MIDP2便り(営農計画専門家の活動報告:2017)

2017年7月11日

2017年1月〜2月中旬まで、マラウイ中規模灌漑開発維持管理能力強化プロジェクト(MIDP2)の短期専門家として、営農計画策定に携わりました。MIDP2では、灌漑農業の導入による営農改善を推進するため、政府職員の技術力向上等を目的として、4地区のモデルサイトを設定し、灌漑施設の整備や改修を行っています。
農家が実行に移す(移せる)営農計画を作成するためには、農家自身が自分達の営農状況やマーケット情報を的確把握し、自らの耕地面積や労働力、種子や肥料などの投入資材へのアクセスなどを総合的に判断し営農計画を立てることが重要です。そのため、農家グループに対するワークショップを開催し、現地実態調査で得たモデル地区(2016年度に着工したドーワ県チャンポレ地区)の営農状況と市場調査の結果を農民グループにフィードバックする機会を設けました。
チャンポレ地区は、マラウイ国中部の中山間地に位置する、50ha程度の中規模灌漑地区で、自給用のメイズを中心に、タバコ、トマト等の栽培を一部で行っていますが、農家の平均所得は低く、農業所得の向上、安定が求められています。

まず、チャンポレ地区を担当する灌漑局職員および農業普及員に対して、市場調査のブリーフィングを行い、調査の目的・手順・質問票などを、カウンターパートが農家グループの選んだ代表者4名(男女各2名)に対して現地語で説明します。その後、農家同士が質問票を用いて聞き取り演習を行い、近くの市場および農業資材店を訪問しました。

市場調査では、トマト、メイズ、インゲン、ラッカセイ、葉菜類、パプリカの買付人や卸売人など13件への聞き取りを行いました。結果は、大きめの紙に転記し、ワークショップで農家グループに向けて発表する準備をし、農家グループの代表4名および農業普及員は、市場調査を通じて、以下のような「気付き」を得ることができました。

・どの農産物もPeak-とOff-demand時でおよそ2倍の価格差があり、栽培・出荷時期を調整することで農家収入を向上できる可能性がある。
・買付人の中には、かなりの利益を上げている者もいて、品質・量が十分であれば生産地まで車で買い付に訪れることも期待できる。
・トマトは輸送に耐える少し未熟な果実が好まれている。
・買付人の間にも競争があり、良い品を安定的に供給できる産地が望まれる。
・チャンポレ地区の知名度は低く、買付人にとっては距離的に遠い印象がある。

チャンポレ地区の農家グループメンバーは55世帯で構成され、ワークショップの参加者は100名(男性83、女性17)です。ワークショップの内容が市場調査の結果報告など農家の興味と合致していたため、1世帯から複数名の参加があったこと、噂を聞き付けた近隣集落から農家が参加したことで、想定を上回る参加者数となりました。その結果、トマト、メイズ、パプリカの栽培グループが形成され、どのような品質の出荷物を、いつ、どこに売るのか検討しました。共同作業(資材購入、栽培、マーケティング)の利点を理解し、次期栽培シーズンの計画を議論しました。

パプリカについては、売り先が特定されている契約栽培で、A等級であれば販売単価も比較的高くなるため興味を示す農家が多数いました。また、出荷先候補の一つである輸出会社が、農家グループ会合に合わせてチャンポレ地区を訪れることを希望し、灌漑局職員と農業普及員が日程調整など支援し、直接話し合いを持つことができました。今後、契約栽培の規模の拡大と農家の収入向上が期待できます。

ワークショップには、他の3つのモデル地区から、県農業開発事務所職員(DADO)、農業普及調整員(AEDC)、農業普及員(AEDO)、さらに農業普及所(EPA)に配属された青年海外協力隊(JOCV)も含め合計22名が参加しました。今後、他地区でも同様の活動が円滑に実施されることが大いに期待できます。

MIDP2では、このような営農改善活動を、灌漑農業の更なる拡大にフィードバックし、マラウイ国全土に、灌漑農業が普及するよう、活動を継続しています。

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農家グループによる市場調査と結果の取りまとめ

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農家グループによる市場調査と結果の取りまとめ