家畜衛生管理のお話し(1)

2018年6月22日

本プロジェクトは、生乳の品質を良くし生産量を増やすのが趣旨ですから、生乳が生産現場において衛生的に搾られているだろうか、乳を出している牛は健康なのだろうかなどが気になるところです。

そこで、まずプロジェクトのモデル農場で飼育している牛の潜在性乳房炎の状況を把握するための検査を開始しました。乳房炎とは乳頭の先から細菌などが乳房内に入り込み炎症を起こし、乳房内で細菌が増え体細胞数を高め乳量も減ってしまう病気です。ひどくなると牛の乳房が腫れ、熱が出て、時には死んでしまうこともあります。「潜在性」乳房炎とは、牛は一見健康そうで生乳の品質も見た目は問題なくても、検査をしてみると生乳中の体細胞数が増加していることが分かる乳房炎のことです。生産者は自分の牛が乳房炎にかかっていることを知らずに生乳を出荷してしおり、実は生乳の生産量が落ちていることにも気が付いていないという、日本においても昔から大きな問題となっている病気です。

乳房炎などで細菌が入っている牛乳を飲んで大丈夫だろうかと不安を感じる人もいると思いますが、実は生産現場で生乳中の細菌をゼロにすることは難しく、生乳は生産現場から乳業会社に運ばれ、ここで殺菌されることで消費者が安心して飲める牛乳になります。だからといって農家などの生産現場で不衛生的に搾った生乳や、乳房炎にかかった細菌の多い生乳を出荷してよいというわけではありません。また、生乳中の細菌数、体細胞数、残っている抗生物質などの基準は、各国や各地域で異なりますが基準をもとに管理されています。

乳房炎で生乳中の体細胞数が増えると風味や味に影響するといわれており消費者としても気になりますが、牛が乳房炎にかかり産乳量が減ることや治療に使用した抗生物質の残留のために出荷が制限されることは、収入の減少を意味しますので生産者にとっても大きな問題なのです。

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乳房炎の検査はまず生乳のサンプリングから

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4つある乳房からそれぞれ適量サンプリング

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検査液を入れて反応を見る

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判定シートの色と対比しながら感染状況の判定をする

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乳房炎に感染していると緑色に変色したり凝集したりする

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ちなみこの日の牛舎の気温はマイナス20度