キルギスビール“TOPOZ”の農場では

2018年6月22日

飼養管理を担当している中谷専門家は、これまでに知り合った酪農家や食品産業の関係者との連携を駆使して当地の飼料生産・利用の改善について知恵を絞っています。降水量が少なくパンが主食の中央アジアでは、大麦、小麦がメインの栽培作物です。お酒が好きな国民性もあって以前紹介したように小麦からのウオッカの製造が盛んですが、今回は大麦からのビールの生産とその副産物の利用についてもう少しご紹介しましょう。

3月に現地の飲料製造会社及びその傘下にある肉牛肥育・酪農牧場を訪問・調査しました。同社はキルギスでも有名なビールブランド、“TOPOZ”を中心に製造している会社です。中・長期的販売戦略としては国内のみならず輸出事業も開始しており、特にカザフスタンへのビール輸出は好調のようです。今後は中国をターゲットのひとつと考えているそうです。その副産物として生産されるビール滓については、一日あたり平均30トンの生産があり、他の企業のものと比較すると同社のものは水分含量が少ない事から品質的に好評価を受けています。そのほとんどは関連牧場用の飼料として利用されていますが、外部への販売も行っています。

関連牧場の概要は、肉牛肥育事業が主体で現在の総頭数は約1000頭です。敷地面積は800ヘクタールで、牛種はアラトウ種とシンメンタール種の交雑種を飼育しています。酪農も行っており、搾乳牛頭数は約80頭、個体当たりの平均乳量/dayは15kgです。給与飼料はアルファルファの乾牧草(6kg)、大麦粉(5kg)、それに加えて中谷専門家が興味を持っている副産物のビール滓(40kg)を供与しています。飼料の設計については、牧場の関係者がいろいろと試行錯誤した上で現在の状況になっていますが、牛の健康状態は良好で、肥育についても生乳生産についても良い結果が出ているとのことでした。

今回は残念ながら実際の飼料給与の現場は確認できませんでしたが、今後はこのビール滓を、1)中・小規模の酪農家がどのような形で飼料利用しているのか、2)貯蔵飼料としての観点から有効的な保存方法が確立されているのかを確認し、如何に適性技術として評価し普及に結びつけるかが課題になります。

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ビールの原料となる大麦。選別、洗浄等の工程を経てビールが製造される。

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キルギスでも大手の企業になると社員食堂が完備しているところが多い。当社では3食とも無料提供である。

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出荷を待つビール樽。

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副産物のビール滓の購入者はトラックを用いて搬送する。

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農場を訪問したときはすべての搾乳牛はパドックに移動しており、餌槽も空になっておりビール滓が確認できなかったことは残念であった。

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上澄の下にドロッと沈殿しているビール滓を掻き揚げる中谷専門家。(他日農家の牛舎脇ビール滓貯蔵槽で)