プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)チェンナイ都市河川流域包括的洪水対策マスタープラン策定プロジェクト
(英)The Project for Formulation of Comprehensive Flood Control Master Plan in Urbanized River Basins in Chennai

対象国名

インド

署名日(実施合意)

2022年2月24日

プロジェクトサイト

タミルナド州、チェンナイ都市圏

協力期間

2022年3月1日から2024年3月1日

相手国機関名

日本語

(1)タミルナド州災害リスク削減庁
(2)タミルナド州水資源局
(3)チェンナイ都市圏開発庁
(4)チェンナイ市役所

英語

(1)Tamil Nadu Disaster Risk Reduction Agency(TNDRRA)
(2)Tamil Nadu State Water Resources Department(TNWRD)
(3)Chennai Metropolitan Development Authority(CMDA)
(4)Greater Chennai Corporation(GCC)

背景

インドは洪水、サイクロン、干ばつ、地滑り・斜面崩壊、地震・津波など様々な自然災害が多発しており、近年は気候変動の影響や無秩序な都市化により、災害被害が激甚化する傾向にある。インドで発生する災害のうち、洪水による被害が最大とされ、1995年から2020年にかけて約200回の洪水が発生し、死者数は約3万8千人、約707億ドルの被害を出している。
インド政府は2004年に国家レベルの防災枠組みを策定したほか、2005年に防災法を制定し、各州に防災計画の策定を義務付けた。更に、2007年には州防災計画作成のためのガイドラインも策定し、同ガイドラインは上位計画に沿って必要に応じ見直しをしている。「仙台防災枠組2015-2030」を受け、インド政府は同ガイドラインを更新し、4つの優先行動に沿った計画策定の方針を示し、州政府は同方針に基づき、災害対策の促進、災害予測、被害軽減のための対策を検討している。本事業の協力対象地域のチェンナイ都市圏を含むタミルナド州政府も、仙台防災枠組、持続可能な開発目標(SDGs)、気候変動に関するパリ協定、及びインド国首相が掲げる10のアジェンダの優先事項を考慮した“Tamil Nadu State Disaster Management Perspective Plan 2018-2030”を策定し、開発計画と災害軽減対策を統合する方策を掲げているが、自然災害の発災前に防災インフラ事業への投資を行い(事前防災投資)、災害リスク削減のための事業を推進する経験や技術の蓄積は乏しい。

チェンナイ都市圏では、これまでにサイクロンや大雨の影響で、1943年、1976年、1985年、1998年、2002年、2005年、2015年にそれぞれ大きな洪水被害が生じている。特に2015年12月の洪水では289人の命が奪われ、多数(約50万戸)の家屋が浸水し、電力と通信サービスが中断し、航空、鉄道、道路による輸送が停止するなど、公共および私有財産の損害を含め、甚大な経済被害が発生している。
一方でチェンナイ都市圏には全体を俯瞰した洪水対策マスタープランが無く、その結果として州政府や各ドナーは着手しやすい事業から、全体最適を意識せずに対症療法的な対策を実施しているため、抜本的な洪水リスク削減に向けた事業を行えていない。また、チェンナイ都市圏においては、洪水リスクの高い平坦な地形で開発がなされ、また住民が居住することで、洪水の氾濫原に資産が集積し、将来の洪水による被害ポテンシャルが高まっている。更には、近年の開発による従来は存在した自然の遊水機能の低下が課題である。
こうした状況の下、チェンナイ都市圏では都市洪水における多様で複雑な複合要因のメカニズム解明と、治水理念の検討及び治水安全度の設定を含む治水基本方針・治水整備計画の策定、同計画に沿った抜本的な洪水対策の実施が急務となっている。

目標

上位目標

チェンナイ都市圏における洪水対策を最適かつシステマティックに組み合わせた包括的洪水対策マスタープランに基づき、根本的な洪水リスク削減に寄与する。

プロジェクト目標

チェンナイ都市圏において、多様で複雑な洪水の複合要因とメカニズムの解明に基づく洪水対策を最適かつシステマティックに組み合わせた包括的洪水対策マスタープランを策定することにより、洪水リスク削減に寄与する。

成果

1.チェンナイ都市圏の洪水リスクが分析され、洪水発生メカニズムが解明される。
2.対象流域に対する包括的洪水対策マスタープランが策定される。
3.プロジェクト活動を通じた包括的洪水対策マスタープラン策定と災害リスク削減の実施促進に係る技術が移転される。

活動

ステージ1:基礎調査

1-1.既存の政策、戦略、計画及び関連文書の概観
1-2.対象地域における水関連災害の概観
1-3.基礎情報の収集・整理
1-4.Macro Drainageに係る既存計画、データベースおよび水文・水理モデルのレビュー
1-5.Micro Drainageに係る既存計画、データの収集・整理
1-6.補足的水路横断測量及び汀線測量
1-7.補足的底質調査
1-8.DTMの準備
1-9.貯水池の運用を含むMacro及びMicro Drainageの洪水管理施設の維持管理に係る現状調査
1-10.基礎的水文解析
1-11.Macro Drainage及びMicro Drainageの幹線水路を考慮した統合洪水シミュレーションモデルの作成
1-12.既存シナリオ(改善対策なしのケース及び既存計画の提案事業を実施したケース)に対する浸水想定域図の作成
1-13.既存のMacro Drainageシステム及び既存の提案構造物対策の評価
1-14.既存のMicro Drainageシステムの評価
1-15.既存の海岸管理のレビュー
1-16.河口及び汀線変化の分析
1-17.既存の河川修復活動のレビュー
1-18.既存の水資源開発・管理計画のレビュー
1-19.都市開発の展望と流出抑制のために自然・人工の遊水地として保全する可能性のあるエリアの特定といった適正な土地利用計画の検討
1-20.洪水災害リスク分析と都市計画の観点からの土地利用、建築規制等の適応戦略に関する実施機関との予備的議論
1-21.洪水災害準備、対応、緊急復旧に係る検討
1-22.洪水管理に関連する組織制度に係る検討
1-23.主要課題の抽出と洪水管理改善の方向性に関する実施機関との議論
1-24.環境社会配慮ベースライン調査(戦略的アセスメントを適用する)

ステージ2:包括的洪水対策マスタープラン策定

2-1.包括的洪水対策マスタープランの目的、戦略の設定
2-2.計画目標年、社会経済フレームワークの設定
2-3.計画条件の設定
2-4.対象河川流域における外水氾濫軽減計画の策定
2-5.Micro Drainageの雨水排水フレームワークのレビュー
2-6.河口閉塞対策の検討
2-7.戦略的環境アセスメントを考慮したIEEレベルの環境社会配慮調査及び代替案比較検討
2-8.都市計画への洪水リスクの反映及び残余リスクへの適応戦略の検討
2-9.洪水災害準備、応急対応、緊急復旧に係る提言
2-10.包括的洪水対策マスタープランの実施体制に係る提言
2-11.包括的洪水対策マスタープランの評価

投入

日本側投入

(1)調査団員派遣

1)総括/洪水リスク管理
2)洪水対策/水資源管理
3)雨水排水対策
4)都市開発/土地利用
5)海岸管理
6)水文・水理
7)GISデータベース/DX技術(リスク・投資効果可視化)
8)測量/維持管理
9)施設設計
10)調達・施工計画
11)災害管理
12)経済分析
13)環境社会配慮

(2)研修員受け入れ

(3)機材購入

・数値地形モデル(DTM; Digital Terrain Model)、CADソフトウェア等

相手国側投入

(1)カウンターパート、プロジェクトダイレクター、プロジェクトマネージャーの配置
(2)案件実施のためのサービスや施設、データ提供