プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)デジタルものづくり工房(ファブラボ)による技術教育・普及促進プロジェクト
(英)Project for Promotion of Technology Education and Diffusion through Digital Fabrication Laboratory(Fab-Lab)

対象国名

ブータン

署名日(実施合意)

2019年12月5日

協力期間

2020年12月18日から2023年12月17日

相手国機関名

(和)ブータン王立大学科学技術カレッジ(CST)
(英)College of Science and Technology (CST), Royal University of Bhutan

背景

ブータン王国(以下、ブータン)における主要な産業は、農業及び水力発電によるインドへの売電であり、水力発電による売電や関連する建設分野が経済成長をけん引してきている。しかし、国内市場が小さく水力発電以外の産業の発展は限られており、多くの消費財や資本財をインド及び他国からの輸入に依存しているため、慢性的な貿易赤字を抱えている。また、ブータンは急峻な山に囲まれた内陸国であり、各地域同士のアクセスが悪いため、高い輸送コストや長期の物資調達期間がブータンの産業発展の阻害要因にもなっている。

また、ブータンの人口はわずか73万人(2017年)ほどであるが、2017年の都市部若年層の非雇用率は16.7%となっており、社会問題化している。現在は雇用創出の観点から産業多様化を図ることとしているが、社会に出る若者と産業界の求める人材との間に知識・技術のギャップがある。

上記を受け、ブータン王立大学では、産業の発展や創出に貢献する実践的なスキルを持った卒業生を輩出するため、高等工学教育の質の向上が求められている。一方、王立大学では高等学校卒業後の受け皿として生徒数を増やしているが、増加した生徒に対し実践的な教育機会を与えるためのインフラは整っていない。王立大学傘下の理工学系大学である科学技術カレッジ(CST)においても、実践的なスキルを備えた人材を輩出するためには、充実した教育プログラムと、実験やワークショップなどの実践的な教育を可能にするインフラ整備が必要となっている。

本協力は、ブータン王立大学科学技術カレッジにおいて、個人が自由な発想で様々なものづくりができるパソコン制御のデジタル工作機器を備えた地域工房、および工房間の世界的なネットワークであるファブラボの設置とそれを活用した大学内外の連携促進により、技術力を社会や産業のニーズに結び付ける新しい教育モデルを開発し、科学技術カレッジを取り巻く地域社会の課題解決や産業の活性化を目指す。

目標

上位目標

ブータンにスキルベースの教育プログラムを組み込み、デジタルファブリケーションを通じて社会問題を解決する。

プロジェクト目標

CSTにデジタルファブリケーションラボを設立し、技術力を社会や産業のニーズに結び付ける新しい教育モデルとイノベーションを開発する。

成果

1.CSTの電子・コミュニケーション学科(ECED)に、デジタルファブリケーション技術の拠点として世界標準型のファブラボが設置される。
2.ファブラボを通じて、大学内の学際横断的なラボベース研究連携・連動が促進される。
3.ブータン国内の社会経済課題解決に資するため、CSTが他大学や他官民機関と連携し、ファブラボがそのプラットフォームとなる。
4.CSTのファブラボが、個人/市民および学校が自身のニーズに取り組み、スキルを高め、社会・経済的問題対処のためにカスタマイズされた製品を開発するためのオープンイノベーションのプラットフォームを提供する。

活動

1-1. ECEDがファブラボの運用・管理部門となるよう学内で必要な手続きと調整がなされる。
1-2. ファブラボのインストラクターとなる人材を教育する。
1-3. ファブラボのための持続可能な事業計画を立てる。
1-4. ファブラボの運用・管理のための規則や規制を定める。
1-5. ファブラボ設置のための内装を整備する。
1-6. ファブラボに必要な機材や予備品を調達する。
1-7. ファブラボをECEDのカリキュラムに組み入れる。

2-1. 他学部の学生向けにデジタル製作技術に関するトレーニングプログラムを提供する。
2-2. 他学部の研究所に対しプロトタイプ製作や器材製作を支援する。
2-3. イベントを開催し、学生・教授の学部横断的なコラボレーションを促進する。

3-1. 標準運用手順(SOP)を作成し、他大学や他機関との連携を可能とする環境を作る。
3-2. 関連する技術とスキルが適用される分野での学生の現場訪問を促進する。
3-3. 他大学や他機関とのコラボレーションを促進するためのフォーラムを開催する。
3-4. ファブラボを活用し、他大学や研究所と協働したサブプロジェクトを実施する学生を支援する。

4-1. 市民がファブラボを使用するための料金体系含む規則や規制を定める。
4-2. 市民をファブラボのユーザーとして受入れ、トレーニングやワークショップを提供する。
4-3. 革新的な製品の新規アイデア創出のため、ファブラボユーザー間の交流を促進する。
4-4. 教職員と学生が科学技術の実演・実験のために学校を招待する、アウトリーチプログラムを開発する。

投入

日本側投入

・専門家派遣:長期専門家(チーフアドバイザー)、短期専門家(ファブラボ運営、デザイナー、デジタル制作技術指導、カリキュラム形成、民間セクター/起業支援、現地専門家 等)
・機材供与:ファブラボ関連機材
・本邦/第三国研修
・現地活動費

相手国側投入

・カウンターパートの配置
・専門家執務スペース
・関係機関との調整
・その他ローカルコスト負担