首都ティンプー第二のファブラボ「チェゴ・ファブラボ」との協働-FAB23への協力②

2023年7月17日

第18回世界ファブラボ会議(FAB23)は、7月16日にキックオフを迎えました。ブータンには現在6つのファブラボがありますが、うちファブラボCSTを含む5つのファブラボは、17日から22日まで、外国からファブラボ関係者やものづくり愛好家を招いて、地域の課題解決のプロトタイピングに取り組む、「ファブ・ブータン・チャレンジ」をホストする予定です。

しかし、残念ながらこの流れに乗れなかったファブラボがブータンに1つあります。首都ティンプーにて9月に開所予定の「チェゴ・ファブラボ」です。

チェゴ・ファブラボは、ブータンの王立国内ボランティア事業「デスープ」の技能開発部門DSPを運営母体とするファブラボです。スタッフはすべてデスープ出身者で、オレンジの制服を身にまとって職務にあたっています。DSPは2022年8月、ブータン最初のファブラボだった「ファブラボ・マンダラ(元ファブラボ・ブータン)」から機材の譲渡を受けました。現在、ティンプー市の市街地にて建設中の、DSPの技能展示センター「チェゴ・センター」に入居予定ですが、同センターの建屋の建設が終わっていないため、市北部のタバ地区のDSP本部敷地内に仮工房を置き、開所の日に向けて細々と活動中です。

しかし、FAB23主催者からの「ファブ・ブータン・チャレンジ」ホストの打診に対しては、まだ開所の目途がたっていないことや、常駐スタッフ1名(当時)で受入れ態勢が整っていないことなどを理由に、辞退せざるを得ませんでした。

また、チェゴ・ファブラボがファブラボ・マンダラから継承したデジタル工作機械の中には、壊れて動かないものも多く含まれていました。ファブラボ・マンダラが2017年7月に「ファブラボ・ブータン」として発足した直後、初めて取り組んだデジタル工作機械の現地製作プロジェクト「ファブ2.0」で試作した、CNCミリングマシンや3Dプリンターも、その中に含まれていました。

FAB23期間中に、ブータンで初めて作られたデジタル工作機械がスポットライトを浴びないのは惜しい―――私たちのプロジェクトが、ファブラボ開設どころかパンデミック下での行動制限により任地プンツォリンにすら入れなかった2021年6月から2022年4月にかけて、ティンプーでのプロジェクトの活動を下支えしてくれたのはファブラボ・マンダラでした。私たちのカウンターパートのうち4名が、2022年1月から6月にかけて、ファブラボのグローバルネットワークの人材育成プラットフォームである「ファブ・アカデミー」を受講し、無事卒業を果たせたのも、ファブラボ・マンダラの施設と、ファブ2.0を含む同ラボの工作機械が利用できたからでもありました。

そこで、私たちは、FAB23に向けて、ブータン初のファブ2.0工作機械が注目を集められるよう、これらを修復する「ファブ2.0リバイバル」プロジェクトを提案し、私たちの拠点であるファブラボCSTにチェゴ・ファブラボのスタッフを招いて、修復に向けた共同作業を行うことになりました。

7月11日(火)から14日(金)まで、チェゴ・ファブラボからマネージャーを含む3人のスタッフが訪れ、私たちのプロジェクトの竹村真郷専門家や、カウンターパート2人とともに、修復作業に取り組みました。この6人は全員がファブ・アカデミー卒業生であり、年次は異なるものの、アカデミー同窓生の協働が実現しました。

また、この期間中、ファブラボCSTでは、実習中の学生インターンからデジタル刺繍ミシンの操作方法についてチェゴ・ファブラボのスタッフに技術移転が行われ、さらに山田浩司専門家からは、ファブラボCSTの運営体制、これまで実施してきた活動の概要について、説明が行われました。山田専門家からは、まだファブラボCSTがなかった時期に、遠く離れた首都で将来の需要創出を図るために、活動でどのような工夫をしたのか、その経験も共有されました。

修復作業は、もっとも易しいとみられていたCNCミリングマシンの修復で3日間を費やしたため、3Dプリンターの修復は、引き続きファブラボCSTにおいて、竹村専門家とカウンターパートが取組み、1週間後にチェゴ・ファブラボに引き渡すことになりました。修復がかなったファブ2.0の試作品は、FAB23カンファレンスの会場にて、山田専門家のパネリスト登壇の中で紹介される予定です。

チェゴ・ファブラボはティンプーの市街地の中心に近く、JICAや国際開発金融機関の現地事務所からも至近距離にあります。学校や市民社会組織などからも、開所を待ち望む声が多く聞かれます。チェゴ・ファブラボが、ファブラボCSTで得た知見を生かして、今後の活動の充実に役立ててくれることを期待します。

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チェゴ・ファブラボのスタッフにアドバイスを送る竹村専門家(写真/山田浩司)

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CSTのファブ・アカデミー卒業生2人が修復作業に参加(写真/山田浩司)

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CNCミリングマシンの修復作業から開始(写真/山田浩司)

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ファブ・アカデミー卒業生6人による共同作業(写真/山田浩司)

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4日目は3Dプリンターの修復活動に着手(写真/山田浩司)

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ファブ2.0試作機を前に集合写真(写真/山田浩司)