モスタル市・クラグイェヴァツ市スポーツ交流2018

2018年5月6日

友好親善の歴史

2018年5月3日から6日まで、今年もモスタル市スポーツ協会(以下、SSGM)とプロジェクトは、モスタルの子どもたち37人を連れて、クラグイェヴァッツ市に行ってきました!
このスポーツ交流は、両市の間で毎年恒例の行事となっており、今年で8回目を迎えます。両市の友好関係は40年もの歴史があり、姉妹都市としてこれまで互いに発展してきました。クラグイェヴァッツ市では、5月6日を『市の記念日』として毎年お祝いしていますが、今年は同市が旧セルビアの首都となってから200周年という記念の年で、国内外から多くのゲストが訪れ、文化・スポーツ交流が行われました。
そのスポーツ交流の一環として、モスタル市から、13歳から14歳の男子サッカーチーム14人、男子バスケットボールチームチーム11人、女子バスケットボールチーム12人が参加しました。モスタルのチームは、ボシュニャクと呼ばれるイスラム教の民族とクロアチア系の民族の子どもたちが混ざった混合チームです。迎えるクラグイェヴァッツの子どもたちはセルビア系民族。このスポーツ交流では、子どもたちはホームステイをしながら、練習試合をしたり、それぞれのホストファミリーと一緒に街の名所を訪れたりして、異文化を体験します。

【画像】

【画像】

国内外からの伝統舞踊チームによるダンスショー モスタル伝統舞踊クラブの踊り

Power of Sport

今年は『スポーツのパワー』について考える講演会を実施し、身近にいる『スポーツの経験を活かして社会に貢献している人』の話を聞きました。
クラグイェヴァッツ市よりゴラン・ニコリッチ氏、モスタル市よりスポーツ協会会長ハサン・シシッチ氏、JICAプロジェクトコーディネーター辻 康子(筆者)の3名がそれぞれの経験について話をしました。

まず、一人目のニコリッチ氏はクラグイェヴァッツ市障害者スポーツ支援センター『イスクラ』で働く一方、自身が弱視という障害を持ちながら、マラソンやサイクリングの選手として、いくつもの大会に参加する現役アスリートでもあります。毎年、クラグイェヴァッツからモスタルまでの400km以上の距離を自転車で走破しています。「スポーツをやるためには高価な道具や靴は必要ない。子どもの頃、ボーイスカウトで教わったロープワークから、たった一本の紐でも自分のイマジネーションによって、できることはたくさんあるということを学んだ。自分は目が見えなかったけど、決して他の子に負けなかった。イマジネーションの大切さは、スポーツでも同じことが言えると思う」というニコリッチ氏の話から、彼が弱視というハンデを負いながらも、何事にも想像力や工夫でこれまで努力してきたことがうかがえます。そして、そういう彼の姿を見て、多くの人が勇気をもらい、多大な影響を受けているのです。

二人目のシシッチ氏は御年83歳で、未だ毎日スーツをビシッと着こなし、元気に協会に出勤するスーパーおじいちゃんです。自身は若い頃、ボクシングをやっており、その後スポーツに関係ない仕事に就くも、モスタル市が2004年にそれまで東西にそれぞれあったスポーツ協会を統一すると決めたときから、会長として市内のスポーツ発展に多大なる貢献をしてきた人です。シシッチ氏の話は、「スポーツは、我々にいろいろなものを与えてくれる。健康や向上心、そして成功など。しかし、これまでスポーツを通じた人生を生きてきて、一番の財産は、たくさんのかけがえのない友情だ。」というものでした。それは、まさに我々がこのイベントを通して、子どもたちに実感してほしいことです。スポーツを通じて出会い、芽生えた友情はきっと一生続くことでしょう。

そして、三人目、本プロジェクトのコーディネーターとして現地に派遣されている筆者は、高校から柔道を始め、体育学部武道学科にて柔道を専攻し、その後4年間の体育教員経験を経て、JICAボランティア(体育職種)としてシリアに派遣され、以後国際協力の分野で仕事を続け、今に至ります。
筆者が子どもたちに伝えたのは、自分がこれまで国際協力の仕事を続けてきたパワーの源となっている柔道の『精力善用・自他共栄』という教えについてです。自分の持てる能力を社会の役に立て、自己も他も共に成長するということです。よく人からは『ボランティア』や『国際協力』という仕事について、「困っている人のために働くなんてすごいですね」というような声をかけてもらいます。確かに『人の役に立ちたい』という思いが原動力ではありますが、実際には自分ができることなんてほんの些細なことで、自分が学ぶことの方がずっと多いのです。自分の日本での知識や経験を途上国の人々に伝えようとするとき、必ず現地の人々の知恵や習慣などを学びます。そして、互いに話し合い、現地に一番合ったやり方を一緒に見つけ出すのです。そういった自身の経験から、スポーツを通じて相手と対話し、尊重し合い、助け合うことができるのだということを伝えたかったのです。
それぞれ国籍も宗教もバックグラウンドも違う3人のメッセージを子どもたちがどのように受け止めたのでしょうか。自分たちが今、スポーツを通して経験していることを、将来どのように社会の役に立てることができるのかということを考えて欲しいと思いました。

【画像】

スピーチをするニコリッチ氏(右)

【画像】

スピーチをするシシッチ氏(左)

【画像】

スピーチをする筆者(左)

スポーツを通して結ばれた絆

出発の朝、3泊4日のホームステイを終えた子どもたちの顔は清々しく、そして心なしか大人びて見えました。プログラム全体を通して子どもたちが抱いた感想には、「このプログラムを通して新しい友だちができた」「友だちとたくさんの楽しい時間を共有することができた」「ホストファミリーに温かく迎えてもらってうれしかった」「またクラグイェヴァッツを訪れたい」「スポーツを愛する仲間に出会えてよかった」といった声がたくさんありました。子どもも大人も別れを惜しみつつ、9月のモスタルでの再会を楽しみにモスタルへの岐路につきました。

【画像】

【画像】

【画像】サッカー親善試合にて

【画像】バスケットボール男子親善試合にて

【画像】バスケットボール女子親善試合にて