プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)灌漑計画・設計・施工管理能力強化プロジェクト
(英)Project for Capacity Enhancement on Irrigation Planning, Design, and Construction Management

対象国名

ブータン

署名日(実施合意)

2020年3月27日

協力期間

2020年10月16日から2026年10月15日

相手国機関名

(和)農業林業省、公共事業定住省
(英)MoAF and MoWHS

背景

ブータンにおいて、農業セクターは就業人口の6割以上が従事しており、同国の基幹産業の一つです。他方、国の大部分が険しい山岳地域であることから、農業生産性が低く、主食である米の自給率は約5割となっており、食糧安全保障の向上が課題となっています。また、全耕作面積のうち60.8%において天水農業が実践されている等(Bhutan National Irrigation Master Plan、2016年)、豊富な水資源を有するものの効率的に活用できておらず、当該国における灌漑開発のニーズは高い状況です。
安定した農家の所得向上及び農業生産性の向上のために、ブータン政府は灌漑開発を重点分野に掲げており、第12次5か年計画(2018~2023年)においては食糧増産を優先課題として、米の自給率を46.7%から60%まで向上させること、また灌漑受益面積を23%増加させることを目標としています。しかし、第11次5カ年計画(2013~2018年)において計画された主要灌漑施設の建設及び修復は、2018年時点において目標値の30%しか達成されていません。その要因として、1)ブータンのような渓流河川(国土の85%を標高2,000メートル以上の山岳・丘陵地帯が占める)を取水源とした灌漑施設の計画設計施工は難易度が高いこと、2)同国には計画設計基準が存在しないこと、3)大学での農業土木(灌漑)に係る実践的な能力開発の機会が不足しており、故に技術者の技術レベルが低いことなど、が挙げられます。
上記の課題に対し、本事業は当該国の灌漑開発に携わる技術者の能力強化・向上を通して、第12次5か年計画で掲げる灌漑受益面積の増加に資することとなり、ひいては水資源の有効活用を通して当該国の食料安全保障向上に貢献するものと位置づけられます。

目標

上位目標

ブータン政府による持続的な灌漑開発が推進される。

プロジェクト目標

農業林業省農業局技術部、農業研究開発センター、県技術課技術者の灌漑計画、灌漑施設の計画設計・施工管理に係る技術的能力が強化される。

成果

1.灌漑計画、施設の計画設計、施工管理に係る現状及び問題点が十分に把握される。
2.灌漑計画基準書と関連解説書、小規模渓流取水工、導水路(開水路、パイプライン)、配水システム(幹線、二次、三次開水路)及び関連施設(ゲート、分水工など)に係る計画設計基準書と関連解説書、及び施工管理ガイドラインが開発される。
3.モデル灌漑スキームが開発される(最大2か所)。
4.灌漑計画、施設の計画設計、施工管理に係る技術が研修を通して地方の技術者へ普及される。

活動

1-1.現地関係者への聞き取り及び関連文書を通して、灌漑開発計画/灌漑施設の計画設計・施工管理に係る現状及び問題点が十分に把握される。
1-2.現地調査を通して、既存灌漑施設の問題とその要因が分析される。
1-3.農林省農業局で灌漑開発に活用されている技術参考書の内容が把握される。

2-1.灌漑開発に係るブータンの自然条件と特性が把握される。
2-2.灌漑開発計画に活用できる水文・気象観測データが把握される。
2-3.活動1-1,1-2,1-3,2-1,2-2に係る分析結果を踏まえて、灌漑開発計画基準と解説書が策定される。
2-4.活動1-1,1-2,1-3,2-1,2-2についての分析結果を踏まえて、小規模渓流取水工、導水路工(開水路、パイプライン)、配水システム(幹線、二次及び三次開水路)及び付帯対象施設(ゲート、分水工など)に係る計画設計基準と関連解説書が策定される。
2-5.活動1-1,1-2,1-3についての分析結果を踏まえて、対象施設に係る施工管理ガイドラインが策定される。
2-6.大学教授、公共事業定住省代表者、県技術課技術者及びその他関係者を招いて、開発された基準書及び関連解説書を見直すためのワークショップが開催される。

3-1.モデル灌漑開発サイトが選定される(最大二ヵ所)。
3-2.モデルサイトでの灌漑開発に向けた調査測量が行われる。
3-3.モデルサイトの灌漑計画がカウンターパート及び県技術課のフォーカル技術者により策定される。
3-4.モデルサイトにおける灌漑施設の計画設計がカウンターパート及び県技術課のフォーカル技術者により行われる。
3-5.カウンターパート及び県技術課のフォーカル技術者による施工管理の下、モデルサイトの灌漑施設が建設される。

4-1.開発された技術基準及び解説書の内容が県技術課のフォーカル技術者へ教授される。
4-2.研修カリキュラムが作成される。
4-3.研修教材が作成される。
4-4.農業研究開発センター職員、県農業課職員及び県技術課技術者を対象に研修が実施される。

投入

日本側投入

長期専門家、研修員受入れ、機材供与(車両、測量/水文観測機器など)

相手国側投入

カウンターパートの配置、プロジェクト事務所、プロジェクト実施に必要な活動経費(カウンターパート国内出張費、活動費等)