プロジェクト活動

プロジェクトの活動内容

中間レビュー(2020年2月)に於ける評価調査を受け、PDMの変更に伴い、プロジェクト後半の活動方針の変更及び活動の見直しを行いました。
キルギス政府と共に酪農技術の改善・普及に取組むため、本プロジェクトでは、農業食品産業土地改革省及び国立獣医衛生検査院と共に、生乳生産システムに係る研修制度の構築や酪農技術普及人材の育成を通じて、生乳の乳質改善と乳量向上を図っています。
プロジェクトではEEUの市場要求を満たすため、生産現場での乳質改善及び乳量増加を目指し、中核農家での適正技術の適用、中核農家を核とした生乳バリューチェーン整備のため、コールドチェーンの確保などを試行しています。
酪農分野の支援ニーズが高い中小規模酪農家を中核農家とし、中核農家を中心とした農民の育成、適正技術の特定と導入・普及、人材の育成、生乳生産システム整備を目指しています。更にプロジェクトで試行された生乳生産改善システムを政策へ提言し、今後の普及モデルへと結びつける役割を担うプラットフォームとして、キルギスの酪農関係者による協議の場として酪農協議会の設立を支援しています。

【画像】プロジェクト活動概念図

活動1.中核農家での適正な乳牛飼養・衛生・生乳生産管理技術が適用される

生乳生産の現場である酪農場での生乳生産性改善のため、現場向けの酪農技術及び技術普及に係るニーズを調査し、適用可能な適正技術の特定を行っています。
プロジェクトでは適切な酪農技術を実施するモデルとして中核農家を選定し、適切な乳牛飼養・生乳生産管理に係る酪農技術の実証展示を進めています。酪農家の生産性向上のために、特に現場で必要とされている乳牛の飼養管理技術と衛生管理、牛群管理、繁殖管理、搾乳管理技術などについて、中核農家への必要な技術研修を行い、生乳の生産性向上や乳質改善を図ります。
今後は中核農家が中心となって周辺農民とグループを形成、農民同士で適切な酪農技術を教え合う農民間研修の導入を計画しています。また、中核農家の研修実施能力向上に向け、ファシリテーション技術などの導入や研修運営・技術移転手法などの研修によって、プロジェクト終了後のサステナビリティを担保します。

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モデル酪農家の乳牛

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中核農家でのバケットミルカーによる搾乳の様子

活動2.集乳・乳業会社での適切な生乳流通管理が習得・適用される

国内流通する生乳の90%以上は集乳業者を介した流通ラインとなっており、酪農家で生産された生乳のほとんどが保冷される事無く集乳センターまで運ばれます。そのため酪農場での集乳から集乳センターへの搬入までに4~6時間を要する場合もあり、その間の冷却が不十分であるため、生乳の乳質が悪化が大きな課題となっています。
そのため、プロジェクトでは生乳を冷やすためのバルククーラーを酪農家に設置し、保冷された生乳を集乳センターへ、そして生乳加工場へと輸送できるバリューチェーンの整備を目指しています。また、現場での生乳受取や集乳センターでの乳質検査等についても、適切な検査が行われるよう改善を目指しています。

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集乳業者による集乳の様子

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中核農家に設置されたバルククーラー(搾乳後の生乳を冷却保存)

活動3.酪農振興について協議するプラットフォームが設立される

生乳バリューチェーンを構成する関係機関は、生産者及び生産者組合、集乳業者、乳業会社はもちろん、乳質検査機関や農業省等の行政、関連団体など多岐に渡ります。キルギスの酪農現場が抱える様々な課題を協議、解決するためには、現場と行政を繋ぐパイプの役割を果たすプラットフォームが必要です。日本の酪農発展時期においても、中央酪農会等が現場と行政を繋ぐパイプとして大きな役割を果たし、発展の礎を築いてきました。
そこで、キルギスでも酪農振興に係るプラットフォームを整備し、持続的発展に向けた仕組みを構築すべく、プロジェクトでは酪農協議会設立を支援しています。

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集乳センターでの簡易乳質検査

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小規模酪農家の親子

中長期的な取り組み

遊牧民の歴史を有するキルギスでは、牛を始めとして馬や羊、山羊、ヤク等の牧畜で生計を立てている農民が多く、現在でも畜産業は主要産業のひとつとなっています。

1990年代のソ連崩壊後、キルギスでは集団農場が解体され、それら農場運営に携わる管理者や技術者、技術やノウハウ等リソースも分散されて行きました。ソ連の指導の下、集団農場方式で指導されてきたキルギス酪農には、酪農政策として農民への技術普及を行う部署や考え方が整備されておらず、中小規模酪農家は手探りの状態で酪農を新たに始めています。そのような中、EEUに加盟した同国は、生乳・乳製品生産に於いてもEEU基準の順守を迫られています。

上記のような現状下、様々な問題が山積していますが、優先的に取り組むべき重要課題として、当面は以下4つに焦点を当て、中長期的な視野で取り組む予定です。

キルギス酪農の課題解決へ向けての中長期的な取り組みとして、将来のバリューチェーン整備に係る乳生産量向上、乳質改善、集乳システム整備、酪農協議会を通じた酪農政策支援と共に、生乳生産に係るステークホルダーの底上げを目指しています。

キルギス酪農の課題と優先的取組み事項

課題1

冬季間の粗飼料不足:放牧や青草や牧草入手が困難な冬季出荷乳量が減少

取り組み

【乳量増加】冬季間の粗飼料不足を改善するための粗飼料生産供給システム整備による乳量改善

課題2

低い乳質:EEU市場要求を満たす乳質確保の喫緊課題としての乳質改善が必要で、特に残留抗生物質が喫緊の課題

取り組み

【乳質改善】EEU市場要求を満たす乳質確保に係る残留抗生物質対策への取り組み、乳質改善管理

課題3

集乳システムの未整備:酪農場から乳加工場までのコールドチェーンの確保

取り組み

【集乳システム】モバイルバルククーラー等を利用したコールドチェーンの整備、乳質検査の整備

課題4

脆弱な酪農行政:酪農現場と行政を繋ぐ酪農業界全体に渡る受け皿がない

取り組み

【政策支援】包括的な酪農分野の受け皿としての酪農協議会設立