ジェンダー基礎調査の実施

2023年2月24日

ブータンでは就業人口の50%が農業セクターに従事し(National Statistics Bureau、2020年)、女性就業者に限ってみれば、59%が農業セクターに従事しており(Labour Force Survey、2020年)、農業は女性の主要な産業であることが分かります。しかしながら、このうち58%が家族従業員や自己会計労働者であり、インフォーマルな就業形態となっています。

こうした状況を詳しくに調べるため、2023年1月後半から2月中旬にかけて、プロジェクト対象地域のティンプー、パロ、ハ県において、ジェンダー主流化短期専門家による基礎調査が実施されました。本調査を通して、ジェンダーに基づく規範・役割分業や、農業技術改善や農業普及などのサービスへのアクセス、家計などに関する意思決定過程への参画が、各家庭でどのようになされているのか、県農業事務所職員や各地の農家への聞き取りを行いました。

訪れた農家家屋は、伝統的な作りであっても、居間の中央には薪ストーブが据えられ、使いやすく工夫された台所がありました。農家の女性たちは、農業技術研修を受ける機会を持ち、農業を行い、農産物の販売にも大きく関わっていました。男性は主に農業以外の経済活動に従事していることが多く、農繁期には親戚やご近所と交換労働をしたり、人を雇用するなどして農作物生産を行っていました。家事や育児に関しては、主に妻が担当するものの、妻が忙しいときは夫が行うことに男性は抵抗がない様子で、家計は主に妻が管理していることがわかりました。

アフリカ地域の場合は、農業活動において女性が男性と平等に研修の機会を得ることや、夫と一緒に妻が農産物の作付けや販売を決定するなどのジェンダー格差を解消することによって農業の収益向上が図られています。しかし、主に妻が家計を管理し、比較的労働や家事の分業が行われているブータンの女性に対しては、アフリカ地域のような文脈は、あまり当てはまらないようです。しかし、各農家が3年後の家族のビジョンを設定し、ジェンダーに対する理解を深め、SHEP活動への参加の意欲を高めることへの支援は十分に可能と考えられます。今後、ブータンの現状に沿ったジェンダー活動の取り組みは、カウンターパート機関や県農業事務所とともに、農家レベルで実践されていきます。

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県農業事務所職員への聞き取りの様子

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訪問した農家と女性

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農家女性への聞き取りの様子

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高地にある農家家屋とジャガイモ畑