モスタル市小学校はじめてのUNDOKAI(運動会)

2018年6月5日

UNDOKAI導入のきっかけ

プロジェクトとモスタル市スポーツ協会(以下、SSGM)は2018年5月末から6月上旬の4日間に亘り、モスタル市の小学校低学年(1年から5年)を対象にUNDOKAIを実施しました。モスタル市には23校の小学校が存在しますが、今回はそのうち参加を希望した10校から、320名の小学生と26名の教員が参加しました。

ボスニア・ヘルツェゴビナ(以下、BiH)では、学校のスポーツ施設(運動場や体育館)が十分ではないため、各学校において、日本の運動会やスポーツ大会のような体育的学校行事の開催が困難な場合がほとんどです。そのため、これまでもSSGMが主体となり、モスタル市の小学校高学年(6年以上)から高校までの生徒を対象としたスポーツ大会を開催してきました。この既存のスポーツ大会は、陸上、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、卓球、チェスなどの種目で行われ、各学校の代表生徒が参加し、市内の児童生徒がスポーツに取り組む大切なイベントとして位置づけられています。しかしながら、SSGMは、学校教育における『体育・スポーツイベントの重要性』を認識しながらも、これまで小学校低学年の生徒が参加できるスポーツイベントはありませんでした。その原因は、SSGMの限られた事業予算や、学校教育全体での低学年への運動機会の提供が重要視されていないということにあるかもしれません。
2017年度にプロジェクトが紹介し障害者の方々と一緒に実施したUNDOKAIが参加者にもSSGMにも好評であったため、これを小学校低学年のためのスポーツ行事として定着させることを目的に実施された初めての試みです。

【画像】

当日の様子

UNDOKAIは障害物競走、玉入れ、綱引きの3種目だけに絞り、短時間で簡単にできて、子どもたちが楽しめることに焦点を当てました。各校1年生から5年生まで5名ずつ合計25名が参加しましたが、ほとんどの子どもたちがこのような競技を体験するのは初めてです。
それぞれの競技実施前に、大学生のボランティアがデモンストレーションを見せてから、実際の競技に入りました。

障害物競走では、トラックを一周する間に、ネットくぐり、ミニハードル、ドリブル、ピンポン玉スプーン運び、袋跳びの障害をクリアし、次の人にバトンタッチします。みんなとても真剣な表情で、一つ一つの障害をクリアしながら、全力疾走です。1、2年生は時折、どうしていいのかわからずに立ち止まったり、障害をスルーしてしまうような可愛らしい姿も見られましたが、高学年のお兄さんやお姉さん、先生たちに助けられながら、必死に頑張っていました。

玉入れは、2校ずつ対抗の総当り戦です。グランドの端から、中央のかごをめがけて走り、かごに到達した人から玉を投げ入れます。日本では明治時代に運動会(海軍の競闘遊戯会)が始まったと言われていますが、その頃から玉入れは存在していたようで、バスケットボールを参考に作ったとも言われています。さすが明治時代から今日まで引き継がれてきているだけあって、単純なのに、人々が夢中になる!今回のUNDOKAIでも、すべての子どもたちが他の種目以上に夢中になっていました。

最後はやはり綱引きです。綱引きは、その昔はオリンピック種目だったほど、世界的にも広まっているものですが、このBiHの学校ではあまり取り入れられてはいないので、初めて経験する子どももいたかもしれません。綱引きでは実際に競技している子どもたちはもちろんですが、応援する先生達の方が熱くなっていて、とても盛り上がりました!
今回はモスタル市郊外の学校からも参加できるよう、プロジェクトで交通手段を準備したこともあり、これまで市の中心地でのイベントへの参加が難しかった学校の先生からとても感謝され、このような機会をこれからも増やして欲しいという声が聞かれました。次回は先生や家族も参加できるようにしたら、更に盛り上がること間違いなしです。

【画像】

障害物競走・ネットくぐり

【画像】

障害物競走・袋跳び

【画像】

玉入れの様子

【画像】

玉入れの様子

【画像】綱引きの様子

UNDOKAIの魅力

このように生徒にも先生にも大好評だったUNDOKAIですが、これほどまでにUNDOKAIが人々に受入れられた要因は何でしょうか?
これらの種目は、難しいルールや得点に縛られず、走力や跳躍力、体のバランス等の運動能力や基礎体力の向上を図ることができることに加え、実施した種目に関して言えば、特別なスキルや事前の練習がなくても、誰でも気軽に参加できるということ、何よりも子どもたちが純粋に楽しんで、積極的に参加できるという点にあると思います。
また、実際の子どもたちの様子を見ていて気づいたことは、日頃学校の中で学年を越えて取り組む活動はあまりないと聞いていましたが、上述のように競技中には、自然と低学年の子が高学年の子をお手本にしたり、高学年の子が低学年の子の面倒をみたりという姿が見られました。
実際に、日本の学校現場でも、縦割りグループ活動(異年齢の交流活動)で、遊んだり、学んだりする場が意図的に創られていますが、こういった活動を通して育まれる『子どもが主体的に参加し、主体的に役割を担い、その大切さを実感する』すなわち、人と関わる中で得られる喜びを生徒が実感することは学校教育において重要であると考えられています。
UNDOKAIはそういった一例として、ここモスタルにおいても、子どもが学年、学校を越えて友だちと交流し、そこで子ども同士で助け合ったり、励まし合ったりすることから、相手を思いやったり、尊重したりする態度を養うための一助になるのではないかと考えます。

今後は、モスタル市の小学校において、より一層UNDOKAIを普及していくために、学校長や教員に対し、UNDOKAIの魅力を伝えていきたいと考えています。種目の充実やそのための機材等を整備していく具体的な方法をSSGMと協力して考え、進めていく予定です。

【画像】

【画像】