プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)重点流域における森林減少抑制及び気候変動強靭化のためのランドスケープ管理能力向上プロジェクト
(英)The Project for Community-Based Landscape Management for Enhanced Climate Resilience and Reduction of Deforestation in Critical Watersheds

対象国名

東ティモール国

署名日(実施合意)

2021年12月23日(Record of Discussion, R.D.)

プロジェクトサイト

国内の重要4流域(Comoro, Laclo, Caraulun, Tafara)に分布する74ヶ村

協力期間

2022年4月12日から2027年4月11日(5年間)

相手国機関名

(和)農業水産省森林コーヒー工芸作物総局
(英)Ministry of Agriculture and Fishery, Directorate General of Forest, Coffee and Industrial Plants

背景

東ティモールでは1975年以降、森林減少が急速に進んでいます。2012年に行われた環境プログラム無償資金協力による全国森林調査の結果、2003年からの10年間で約184,000ヘクタールの森林が消失し、約171,000ヘクタールの密林が疎林または農地等になったことが明らかになりました。
この森林減少・荒廃には、住民による焼畑や無計画な農地転換、過剰な薪採取、家畜の過放牧、そしてこれらの活動に起因する森林火災が強く影響しています。この傾向を改善するには、住民自らが天然資源と土地の利用、さらに営農の方法等を改善する必要性があります。
JICAは、2005年2010年までラクロ・コモロ流域を対象に開発調査を実施し、森林の現況と住民の生計に係る現況を把握しました。その結果に基づいて、持続的な資源管理を目的とした流域管理ガイドラインを作成し、「住民主導型天然資源管理メカニズム(Community-Based Natural Resource Management Mechanism, 通称”CBNRM”)」を提案しました。
東ティモールにおけるCBNRMは、禁止行為を住民に周知する伝統的な慣習(タラ・バンドゥ, Tara bandu)に基づいて、村落規則を住民が遵守し持続的な天然資源管理を実行することを目的としています。営農や現金収入向上などの生計改善活動も取り入れ、天然資源の利用に係る住民の意識と行動の変容を促し、貧困の削減に貢献することを目指しています。
後続の技術協力「持続可能な天然資源管理能力向上プロジェクト」(フェーズ1:2012-2015)では、CBNRMのパイロット活動をコモロ・ラクロ流域で実施し、その知見に基づいてCBNRMの全体構成と基本的内容を構築しました。同プロジェクトのフェーズ2(2016-2022)では、改良を加えたCBNRMのパイロット活動をさらに多くの対象村で実施しました。また、活動を通じた政府関係者の能力向上に加えて、将来の広域展開のためのCBNRMロードマップや、CBNRMに係る農業水産省の省令案、各種の技術ガイドラインを作成し政府内の関連制度構築を支援しました。
フェーズ2では、同時にCBNRMの広域展開を目的とした新規プロジェクトのファインディング・プロポーザルを作成し、国際機関「緑の気候基金(Green Climate Fund; GCF)」に提出しました。プロポーザルは2021年に承認され(注)、これによって重要4流域(コモロ、ラクロ、カラウルン、タファラ)に分布する74ヶ村で、CBNRMが実施されることになりました。本件は、GCFとの協調による初めてのJICA技術協力プロジェクトです。
JICAは、GCFの認証機関(Accredited Entity, AE)および実施機関(Executing Entity, EE)としてGCF資金を用いたCBNRM活動実施に加え、政府職員の能力向上とCBNRMに係る制度整備、カーボン・オフセット植林やコミュニティー・フォレストリーの導入に取り組みます。

目標

上位目標

CBNRMメカニズムとコミュニティ・フォレストリーが、関係ステークホルダーとの協力・調整を通じ、対象とする優先流域の半数以上に拡大される。

プロジェクト目標

CBNRMメカニズムの実施を通して、プロジェクトサイトの脆弱な高地コミュニティー、関連する政府・非政府組織の森林劣化及び森林減少を削減するための組織及び個々の能力が強化される。

成果

1.対象流域における住民主導型自然資源管理の仕組みが確立される
2.持続的な自然資源利用に伴う生計向上研修による地域の強靭性が強化される
3.「CBNRMロードマップ」展開のための環境が整備され制度が設計される
4.インパクトが評価される

活動

1-1-1.気候変動脆弱性評価(CCVA)を取り入れた住民参加型土地利用計画(PLUP)を実施する(GCF案件での現地委託契約を想定)。
1-2-1.村落規則を活用し、持続的天然資源管理能力向上のための自治能力向上を図る(GCF案件での現地委託契約を想定)。
1-2-2.準県・小流域レベルの調整プラットフォームとして流域管理評議会を設立し、活動を行う(GCF案件での現地委託契約を想定)。

2-1-1.マイクロプログラム/FFS12を実施し、持続的で気候変動に強靭な生計手段を導入する(気候変動対応性のある農業、園芸作物栽培、アグロフォレストリー、コミュニティによる苗木生産や植林活動、コーヒー樹木再生活動、代替生計手段等)(GCF案件での現地委託契約を想定)。
2-2-1.小規模なカーボンオフセット・プロジェクトを開発、紹介し、民間投資を促進する。
2-3-1.流域内の選定エリアにおいてコミュニティ・フォレストリーを実施・促進する(GCF案件での現地委託契約を想定)。
2-4-1.対象流域を管轄地域とするMAF現場職員(普及員、フォレスト・ガード、県農業事務所技術職員等)の能力強化を行う。

3-1-1.対象流域ならびにその他流域において、プロジェクト活動のより効果的な実施とさらなる認知促進のために、公的な法律・技術文書の策定を支援する。
3-2-1.(対象4流域以外の)優先流域で活動するMAFやNGOの現場職員を能力強化する。
3-3-1.プロジェクトの成果(小流域・準県レベルの調整プラットフォームやCBAP等)を政府事業として制度化する支援を行う。この活動は第1期には行わず、第2期で実施する。
3-4-1.政府のキーパーソン(影響力のある政府職員、意思決定者、議員等)を含む適切なステークホルダーと、会議・セミナー等を通じて知識・情報共有を行う。

4-1-1.インパクト・アセスメントのためのベースラインを確立する。
4-1-2.プロジェクト活動(特にGCF案件における具体的活動)のインパクトを、適切に設計されたインパクト・アセスメントの手法を用いて評価する。
4-2-1.今後の類似プロジェクトにおけるインパクト・アセスメントに資する技術参照文書を開発支援する。

投入

日本側投入

1.専門家派遣:CBNRMメカニズム、カーボンオフセット、CBNRM政策・制度設計、ジェンダー・研修計画、リモートセンシング/GIS、コミュニティーフォレストリー(GCF予算)、調達・財務管理(GCF予算)
2.ローカルスタッフ配置
3.プロジェクトサイトでの活動費、現地研修費等
4.機材供与:車両、コンピューター等
5.調査団派遣

相手国側投入

1.カウンターパートの配置

中央レベル

森林・コーヒー・工芸作物総局 総局長
森林・流域・マングローブ管理局 局長
森林・流域管理部 部長、技術系職員、事務スタッフ
地域担当森林官

地方県レベル

県農業局森林・コーヒー・工芸作物局、農業普及局、県森林官
県行政事務長、財務・計画局長

2.中央・地方レベルでの事務所スペースの提供

3.プロジェクト活動のモニタリング等に必要な中央・地方政府職員の出張旅費等