プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)土地管理及びインフラ開発のための電子基準点整備プロジェクト
(英)Project on Establishment of Continuously Operating Reference Stations(CORS)for Land Management and Infrastructure Development

対象国名

カンボジア

署名日(実施合意)

2021年4月12日

プロジェクトサイト

プノンペン、シェムリアップ、ストゥントレン

協力期間

2021年8月26日から2023年12月28日

相手国機関名

(和)地籍地理総局(GDCG)
(英)General Department of Cadastre and Geography

背景

1992年にカンボジアにおいて制定された土地法により土地の私的所有制度が導入され、2001年の同法改正では、土地の私有に対する権利保護への政府責任が定められた。同法の制定を踏まえて、国土管理・都市計画・建設省(Ministry of Land Management, Urban Planning and Construction)(以下「MLMUPC」)は、カンボジア全土を対象とする土地の境界測量の実施、土地登記簿への所有権登記、土地権利証の発行を行う土地登記システム(Systematic Land Registration)を運用中である。こうした施策により、個人の土地保有に対する保証制度が強化され、不動産市場が活性化し、土地を担保とする与信枠の拡充による投資活動も活発になってきている。
土地登記の前提となる地籍測量は、MLMUPC傘下の地籍地理総局(General Department of Cadastre and Geography)(以下「GDCG」)が2003年から実施している。カンボジア政府が定める国家戦略開発計画(National Strategic Development Plan 2019-2023)に基づき、2023年までに全土の土地登記を完了させることを目標としているが、2020年3月時点で、全国の6割程度の進捗にとどまっている。また、第四次四辺形戦略(2019~2023年)における優先課題「都市化の管理の強化」や経済社会基盤強化のためのインフラ開発の促進に向けて、開発用地の測量・地形図作成・土木工事等の効率的な実施が課題となっており、課題の解決には電子基準点を介した高精度な位置情報が有効である。加えて、高精度位置情報の利用は、新たなサービスやビジネスの創出に活用されることが期待されている。
かかる背景を踏まえ、GDCGは、地籍測量の迅速化と高精度な位置情報サービスの提供能力の獲得に向けて、電子基準点およびデータセンターの整備と、それらの運営維持管理のためのGDCG職員の能力強化、高精度測位データの民間セクターを含む利活用の促進を目的とした技術協力を我が国へ要請した。

なお、我が国は、「対カンボジア王国国別開発協力方針」(2017年7月)において、「生活の質向上」を重点分野の1つとして位置づけており、「都市生活環境整備に資する分野での支援」に取り組むとしている。また、「対カンボジア王国JICA国別分析ペーパー」(2014年3月)においては、「中長期的なインフラ整備を図るため、より高規格のインフラ整備計画の策定支援、実施支援を検討する」としており、本事業はこれら分析、方針に合致する。
また、我が国の「インフラシステム海外展開戦略2025」(2020年12月経協インフラ戦略会議決定)における、我が国の測位システム方式普及に向けた電子基準点の設置や運用支援、高精度測位サービスの利活用等の推進や、「第3期地理空間情報活用推進基本計画」(2017年3月閣議決定)における重点的に取り組むべき施策の一つとして掲げられている「電子基準点網及び準天頂衛星システムを活用した高精度測位サービスの海外展開」に合致することから、本事業の実施意義は大きい。
さらには、本事業が目指す、電子基準点の整備・活用を通じた効率的な土地管理およびインフラ開発の促進と高精度な位置情報を活用したビジネス展開・イノベーション創出を通じ、SDGsゴール9「強靭なインフラ構築、包括的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」に貢献する。

目標

上位目標

プロジェクトサイトに整備される電子基準点がGDCGによって適切に管理され、関連機関や民間企業によって活用されることで、土地管理のための効率的な地籍測量が行われ、また、同地域における社会インフラや住宅・オフィス等の開発・維持管理が効率的に実施される。(指標:地籍等の測量の生産性向上)

プロジェクト目標

プロジェクトサイトに整備される電子基準点が、地籍測量やインフラ建設・維持管理のための工事測量の分野で活用される。(指標:電子基準点を活用した電子基準点データの配信件数)

成果

1.パイロットエリアに電子基準点(全5点)及びデータセンターが整備される。
2.地籍地理総局(GDCG)による電子基準点及びデータセンターの運営維持管理能力が強化される。
3.電子基準点を活用した高精度測位データが政府機関や民間企業に利用促進される。

活動

1-1.電子基準点(5点)に適用する測地基準系が決定される。
1-2.電子基準点(5点)とデータセンターの設置場所と仕様が決定される。
1-3.電子基準点(5点)とデータセンターが本事業の中で設置される。
1-4.観測データをもとに新設の電子基準点の座標値が決定される。
1-5.現在の測地座標系と新設の電子基準点に適用される測地座標系間の座標変換パラメーターが策定され、同パラメーター活用のガイドラインが整備される。

2-1.電子基準点及びデータセンターの運営維持管理計画が策定される。
2-2.電子基準点及びデータセンターの運営維持管理体制が構築され、マニュアルが整備される。
2-3.電子基準点データの配信が開始される。
2-4.電子基準点データのデータポリシー及びサービス品質保証(Service Level Agreement:SLA)が策定される。
2-5.高精度測位サービス向上のためのユーザーサポートが強化され、マニュアルが整備される。

3-1.電子基準点データを活用した高精度測位サービスの利活用計画が策定される。
3-2.電子基準点データを活用した高精度測位サービスを活用するためのガイドラインが整備される。
3-3.ネットワークRTK等のGNSS測量マニュアルが整備される。
3-4.電子基準点データを活用したGNSS測量の精度検証が行われる。
3-5.電子基準点データを活用した高精度測位サービスの利活用促進のための現地セミナー、トレーニング、ワークショップ等の啓発活動が実施される。
3-6.本事業完了後の上位目標達成へのプロセスを含む、電子基準点整備のマスタープランが策定される。

投入

日本側投入

1)専門家派遣(合計約35M/M)

・業務主任/電子基準点・データセンター運営計画
・測地基準系管理
・電子基準点整備計画・設置/運営維持管理
・データ配信・品質管理
・高精度測位データ活用推進
・研修・セミナー計画/業務調整

2)研修員受け入れ(全2回を想定)

・電子基準点の運営維持管理/データ配信/利活用促進
・測地座標/変換パラメーター

3)機材供与

・電子基準点設備一式(プノンペンに3点、シェムリアップとストゥントレンに各1点の全5点)
・データセンター設備一式(バックアップサーバー、ソフトフェア含む)

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供(セミナー・実習、座標値計算のためのGNSS連続観測等)
3)電子基準点の設置場所の確保、建設許可、輸入許可、免税申請支援
4)電子基準点の運営に必要な設備(電気、通信等)、運営維持管理の予算・人員の確保
5)測地座標系の決定、データ配信等に係る政策の決定