腎臓の模型や透析機のパーツを3Dプリンターで製作したり、血液を流すポンプの制御のプログラムを作ったりして、3日間の試作に取り組みました。

一方、ユセルツェ校のチームは、経済学の授業で先生が教室のホワイトボードで正確な需要曲線や供給曲線などが描けるよう、可変式の目盛りを持つX、Y軸用ものさしと、磁石を装着した曲線描画用ワイヤーの試作を行いました。ものさし製作にはレーザー加工機、磁石を装着したジョイント部分の試作には3Dプリンターが用いられました。

両チームとも、所定の期間内にほぼ試作を終え、いったん学校へ持って帰ることができました。参加チームの高校生の中には、将来エンジニアリングの勉強がしたいとの希望者も多く、中にはCSTを志望して、将来のファブラボCSTの主要ユーザーになってくれることが期待される生徒もいました。

なお、ユセルツェ校チームの試作のアイデア出しには、経済学の学位を持つ山田浩司専門家も参加し、ファブラボにある材料を用いて、何を作ることができるのか、高校生や大学生のアイデア出しのファシリテーションを行いました。

両校を含む全国の中高生が取り組んだ試作の結果は、7月23日(日)、ティンプー市街の中心地である時計塔広場で開催される「ファブ・フェスティバル」の会場で展示される予定です。

関連リンク

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ユセルツェ校チームアイデア出しをファシリテーションする山田専門家(写真/Kuenga Lhamu)

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3Dプリントした腎臓模型の配置を議論するサムチ校チームとインターン(写真/Sonam Zangmo)

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高校生も3Dプリントを体験する(写真/Sonam Zangmo)

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引率の先生も作業に参加(写真/山田浩司)

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レーザー加工機操作を聴く高校生(写真/Sonam Zangmo)

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サムチ校チームと作品(写真/Karma Kelzang Eudon)

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ユセルツェ校チームと作品(写真/Karma Kelzang Eudon)