プロジェクト概要

プロジェクト名

特別活動を中心とした日本式教育モデル発展・普及プロジェクト

対象国名

エジプト

署名日(実施合意)

2021年5月4日

協力期間

2021年10月1日~2027年10月1日

相手国機関名

教育省

背景

エジプトは、チュニジア革命に触発された2011年のエジプト革命後、暫く混乱が続いたが、2014年1月の新憲法制定、同年6月のエルシーシ大統領選出以降、安定を取り戻しつつある。一方、元々の革命の原因であり、人口増による若者の労働市場参入を背景とした失業率の高さ(2014年当時13.37%)や都市と地方の格差は依然として深刻であり、これらの改善には教育分野を含む広範な分野での対策が必要である。
エジプトの総合的な開発指針を示す「持続可能な開発戦略2030」(2015年3月対外発表)においては、「経済開発」、「市場競争力強化」、「人材開発」、「市民の幸福」の4つを達成すべき目標としている。エジプト政府はこの中の「人材開発」において教育を重点に掲げており、2030年までに効果的な制度の下で、質の高い教育を差別なく誰でもアクセスできるようにするとしている。また、当国児童法では、「児童が自尊心を高め、社会への参加の準備を整え社会で責任ある人材となることを十分理解し、児童の個性・才能・精神・身体能力を高めること」とし、学力だけでなく、心や身体を高めることを目指している。しかしながら、実際の学校教育は、学力に偏重しており、当国の教育の特徴である厳格な進級・卒業試験は、高い失業率(少ない雇用数)と相まって試験熱が加速し、学校での社会性醸成という機会が生かされていないという懸念がある。
かかる背景を受けて、2015年1月の安倍首相とエルシーシ大統領との会談において、同大統領より、日本式教育(特別活動:規律、倫理観、協調性等が醸成される学校行事、掃除、情操教育等)に関する支援の可能性について関心が示され、2017年2月より「学びの質向上のための環境整備プロジェクト」(以下「先行事業」という。)を開始した。
先行事業では、日本式教育の要素である特別活動や、日本の学校運営及び学級経営方法、遊びを通じた学びなどの活動をエジプトの公立校に導入し、全人的教育のモデルづくりや全人的教育を促進するため教育行政官等の能力強化を支援した。その結果、特活オフィサー(以下「TO」という。)と呼ばれる特活の指導主事が80名あまり育成されたほか、新設のエジプト日本学校(EJS)を中心とする公立校で全人的教育が実践され、子どもたちの協調性や、自己肯定感、問題解決能力が高まるなどの変化が確認された。
また、エジプト政府はこれまでの知識偏重、理論中心の学びから、問題解決能力や協調性、自己管理力などのライフスキルの獲得を目的とした学びに転換するため、先行事業に並行し2018年から大規模な教育改革に着手した。段階的に新教育システム「Education2.0」へ移行すべく、2018/19学年度に幼稚園及び小学1年生から新しいカリキュラムの導入を進め、2030年までに後期中等教育までをカバーする方針である。なお、新しいカリキュラムには日本の特別活動をモデルとした「Mini-Tokkatsu」3が正式に導入され、全公立校で実施する方針となった。
本事業は、これら教育セクターにおいて当国が進める政策及び教育改革を踏まえ、先行事業で開発した全人的教育モデルを普及し、持続的に実施していくためのエジプト側の体制強化及び仕組みづくりを支援するものである。

目標

上位目標

普及戦略で2030年を達成目標として設定した数の公立校において、全人的教育モデルが適切に実施されている。

プロジェクト目標

普及戦略で2027年を達成目標として設定した数の公立校において、全人的教育モデルが適切に実施されている。

成果

1.PMUにおいて全国的な全人的教育モデルの実施を管理する人材が育成される。
2.全人的教育モデルを実践するために必要なカリキュラムフレームワーク、教員ガイド等の教材が開発される。
3.学校レベルにおいて、全人的教育モデルを実施するための人材が育成される。

活動

PMUのエンパワーメント

1-1.PDMに記載された各活動の実施プロセスを記載した執務要領(Standard Operating Procedure:SOP)を作成、更新、承認する。
1-2.SOPに記載された全ての活動について、スケジュール及び予算策定を行い、PMU及び関係部局の年間業務計画に位置付ける。
1-3.学校における全人的教育モデルの実践と、子どもたちのパフォーマンスのモニタリングを行う。
1-4.一般校、既存校、パイオニア校及びEJSにおいて、ベースライン、中間、及びエンドライン調査を行う。
1-5.全人的教育モデルの実践のベストプラクティスを蓄積・共有するためのプラットフォームを整備する。
1-6.進捗に従い、全人的教育モデル普及戦略の改訂を行う。

PMUスタッフの能力開発

1-7.他関係部局と調整を図りながら、全人的教育モデルの普及と質の高い実践を保証するため、PMUスタッフに対して能力強化プログラム(技術面及びマネジメント面)を提供する。
1-8.TO及びPMUの調査研究チームに対し、TTCSプロポーザル6に基づく能力強化プログラムを提供する。

小学5年から中学3年までの教材開発を行う7

2-1.全人的教育モデルの実践に必要なカリキュラムフレームワーク、教員ガイド等必要な教材を開発、承認する。
2-2.これまで開発した全人的教育モデルの実践に必要なカリキュラムフレームワーク、教員ガイド等必要な教材を改訂し、承認する。

新カリキュラム導入にかかる全国カリキュラム研修及び現職教員研修への技術支援

2-3.教育省が実施する全国カリキュラム研修で活用するためのMini-Tokkatsu用研修モジュールや教材を開発する。
2-4.教育省が計画し、県・地区教育事務所等によって実施される現職教員研修で活用するためのMini-Tokkatsuにかかる研修モジュール及び教材を開発する。

公立校以外への支援

2-5.全人的教育モデルを推進するため、大学の教育学部や私立学校等に対し、全人的教育モデルにかかる研修モジュールや教員ガイド等の教材を提供する。

EJS、既存校及びパイオニア校の能力強化

3-1.EJS、既存校及びパイオニア校の校長及び教員に対して研修を実施する。
3-2.学校レベルでの全人的教育モデルの実践を強化するため、TOは学校のモニタリングを行う。

一般校の能力強化

3-3.全国カリキュラム研修の講師に対して、Mini-Tokkatsuにかかる研修を、段階的、分権的に実施する。
3-4.県及び地区教育事務所により実施している現職教員研修にTOを講師として派遣する。

EJS、既存校、パイオニア校及び一般校間の経験共有・学び合い

3-5.県及び地区教育事務所とともに定期的な経験共有を段階的に、分権的に実施する。
3-6.Education2.0担当の視学官に対し、Mini-Tokkatsuにかかる研修を実施し、助言する。
3-7.学校レベルでの全人的教育モデルの実践を強化するため、Education2.0担当の視学官は学校のモニタリングを行う。
3-8.TTCSにかかるパイロットプロジェクトの成果がどのように他の教育実践者(校長、教員、Education2.0担当視学官等)に対し適用されうるか検討する。

投入

日本側投入

1.専門家派遣(合計約250M/M):チーフアドバイザー、全人的教育実践、教育計画/学校運営、特別活動、幼児教育、効果測定、研修計画/モニタリング
2.研修員受け入れ:全人的教育、学校運営・学級経営等
3.機材供与:事務用機器等

相手国側投入

1.カウンターパートの配置
2.案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供