プロジェクト概要

プロジェクト名

野口記念医学研究所 安全・質管理向上プロジェクト

対象国名

ガーナ共和国

署名日(実施合意)

2021年5月7日

プロジェクトサイト

アクラ

協力期間

2022年7月14日から2025年7月13日

相手国機関名

ガーナ野口記念医学研究所

背景

ガーナ共和国(以下、「ガーナ」)は、2010年に低中所得国入りし、2011年には史上最大の経済成長率を記録したが、その後、経済成長率は低迷し、2016年には3.7%に落ち込み、一人あたりの国民総所得は1,390ドルとなった。保健指標については、2015年を達成期限としたミレニアム開発目標達成への取り組みの結果、母親と子どもの死亡率が1990年から半減するなど健康状況に改善がみられたものの、5歳未満児死亡率は52(出生1000対)、妊産婦死亡率は310(出生10万対)(Ghana Maternal Health Survey, 2017)にとどまっている。
ガーナの疾病パターンにおいては、気管支炎、マラリア、HIV/エイズ、下痢症等の感染症が主要疾病の7割以上を占めており、感染症対策は重要な医療政策の一つである。15歳から49歳のHIV有病率は1.7%(UNAIDS DATA, 2020)であり、さらに罹患率を下げるには、引き続きHIV/エイズに関する対策が必要とされている。また、地理的にもラッサウイルスが蔓延しているナイジェリアやエボラ出血熱のアウトブレイクを経験しているリベリア等に近いことから、今後も同様の発生・流行のリスクにさらされており、対策が必要となっている。
野口記念医学研究所(以下、野口研)は西アフリカ域内ラボ・サーベイランスネットワーク(ECOWAS CDC)の主要検査機関として国内のみならず周辺国の検査支援、能力強化への技術支援等の役割が期待されている。これらの期待の一方で、野口研ではバイオセイフティレベル3(以下、BSL3)ラボのSOP(Standard Operation Procedure:標準業務手順書)は整備されているものの、SOP遵守や運用モニタリングが不十分であった。野口研内でも安全と質の担保のための質管理担当者の任命、ISOの取得などの取り組みを開始しつつあるものの、SOP遵守をモニタリングするシステムや電気技師、配管技師等の維持管理技師が、日常施設を利用する研究者と連携して維持管理を行う体制が依然欠如している。そのため、無償資金協力「野口記念医学研究所先端感染症研究センター建設計画(2016~2019)」により完成した新BSL3ラボを含む新施設である先端感染症研究センター(Advanced Research Center)が正しく運用され、更には野口研全体の研究の質向上と安全確保のため管理体制が強化されることが緊急の課題となっている。

目標

上位目標

野口研の質管理システムが国際的に認められた規格を満たす。

プロジェクト目標

野口研において質管理システムの運用と継続的改善が行われる。

成果

1.質管理室及び安全管理室が設立され、定められた業務内容に従い運営される。
2.野口研全体に質管理システムが構築され、質管理活動が実施される。
3.野口研全体のバイオセーフティ・バイオセキュリティが強化される。
4.ARLならびにBSL-2及びBSL-3実験室の施設・機材の維持管理が強化される。

活動

1-1.質管理室及び安全管理室の内部規定及び手順(ToR、会議の開催、意思決定プロセス、監視及び評価、質管理者/設備管理者/安全管理者会議、指導者の管理を含むQMS教育管理手順等)を作成し、承認する。
1-2.1)作成すべき主要なプロセス、資源、文書、記録を特定し、2)研修のニーズと指導者候補を決定するためのニーズ評価を実施する。
1-3.プロジェクト目標を達成するために必要なアクションを明示するロードマップを策定する。
1-4.質管理室および安全管理室の活動計画を毎年策定する。
1-5.活動計画で定めた日常の定例活動(必要書類の作成、質委員会の調整、質管理者・設備管理者・安全管理者会議の開催、標準作業手順書(SOP)の管理、QMS教育の実施、部門・ユニットへの支援等)を実施する。
1-6.質管理分野における指導者研修(Training of Trainers)を実施する。
1-7.内部監査プログラムを開発する。
1-7-1.内部監査を計画する。
1-7-2.監査員を養成し、監査チームを編成する。
1-7-3.内部監査を実施する。
1-7-4.内部監査のフォローアップと必要な支援を行う。
1-8.計画した目標に対するプロセスおよび活動をレビューし、活動計画を修正・更新する。

2-1.ステークホルダーワークショップを開催し、野口研の質方針・目標、戦略、計画、予算、質マニュアルを作成する。
2-2.ISOの認定・認証やSLIPTAの取得を計画している部門において、ISOの認証・認定やSLIPTAの更新に必要な予算を確保する。
2-3.各部門で作成すべき主要なプロセス、資源、文書(SOP等)を特定するためのニーズ評価を実施する。
2-4.質方針、戦略、計画を作成し、各部門の質目的と目標を決定する。
2-5.野口研全体におけるQMS啓発活動を実施する。
2-6.質管理室の支援により、各部門のSOPの作成、見直し、更新を行い、内部監査を実施する。
2-7.質管理室の計画に基づき、各部門においてQMSの内部・外部教育を実施する。
2-8.マネジメントレビュー会議を開催し、計画した目標に対するプロセスの見直し、検証を行い、改善策を明確にする。
2-9.改善策を実施する。

3-1.ニーズ評価を実施し、ギャップと改善点を特定する。
3-2.状況分析結果および計画の見直しに基づき、毎年、安全管理室の活動計画を策定する。
3-3.衛生安全委員会と協議の上、安全マニュアル、安全プログラム及びその他の必要な文書を作成する。
3-4.衛生安全委員会と協議の上、バイオセーフティ及びバイオセキュリティの研修プログラムを作成する。
3-5.バイオセーフティ・バイオセキュリティに関する部門指導者の内部・外部研修を実施し、部門指導者のプールを確立する。
3-6.職員を対象とした部門別バイオセーフティ・バイオセキュリティ研修を実施する。
3-7.訓練やシミュレーション演習を策定し、実施する。
3-8.訓練・シミュレーション演習の事後報告書を作成する。
3-9.計画した目標に対するプロセスと活動を見直し、活動計画の見直し、更新を行う。

4-1.ARL及び全てのBSL-2、BSL-3実験室の施設・設備管理に関するギャップ及び改善点(文書化プロセス、メンテナンスユニットの研修ニーズ等)を特定するためのニーズ評価を実施する。
4-2.ニーズ調査により抽出されたニーズに基づき、必要な文書(ガイドライン、マニュアル、SOP、インベントリー等)を作成する。
4-3.メンテナンスユニット及び各部門によるメンテナンスプログラム(定期的・予防的メンテナンスの手順、実験室スタッフとのコミュニケーション等を含む)及び年間活動計画を策定する。
4-4.メンテナンスユニットおよび各部門のためのトレーニングを実施する。
4-5.メンテナンスプログラム活動を実施する。
4-6.計画した目標に対するプロセスと活動を見直し、メンテナンスプログラムおよび年間計画を改善する。

投入

日本側投入

1)専門家派遣:チーフアドバイザー、質管理システム、バイオセーフティ・バイオセキュリティ、機材メンテナンス、研修管理/機材管理/業務調整等
2)研修員受け入れ:BSL-3実験室運用・維持管理、バイオセーフティ・バイオセキュリティ、質管理システム等
3)機材供与:プロジェクト事務所用家具・機器、質管理システムに必要な機材
4)第三国研修:質管理システム、BSL-3実験室運用・維持管理、バイオセーフティー・バイオセキュリティー等
5)ローカルコスト:ガーナ側負担事項以外のプロジェクト活動実施に必要な運営経費

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供
3)質管理に係る活動に必要な機材(校正用機材等)