地域社会開発モデル構築のための各市での取り組み-チランガ市での市民会議発足に至るまでの経緯-

2021年12月27日

プロジェクトでは、今年9月から、有本総括の指導の下で、4つの市において生活改善アプローチに基づいた地域社会開発マネジメントの枠組み・仕組み(社会開発モデル)の構築が進められています。10月に、トロラ市での状況をご紹介しましたが、今回は、チランガ市の例についてご説明いたします。

チランガ市は、他の対象市に先駆けて、集落開発計画(PACO)と市での参加型開発計画(PEP)の連動プロセスの構築に興味を示していました。そこで、プロジェクトの実施機関であるFISDLと協力機関である市開発機構(ISDEM)の連携の下で、チランガ市での取り組みを支援することになっていました。しかしながら、2020年からのコロナ渦や翌年のISDEMの組織解体などにより、支援体制も弱体化して、活動自体が開始できない状態にありました。

市での社会開発モデルの構築のために、市役所の主導の下で、2つのグループの活動がまずは重要になります。すなわち、市民を代表とする「市民会議」と、官公庁の出先機関やNGO等の援助機関が参加する公的・民間の「組織間連携会議」とが、プロジェクトが目指す社会開発モデルを実践するにあたっての両輪となります。

チランガ市の場合は、他の対象市に比べて、PEPの計画策定や実施監理のプロセスでの住民参加が活発であり、それを牽引していたのが、ローカルNGO組織でその後、集落開発委員会(ADESCO)のリーダーたちから構成されるチランガ地方開発協会(ADELCHI)の存在でした。市役所や住民及び支援組織を仲介しているADELCHIは、すでに法人格を取得しており、その主要メンバーの役員や理事長には市役所の職員が名を連ねていました。当初ADELCHIのメンバーたちの多くは、この市民会議の設立が彼らの既存の立場やステータスを脅かすものではないかと懸念して、新たな組織の誕生には懐疑的な姿勢でありました。また市民会議が新たに発足されたとして、既存のADELCHIと組織間連携会議との役割についての役割分担が問題となりました。

「市民会議」と「組織間連携会議」の役割やそれぞれの組織強化やADELCHIとのデマケについて、市役所の職員やADELCHI関係者が数回話し合い、意見交換が行われ、関係者間での合意が達成されていました。最終的に市議会による決議案が承認されて、市民会議の設立が正式に承認されました。市民会議の目的を市民の生活改善を目的にPEPや市の事業計画を再活性化させるために市行政と住民との協働を促すプロセスの促進を市側に働きかけ、その旗振り役として活動していくことを定めたものであり、チランガ市議会にとっては画期的な決議となりました。

チランガ市では、市民会議の発足のために、市役所の主導により、3名のADESCOのリーダーたちを市民会議の発起人である市民委員に選出し、彼らに対して、市役所担当職員が市民会議の設立と市民アジェンダの作成についてのオリエンテーションを実施するなど、会議の立ち上げと参加メンバーの招へいの準備を始めています。

今後、市議会のお墨付きをもらった市民会議の早期の組織の立ち上げと活動の開始に向けて支援組織・グループの積極的な協力が期待されています。市民会議には、多種多様で広範な市民社会の組織や個人からが参加することが必要であり、今後、チランガ市役所と市民委員のメンバーは共同で、市民会議の役割を整理しながら、PACOなどの活動実践を通じて、すでに生活改善の知見、経験を持った人たちの市民会議への参画を進めて、徐々に組織を拡大し、構成メンバーを固めていきます。

市民会議のメンバーは、市役所・議会のリーダーシップの下で組織間連携会議などの支援組織の参画と協力を得て、生活改善アプローチに基づいた市の現状と将来のあるべき姿などを記した『市民アジェンダ』を作成して、将来像を描き共有しつつ、2023年以降の新規5か年計画(PEP)策定に取り組むことになります。

こうした市民会議などを通じた市民代表の組織化と社会開発モデルに基づいた市政運営への参加・協働促進に、プロジェクトとしても積極的に支援していくことにしています。

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組織間連携会議メンバー、ADELCHIと市役所職員との会合

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ADELCHIと市役所職員との会合

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市民委員のメンバーに対するオリエンテーション