プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)アフリカ型イノベーション振興・JKUAT/PAU/AUネットワークプロジェクト(フェーズ2)
(英)AFRICA-ai-JAPAN African Union Project - African Innovation - JKUAT AND PAUSTI Network Project(Phase 2)

対象国名

ケニア共和国

署名日(実施合意)

2019年11月20日

協力期間

2020年6月4日から2025年6月3日

相手国機関名

(和)ジョモ・ケニヤッタ農工大学
(英)Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology(JKUAT)

日本側協力機関名

京都大学、岡山大学、帯広畜産大学、長崎大学

背景

知識基盤社会1の進展に伴い、アフリカ各国は高等教育開発及び科学技術イノベーション(STI:Science Technology and Innovation)振興を通じた持続可能な経済成長、工業化や社会発展を重点政策として掲げている。その結果、サブサハラアフリカにおける高等教育就学率は増加傾向にあるが、引き続き10%以下に留まっている2。また、「研究人材の受皿の不足による頭脳流出」も複数のアフリカ諸国で依然として課題となっており、STI振興を担う高度人材の育成の継続と拡充が求められている。
これら課題に対応する実施機関のひとつとして、2008年にアフリカ連合(AU:African Union)により域内の大学院大学構想として汎アフリカ大学(PAU:Pan African University)が設立された。とりわけ理工系大学院の量と質が不足している状況において、高度人材の育成を目的に、地域ごとに担当分野、ホスト国・大学、支援パートナー国を決め、域内の5つのトップ大学に人材育成と研究の拠点となる大学院が設置された。そのうちSTI分野については、2012年にケニアにあるジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT:Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology)がホスト大学に、その支援パートナー国に日本が選ばれ、拠点大学院として2012年に汎アフリカ大学科学技術院(PAUSTI:PAU Institute of Basic Sciences,Technology and Innovation)が設置された。
JICAはJKUAT及びPAUSTIが、アフリカのSTI振興に貢献する人材を継続的に輩出することを目標に、アフリカ型イノベーション振興・JKUAT/PAU/AUネットワークプロジェクト」を実施した。同プロジェクトでは、実験棟や機材維持管理体制の構築等を通じて研究環境を整備し(成果1)、競争的資金によるケニア及びアフリカに特徴的な研究活動の実践を促進し(成果2)、それら研究活動の成果を大学定期広報誌やPAU関連会合等を通じて発信した(成果3)。その結果、JKUAT及びPAUSTIの研究環境が改善され、特に重点をおいた農学系の研究能力が向上し、アフリカの開発課題に対応した多数の研究成果やイノベーションを創出した。代表的な事例としては、園芸作物の紐栽培による乾燥地適合型技術の開発や豆類の硬化による難調理性機構の解明が挙げられる。また、JICAの民間連携スキームを活用した本邦企業との連携も進み、株式会社和郷園が栽培技術とグループ経営のノウハウを小規模農家に導入し、株式会社教育情報サービスが効率的な授業運営を可能にするeラーニング環境の開発・整備に取り組んだ(一部、継続中)。そのうえでPAUSTIでは1~6期の間にアフリカ43ヵ国より合計563名(うち修士384名、博士179名)の留学生を受入れ、175名の修士号、19名の博士号取得者を28カ国に輩出している。
以上のように、JKUAT及びPAUSTIは、STI分野の拠点大学としてアフリカのSTIを振興する役割を担い始めている。しかし、PAU構想が目指すアフリカ高等教育強化とアフリカ域内のSTI振興を担うべく理工系の高度人材育成・輩出をPAUSTIが一拠点大学として行うには、農学系だけでなく工学系の教育・研究能力の更なる向上、農工学両分野での社会実装を目指した継続的な研究活動の実践が必要である。また自立性と持続性担保のために本邦大学やアフリカ域内外の高等教育機関との連携を通じた更なる研究能力強化も不可欠である。
本事業においては、研究能力のさらなる強化に取り組むことに加えて、社会・産業界及びアフリカ内外・本邦の高等教育機関との連携強化にも取り組み、教育研究の質向上や外部資金獲得を促進する。これらを通じて、JKUAT及びPAUSTIが自立的に教育・研究・産学官連携ができる体制を確立することでアフリカの開発課題解決に寄与することを目指す。

目標

上位目標

科学技術イノベーション(STI)分野の人材が持続的に輩出され、アフリカに根ざした研究活動によりアフリカの開発課題解決に寄与する

プロジェクト目標

アフリカ・日本及びその他の地域の地域社会、産業界や高等教育・研究機関との連携を通じて、JKUAT/PAUSTIがSTI分野における拠点の教育・研究機関として確立される

成果

1.JKUAT/PAUSTIのSTI分野における教育・研究能力が向上し、定着する
2.JKUAT/PAUSTIにおいて、ケニア及びアフリカに特徴的なSTIに繋がる研究活動が実践される
3.JKUAT/PAUSTIのSTI分野の研究活動成果が、開発課題の解決のためにアフリカの地域社会や産業界に広く共有される
4.JKUAT/PAUSTIとアフリカ・日本及びその他の地域の高等教育・研究機関の間で研究及びイノベーションのネットワークが強化され、定着する

活動

1-1.JKUATの若手教員を対象とした長期研修(本邦大学博士課程留学)を実施する
1-2.JKUATの教員・技官を対象とした本邦あるいは第3国における短期研修を実施する
1-3.長期研修で博士号を取得したJKUATの若手教員に対する本邦大学教員による継続指導を行う
1-4.JKUAT/PAUSTIの学術論文掲載状況をまとめる
1-5.JKUAT/PAUSTIに競争的資金応募のための技術的助言を行う
1-6.JKUATの施設・機材整備・修理に関する技術的助言を行う

2-1.サブ・タスクフォース毎に特定分野の研究計画を策定する
2-2.イノベーションリサーチを選考し、実施する
2-3.本邦大学教員によるイノベーションリサーチのモニタリングを行う
2-4.イノベーションリサーチによる研究成果の公表状況(国内外の査読付論文や学会発表等)をまとめる

3-1.研究成果の実用化に向けた活動計画を策定する
3-2.上記3-1の計画に沿って、アフリカ域内で企業訪問をする
3-3.アフリカ域内外の企業とセミナーを計画し、開催する
3-4.地域住民や民間企業への技術講習会を計画し、開催する
3-5.民間企業との協働活動(インターンシップや共同研究等)を実施する
3-6.JKUAT/PAUSTI卒業生によるインキュベーション活動を実施し、技術的な助言を行う

4-1.アフリカ域内外の高等教育・研究機関との学術交流活動に係る計画を策定する
4-2.上記4-1で策定した学術交流活動(共同教育、共同研究)を実施する

投入

日本側投入

1.専門家派遣(長期・短期)
2.研修員受け入れ(JKUAT/PAUSTI教職員向け長期研修及び短期研修)
3.プロジェクト実施に必要な費用(共同研究費等)

相手国側投入

ケニア国側

1.カウンターパートの配置
2.日本人専門家のための執務室の提供
3.執務室の光熱費や通信費等
4.機材や設備の維持・管理・更新

AU側

1.PAUSTI学生の奨学金
2.PAUSTI教職員の雇用費
3.その他AU・ケニア政府・日本政府間での調整に係る経費等