プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)スエズ運河通航に関するマーケティング戦略策定能力向上プロジェクト
(英)Project for Enhancement of Marketing Strategy for Trade through the Suez Canal

対象国名

エジプト・アラブ共和国(エジプト)

署名日(実施合意)

2021年9月28日

プロジェクトサイト

イスマイリア(エジプト国)

協力期間

2022年1月17日から2024年1月31日

相手国機関名

(和)スエズ運河庁エコノミックユニット
(英)Suez Canal Authority, Economic Unit(SCA,EU)

背景

スエズ運河は、エジプト北東部に位置する地中海と紅海・インド洋を繋ぐ運河で、1869年にエジプト国とスエズ運河株式会社により共同で建設されました。その「航行の自由」は、1888年に締結されたスエズ運河の自由航行に関する条約に定められており、円滑な国際海運のために極めて重要となっています。1956年に国有化されて以来、スエズ運河の経営、開発、維持管理等は、首相府直属のスエズ運河庁(SCA:Suez Canal Authority)が実施しています。
スエズ運河は国際海運において最重要航路の一つとして位置づけられ、船舶大型化等の海運動向に対応して拡張開発されてきました。2015年8月に最新の拡張工事が完工した現在では、全長193キロメートル、水深24メートル、幅205メートルに拡張され、最大240,000DWTの船舶が通航可能となっています。また、南北双方向の同時通行が可能となる複線区間も拡大され通行可能容量も増大し、2019年の船舶利用数は18,880隻、利用船舶総トン数は1,207百万トンとなっています。
スエズ運河はエジプト国の政策においても重要な位置付けであり、その通航料金収入は、観光、石油、海外在住労働者からの送金に並ぶエジプト国の主要な外貨獲得源の一つです。2018/19年度の通航料金収入は約57億USドルとエジプトの外貨収入の約1割にも相当しています。エジプトにおける国家開発政策の「持続可能な開発戦略 2030」(2016年2月)では、経済開発優先プロジェクトとして計77の取り組みが示される中、スエズ運河開発はその筆頭として挙げられており、同運河はエジプトの国家政策においても、極めて重要な開発対象に位置付けられています。
我が国のSCAとの関わりは強く、1970年代以来、「スエズ運河航行安全プロジェクト」や「スエズ運河庁経営企画部門設立調査」によって、通航船の需要予測や料金設定の立案を行う組織であるエコノミックユニットの設立を支援してから、現在に至るまで技術協力が続いています。(注)
そんな中、スエズ運河の通航料金収入は、昨今の世界的な経済状況、石油価格、競合輸送ルートの整備等によって大きな影響を受け、今後も世界の海運の状況は継続的に大きく変化することが予想され、特に、2015年のスエズ運河の拡張とほぼ同時期にパナマ運河の拡張も実施され顧客獲得競争(北米発着)の激化や、シベリアランドブリッジによるアジア~欧州の陸上輸送強化が図られている状況があります。このような状況のもと、スエズ運河の優位性を保持していくことはエジプト経済にとって極めて重要な課題であることから、SCAからはマーケティング能力強化に係る支援が引き続き求められており、本事業では、これまでの協力を踏まえ課題となっていた需要予測や顧客マーケティング活動の実践的演習や実地経験を取り入れた発展的かつ継続的な支援を行っていくものとなります。

(注)近年実施したスエズ運河における技術協力
2000年~2001年 開発調査「スエズ運河経営改善計画調査」
2012年~2015年 技術協力「スエズ運河庁戦略強化プロジェクト」
2016年~2017年 国別研修「スエズ運河庁能力開発」
2017年~2018年 専門家派遣「海運需要予測モデルのアップデートとSCAのマーケティング機能強化」

目標

上位目標

スエズ運河の競争優位性が継続的に向上する。

プロジェクト目標

スエズ運河通航ルートに関するマーケティング総合戦略が策定される。

成果

1.スエズ運河通航の需要予測及び収入シミュレーションの実施能力が向上する。
2.海運市場の動向分析能力が向上する。
3.プライシング能力が向上する。
4.プライシング以外のマーケティングの能力が向上する。

活動

成果1に関する活動

1-1.使いやすいインターフェースを有するシステムを活用してスエズ運河通航の潜在需要を把握、推計する。
1-2.船舶の経路別運航費用の推計手法を発展させる。(代替燃料船を含む)
1-3.使いやすいインターフェースを有するシステムを活用した船舶の経路選択についての推計手法を発展させる。
1-4.使いやすいインターフェースを有するシステムを活用した収入シミュレーション手法を発展させる。
1-5.インド、米国メキシコ湾岸といった新興市場発貨物のスエズ運河通航需要を推計する。
1-6.使いやすいインターフェースを有するシステムを活用したシミュレーションモデルの演習をする。

成果2に関する活動

2-1.新型コロナ感染症やその他海運に係る要因(燃料価格の変動、船舶の大型化及び造船に係る新技術等)を考慮し、最新の海運市場の動向を把握する。
2-2海運ルート(パナマ運河、北極海航路、喜望峰ルート)、陸運ルート(チャイナランドブリッジ、シベリア鉄道等)、ガス・オイルパイプラインの現況を把握する。
2-3.船社の航路選定に係る最新動向を把握する。
2-4.国際海運集会所(ICS)、アジア船主協会(JSA)、船社等の関係者と海運動向や運河利用ニーズに関する意見交換を行う。

成果3に関する活動

3-1.プライシングに係る改善案を策定する。
3-2.積載量ベースの通航料への変更に係る影響を評価し、対応策を策定する。
3-3.長期契約や適用通過に関するリスクを評価し、対応策を策定する。
3-4.積荷による通航料の細分化に係る問題点を抽出し、その対応策を策定する。
3-5.プライシングに係る改善案を評価する。

成果4に関する活動

4-1.EU内マーケティンググループの活動を特定し、より効果的な活動を推進する。
4-2.顧客、潜在顧客、関係者との関係構築・維持の方法論を習得する。
4-3.プライシング以外の顧客満足度、顧客ロイヤルティの向上方策を策定する。

投入

日本側投入

短期専門家、研修員受入(オンライン・本邦研修)、現地傭人、機材

相手国側投入

カウンターパートの配置、ローカルコスト負担、施設・機材(プロジェクト実施に必要なスペース等)