プロジェクト活動

1.事業概要

(1)事業目的(協力プログラムにおける位置づけを含む)

本事業は、マラウイ国において市場志向型農業アプローチを実践することにより、対象小規模園芸農家の所得向上を図り、もって全国の小規模園芸農家の所得向上に寄与するものである。

(2)プロジェクトサイト/対象地域名

全国(28県中、園芸作物のプライオリティが低い4県を除いた24県を想定)

(3)本事業の受益者

直接受益者

カウンターパート:農業・灌漑・水開発省
普及局普及サービス部(4名)
作物局園芸部(3名)
地方農政局(8局×シニアアグリビジネスオフィサー、技官=16名)
県農業開発事務所(24県×事務所長、アグリビジネスオフィサー、技官
=72名)
普及所(各県10普及調整員と普及員×24県=普及調整員、普及員240名)

農家:各県6農家グループ 6農家グループ×24県=144農家グループ 2,880世帯(1グループ20名)

最終受益者

マラウイ全国の小規模農家約6,500世帯(注1)

(注1)本事業では、上位目標の指標として全国で20%以上の農業普及所の普及員がプロジェクトで開発した市場志向型農業アプローチを理解し、普及活動において実践することを目指している。2015年12月時点で普及員の総数は1,618名であり、その20%が少なくとも1グループに対し普及することを想定した(各グループ20名で試算)。

(4)事業スケジュール(協力期間)

2017年4月9日から2022年4月8日

(5)総事業費(日本側)

約4億円

(6)相手国側実施機関

農業・灌漑・水開発省(Ministry of Agriculture, Iirrigation and Water Development:MoAIWD)
普及局(Department of Agricultural Extension Services:DAES)
市場志向型農業アプローチを構築し、地方農政局・県農業開発事務所を通じて普及所の普及員が実践できるよう指導・モニタリングを行い、普及サービスの向上・職員の指導能力向上に取り組む。
作物開発局(Department of Crop Development:DCD)
栽培技術に関する指導・モニタリングを担当し、市場ニーズに応じた生産に関する職員の指導能力向上に取り組む。

(7)投入(インプット)

1)日本側

1)専門家派遣は、直営専門家(長期2〜3名)を想定し、他の分野については必要に応じ短期専門家を投入する(総計約200М/М)。
・総括/SHEPアプローチ
・業務調整
・園芸作物栽培
・ジェンダー
・マーケティング/市場アクセス向上
2)研修員受入(本邦、第三国):SHEPアプローチ他
3)機材供与:プロジェクト活動に必要な機材の供与(車輛、事務機器等)
4)その他プロジェクトに必要な現地活動経費

2)マラウイ側

1)カウンターパート人員の配置:
農業・灌漑・水開発省普及局局長(プロジェクトダイレクター)
同省普及局副局長(プロジェクトマネージャー)
同省作物開発局副局長(アシスタントプロジェクトマネージャー)
同省普及局普及サービス部副部長(プロジェクトコーディネーター)
2)プロジェクト専門家執務室の提供
3)プロジェクト活動経費

(8)環境社会配慮・貧困削減・社会開発

1)環境に対する影響/用地取得・住民移転

1)カテゴリ分類:C
2)カテゴリ分類の根拠:本事業では施設整備は計画されておらず、付加される環境影響は見込まれない。「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。用地取得・住民移転は想定されず、環境面における大きな影響は想定されない。

2)ジェンダー平等推進・平和構築・貧困削減

マラウイでは男性労働人口の70%、女性労働人口の80%(注2)が農業に従事しており、圧倒的に女性が多い。しかしながら、女性は土地や融資などのアクセスや技術改善や農業普及などの機会に恵まれないことが多い。本事業では農家経営における男女共同参加を促進し、ジェンダー平等推進のための取り組み方を工夫していくことが求められる。

3)その他

特になし。

(9)関連する援助活動

1)我が国の援助活動

(1)当該国における農業セクターの現状と課題の通り、SHEPアプローチ広域化の枠組みで実施している研修に、本事業の実施機関となる農業・灌漑・水開発省普及局普及サービス部、県のアグリビジネス担当職員、普及所の普及員8名が研修に参加し、SHEPアプローチを取り入れたパイロット活動を主体的に進めている。先方政府が他ドナーやセクタープールファンドから活動予算を確保するなどオーナーシップも高い。
また、技術協力「中規模灌漑開発維持管理能力強化プロジェクト」(2015年〜2020年)では、灌漑用水を利用した営農の技術支援コンポーネントを含んでおり、本事業との指導方針に関する連携が期待される。

2)他ドナー等の援助活動

農業セクターの他ドナーによる協力の内、本事業との連携の可能性のある支援は、FAOのFBSアプローチの普及である。現在、DAESはFAOのFBSアプローチをマラウイ向けにアレンジした独自のFBSアプローチを実施している。FAOはかかるDAES版のFBSアプローチについて質的な面で改善するべき点が多いと考えており、また、様々なドナーが独自にFBSアプローチを実施していることから、今後はFBSアプローチを採用するドナー(IFAD、ベルギー、EU、GIZ、NGO等)及びDAESが連携してマラウイでのFFS/FBSアプローチの方法を協議し改善していく意向である。本事業でもDAESとともに普及パッケージを開発・普及していく予定であり、FBSアプローチの教訓をどのように活用していくか、議論が必要である。

2.協力の枠組み

(1)協力概要

1)上位目標と指標

全国の小規模農家の生計がMA-SHEP(注3)パッケージの実践を通じ向上する。
指標1):全国で20%以上の農業普及所の普及員がMA-SHEP改善パッケージを理解し、普及活動において実践する。
指標2):全国でプロジェクト終了後に、MA-SHEPパッケージを利用した普及活動を通じて農業による収益増を達成した農家が増加する(農家数については事業開始後に設定)。

(注3)MA-SHEPパッケージとは、SHEPアプローチに基づく一連の市場志向型農業の活動をマラウイの状況に合わせカスタマイズした普及パッケージを指す。

2)プロジェクト目標と指標

プロジェクト対象小規模農家グループメンバーの農業所得が向上する。
指標1):プロジェクト対象小規模農家グループの平均農業所得がXX%上昇する。
指標2):プロジェクト対象小規模農家の農業所得が平均XX%上昇する。(注4)

(注4)グループの平均の指標だけでなく個人の指標も測ることにより、一部の農家の顕著な変化やメンバーの増減に影響されない個々の農家のパフォーマンスを計測するとともに、普及員の農家へのアプローチ方法を検討する資料とする。

3)成果

成果1 MA-SHEPパッケージの実施体制が構築される
(現場の活動の成果・課題に基づいてパッケージを継続的に改善し、プロジェクト対象外の農家に普及する体制が構築される)
成果2 MA-SHEPパッケージが確立される
(パイロット活動等から得た成果・課題に基づき、マラウイの現状に適した研修プログラム・教材が構築される)
成果3 MA-SHEPパッケージが継続的に対象農家グループに実践される

3.前提条件・外部条件

(1)前提条件

特になし

(2)外部条件(リスク・コントロール)

・MA-SHEPパッケージに基づく普及活動の実施に必要なDAESの予算が確保される。
・農産物の市場価格が大幅に下落しない。
・深刻な天候不順及び/または、病害虫の発生がない。

4.評価結果

本事業は、マラウイ国の開発政策、開発ニーズ、日本の援助政策と十分に合致しており、また計画の適切性が認められることから、実施の意義は高い。

5.過去の類似案件の教訓と本事業への活用

(1)類似案件の評価結果

1)技術協力「小規模灌漑開発技術協力プロジェクト」(2006年〜2009年)では、小規模農家の自助努力で実践し得る簡易で低コストの灌漑技術の開発・普及に注力したことにより、プロジェクト終了までに目標値の倍以上のグループが灌漑技術を導入し、乾季作の実践による食料の安定的供給や追加収入による生活水準の向上などポジティブな効果が報告された。
他方で、同プロジェクトの事後評価によると、農業普及活動のための予算確保不足により、プロジェクト終了後に普及員によるフォローアップが十分に行われなかったという課題が指摘されている。

2)ケニアで実施された技術協力「小規模園芸農民組織強化・振興ユニットプロジェクト(SHEP UP)」(2010年〜2015年)では、農作物の仲買人と農家との不信関係を改善するため、ステークホルダーミーティングにおいて農家・仲買人を招き情報交換の場を持った。双方がお互いのニーズを把握することでより効率的な売買取引が実現し、相互の信頼構築に貢献した。

(2)本事業への教訓

1)本事業においてもマラウイ全国を対象とし、農業・灌漑・水開発省職員(県農業開発事務所のアグリビジネス担当官、農業普及所の普及員)の能力強化・普及体制の整備を通じて農家の所得向上を目指している。本事業終了後も普及員が普及活動を行えるようにするためには、1)農家が習得しやすい技術の普及2)普及のための予算について、普及員の交通費の確保、他ドナー予算を活用する等、活動実施機関が確保できる財政能力に応じた普及パッケージの開発、といった技術面・予算面の工夫を行っていく。

2)同国の園芸作物の流通においては仲介業者が大きな役割を果たしている。本事業においても、仲買人を含めた市場関係者と農家との情報交換の場を設け、双方が信頼関係を築き利益が得られるような活動を取り入れる。

6.今後の評価計画

(1)今後の評価に用いる主な指標

(1)協力概要のとおり。

(2)今後の評価計画

事業開始15か月以内 ベースライン調査
事業終了3年度 事後評価
必要に応じ フォローアップ調査