プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)水道公社事業運営改善プロジェクト
(英)The Project for Improvement of Water Supply Management of Bee Timor-Leste

対象国名

東ティモール

署名日(実施合意)

2021年7月14日

プロジェクトサイト

ディリ市

協力期間

2021年11月27日から2024年11月28日

相手国機関名

(和)東ティモール水道公社
(英)Bee Timor-Leste

背景

東ティモール政府は、2011年7月に中長期開発計画である「国家開発戦略(Strategic Development Plan:以下、SDP)」を発表し、2030年までに全国民が安全な水にアクセスできるようになるため、ディリ及び12県の都市部で24時間給水を達成するという目標を掲げている。WHOとUNICEFによるJoint Monitoring Program(2017)によれば、東ティモールにおける都市の水利用状況は、基本的な処理をされた水へのアクセス率が98%であるものの、そのほとんどが時間給水であるため、SDPの目標とする24時間給水の達成を目指すうえで課題が多く残されている。
東ティモールの水道事業は、2002年の独立時点では施設の多くが破壊され、維持管理を担う人材も枯渇し、ほとんどの機能は停止していたが、2000年代の我が国の無償資金協力による水道施設の復旧、2008年以降の技術協力プロジェクト及び個別専門家による人材育成、およびアジア開発銀行(ADB)等の他ドナーの支援を受け、水道サービスは改善されつつある。しかし、公共事業省水道局(National Directorate of Water Supply:DNSA)が運転維持管理を行っている浄水場やポンプ設備の施設の不具合、管路の老朽化と漏水、運転維持管理や漏水対策などの対応が可能な人材の不足、都市への人口流入による水需要の増加、盗水(違法接続)に対する管理能力の不足、事業体の財務基盤の脆弱性や幹部層のリーダーシップの欠如等の問題が依然として残されており、ADBが実施したディリ市水道マスタープラン調査の最終報告書(2017)によるとディリの給水時間は0時間~6時間/1日程度にとどまっており、地区によって水圧や給水時間のばらつきも大きい。また、水道事業の経営に関する問題が深刻であり、ADBの同報告書(2017)によると2016年の無収水率は90%近いと推定されている。更に、料金徴収に関しては、DNSAの報告によると2019年11月はメータが設置されている約9,600世帯のうち約3,000世帯に請求書を発行し、約1,000世帯からのみ料金支払いがあったとされており、料金徴収の制度や実施にも大きな問題を抱えている。
2000年代の我が国の無償資金協力、2008年以降のJICAの技術協力プロジェクトによる支援があった後でも水道事業を巡る課題が依然として残った中で、JICAが派遣した給水改善アドバイザー(2012~2019年)によって、基本的な浄水場の運転技術の指導や、配水ブロック化(水理的分離)による一部の地区の24時間給水化が行われ、具体的に給水サービスが向上する成果が得られた。さらに、2018年6月に公共事業省に新たな大臣が就任し、水道分野の改善に意欲的に取り組んでおり、2021年1月には公社化及び組織改編が行われ、DNSAから東ティモール水道公社(Bee Timor-Leste、以下BTL)に水道事業が移管された。これらにより、東ティモールにおける水道経営の基盤が漸次整いつつあるものの、公社としての歩みを固めるうえで、施設運転・維持管理、料金徴収、人材育成などの課題が山積している。
BTLの公社化に合わせては、開発パートナーの支援が計画されており、ADBは公社設立に合わせて短期の専門家派遣を行う予定であるほか、管路・施設更新を検討しており、オーストラリア政府は水道施設の維持管理分野での専門家派遣による支援を予定している。また、世界銀行は調達に関する短期の専門家派遣を予定している。
かかる状況の中、東ティモール政府は、各開発パートナーの支援計画を踏まえ、BTLの公社化後の組織能力の改善を図るため、JICAが派遣した給水改善アドバイザーが支援した配水ブロック化による24時間給水化と浄水場の運転技術の指導の成果を展開し、加えて配水ブロック化等による水道料金収入向上の期待を踏まえた水道事業運営の能力強化を行うための技術協力プロジェクトの実施を要請した。

目標

上位目標

東ティモールの給水サービス(ディリ市)が改善される。

プロジェクト目標

BTLの事業運営能力改善のための基盤が整備される。

成果

1.BTLの職種別の人材育成計画が策定される。
2.BTLの顧客管理能力が改善される。
3.BTLの水道事業モニタリング能力が強化される。
4.BTLの配水管理能力が向上する。
5.BTLの効率的な浄水施設運転維持管理能力が向上する。

活動

成果1

1-1.職員の能力にかかるキャパシティアセスメントおよびベースライン調査、エンドライン調査を実施する
1-2.職種別、経験年数に応じた到達目標(能力、知識、経験)を設定する年間研修計画を策定する
1-3.研修制度(OJT、Off-JT)を整備し、優先度の高い研修を実施する
1-4.実施した研修のレビューを行う

成果2

2-1.水道事業サービスにかかる顧客意識調査を実施し、分析する
2-2.既存の顧客管理方法および顧客台帳を分析する
2-3.顧客管理方法および顧客台帳整備状況を改善し、効率化を図る
2-4.適切な料金請求・徴収サイクルおよび業務フローを検討、改善する
2-5.既存の料金徴収状況およびメーター設置状況を分析する
2-6.料金収入向上のための改善計画を策定し、実施する

成果3

3-1.現状の水道事業にかかる指標の取り方及びモニタリング方法を分析する
3-2.重要度及びデータの取得可否を踏まえ、モニタリングする重要業務指標を選定する
3-3.モニタリング体制を整備し、モニタリング・マニュアルを作成する
3-4.業務指標およびその算定方法について研修を行う
3-5.重要業務指標を継続的にモニタリング、分析を行い、定期的に水道事業モニタリング報告書を作成する

成果4

4-1.ベナマウクプロジェクト、ベモスプロジェクトのフォロー及び評価(課題・教訓の抽出)
4-2.配水ブロック化のパイロット事業の立案(計画、設計、施工、検査、維持管理)
4-3.パイロット事業の配水ブロック内の既設配水管の配管図面の整備
4-4.配水ブロック化のパイロット事業の実施
4-5.配水ブロック化のパイロット事業の成果まとめ(課題・教訓の整理、竣工図面の作成と整理)
4-6.パイロット事業の横展開(タスクフォースチームによる)
4-7.パイロット区画における水道事業サービスの効果的な住民啓発および広報について分析する

成果5

5-1.浄水施設の適切な運転維持管理(計画的な薬品調達と適切な保管、適切な薬品投入、適切な逆洗)を行う
5-2.機械・電気設備の適切な維持管理(消費電力量の把握、定期的な機器の点検・整備・修理)を行う
5-3.浄水場施設の日常点検、定期点検、異常時点検のマニュアル作成とマニュアルの継続的な活用方法を策定する

投入

日本側投入

1.長期専門家

配水管理、ベンチマーキング/業務調整

2.短期専門家

総括/人材育成/組織強化、顧客管理、水質管理、機械・電気維持管理

3.本邦研修/第三国における研修

短期研修(2週間程度)を1回/年程度

4.資機材供与

配水ブロック化に必要な資機材一式

相手国側投入

1.カウンターパートの配置
2.プロジェクト実施のためのサービスや施設、現地経費の提供
3.国内研修参加の際の旅費、配水ブロック化に必要な工事費、機材修理費等