プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)温帯果樹振興プロジェクト
(英)Integrated Temperate Fruit Crops Promotion Project

対象国名

ブータン

署名日(実施合意)

2021年10月13日

協力期間

2022年3月14日から2027年3月13日(5年間)

プロジェクトサイト

ブータン西部地域3県(パロ県、ティンプー県、ハ県)

相手国機関名

(和)農業林業省農業局、国立種苗センター、国立有機農業センター
(英)Department of Agriculture, Ministry of Agriculture and Forests, National Seed Centre, National Centre for Organic Agriculture

背景

ブータン王国において、農業セクターは就業人口の50%が従事している同国の基幹産業の一つで、中でも園芸農業は所得と食料安全保障に重要な役割を果たすサブセクターの一つである。このためブータン政府は市場価値の高い園芸作物、有機農作物などを中心とした商業的農業振興に取り組むことを政策として掲げ、自給自足の農業から商業的農業に変えることで、農村の人々の生活を向上させることを目指している。
これまで、JICAによる園芸開発に係る長年の協力を行ってきたが、その活動の中で、国立種苗センター(National Seed Centre:NSC)パロと国立有機農業センター(National Centre for Organic Agriculture:NCOA)ユシパンにおいて、供給する苗木の質の低さと供給量の不足が、温帯果樹振興のために対処されるべき課題であることが認識された。これは、NSCパロとNCOAユシパン共に苗木生産に必要な基礎インフラの老朽化に加え、接ぎ木技術等のスキルが不十分であるため、枝や根を痛めた生育が悪い品質の低い苗木しか生産できず、量的にも不十分であることが、ブータン全土での苗木供給量の圧倒的な不足の一因となっているからである。さらに、園芸生産に携わる小規模農家の多くは、農業をビジネスとして考えておらず、主体的に農業を営んでいないことも指摘されている。
こうした背景から、本プロジェクトでは、NSCパロ及びNCOAユシパンにおいて、高品質の温帯果樹の苗木生産に必要な環境を整え、関係者に適切な温帯果樹の苗木生産と果樹園管理のための技術支援を行い、苗木の質の改善及び生産量の増加に取り組む。また、「中西部地域園芸農業振興プロジェクト(IHPP)」で構築したリサーチ・アウトリーチ・プログラム(Research Outreach Programme:ROP)に、市場志向型農業アプローチ(Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion:SHEPアプローチ)を導入することで、温帯果樹の生産強化による商業的農業を推進し、農家の生活向上に貢献することが期待される。

目標

上位目標

高品質な温帯果樹苗木の生産と供給、及び改良された果樹園管理を通して、園芸作物の導入による農業の商業化が推進される。

プロジェクト目標

園芸作物の商業化を推進するために、対象地域において高品質な温帯果樹苗木の生産と供給及び果樹園管理が強化される。

成果

1.高品質な果樹苗木生産に必要な環境基盤(圃場、果樹園及び施設を含む)がNSCパロとNCOAユシパンにおいて整備される。
2.関係者の果樹苗木生産及び果樹園管理に係る能力が強化される。
3.市場志向型ROPが開発・適応される。

活動

1-1.NSCパロとNCOAユシパンにおける既存の圃場、果樹園、及びインフラに係る課題が特定・分析される。
1-2.苗床と母樹園を整備する。
1-3.古い果樹園を修復して高品質な果樹生産(繁殖、接ぎ木、等)のための資材を開発する。
1-4.圃場管理のために必要な施設を整備する。

2-1.NSCパロとNCOAユシパンにおける果樹苗木生産と果樹園管理の課題が、ベースライン調査を通して特定・分析される。
2-2.いくつかの品目において高品質な果樹苗木生産に係る適正技術が特定・確認される。
2-3.NSCパロとNCOAユシパン職員に対する果樹苗木生産及び果樹園管理に係る研修がOJTを通して実施される。
2-4.対象品目に係る苗床の管理と繁殖、及び普及マニュアルが開発される。
2-5.対象地域の普及員、県農業官、種苗生産農家、民間種苗生産者に対して、苗木の生産に係る研修を実施する。

3-1.既存のROPをレビューして分析する。
3-2.SHEPアプローチに関する研修をNCOAユシパン、NSCパロ、ARDCバジョ、県農業官及び普及員に対して実施する。
3-3.ROP普及対象の候補となる果樹生産者を特定する。
3-4.SHEPアプローチを活用したROPの活動を計画し、対象農家への普及マニュアルを開発する。
3-5.対象県/地域におけるSHEPアプローチを活用したROPを確立する。
3-6.活動3-5の実施結果及び教訓を基にSHEPアプローチを活用した果樹生産者向けROPの見直しを行う。
3-7.市場志向型ROPの実施から得た経験と教訓をARDC、県、王立科学技術大学、及び他プロジェクトと共有する。

投入

日本側投入

1)専門家派遣:チーフアドバイザー(SHEP)、果樹生産、業務調整/研修、等
2)研修員受け入れ:果樹苗木生産、等
3)機材供与

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供