馬の健康、ひいては食の安全を守るために

2017年1月12日

サエンバエノー!(モンゴル語でこんにちは)

モンゴルが100年に1度という強い寒波に見舞われる中、「モンゴルにおける家畜原虫病の疫学調査と社会実装可能な診断法の開発プロジェクト」のチームメンバーは、モンゴル東南部に位置するドルノゴビ県で家畜の冬季キャンプを張っている遊牧民を訪問しました。

2016年10月に、この遊牧民のキャンプで7頭の馬がトリパノソーマ病に罹っていることがわかって以来、プロジェクトチームは定期的にこのキャンプを訪れています。それは、病気に罹っているか簡単に診断できる簡易迅速キットの開発に必要な血液サンプルを採取させてもらうと同時に、プロジェクトへの協力の御礼も込めて馬の治療をするためです。

ちなみにトリパノソーマ病とは、トリパノソーマ科に属する原生生物(単細胞の微生物)によって引き起こされる伝染病で、馬では生殖器や皮膚の病変、貧血、発熱、神経麻痺が主な特徴となります。モンゴルでは主に馬やラクダにその症状が見られるのですが、特に馬は馬肉が高たんぱく・低カロリーとしてモンゴル人の間で人気があることから、馬の健康は食の安全を守るうえでの重要事項の1つと言えます。

プロジェクトが開発を進めている簡易迅速キットは、今まで首都の研究室に血液サンプルを送って検査しないと病気に罹っているかわからなかったものが、地方に住む獣医師や遊牧民がその場で簡単に調べられるようになる、例えれば薬局で売っている妊娠検査薬のようなものです。2014年にプロジェクトが始まって以来順調に開発が進んでおり、2017年にはモンゴル政府の認可が得られるよう準備を進めているところです。

今回、この遊牧民を訪れるのは4回目。彼らは頻繁に移動しているため、毎回訪れる場所が違うので探すのにも一苦労です。今回は馬肉を売るために幹線道路近くにキャンプを張っていたため、比較的簡単に探すことが出来ました。

車の温度計が氷点下15度を示す中、血液サンプルを採取します。が、柵の中を逃げ惑うお目当ての馬を捕まえるのは温暖な気候下でもたいへんなのに、極寒の中ではよりたいへん!馬の持ち主だけでなく、プロジェクトのドライバーさんまで駆り出し総勢5人の男性たちが馬と格闘します。捕まえた後は、凍える手で血液採取と治療薬の注射。45分ほどで全7頭の血液が採取できたのですが、氷点下15度での45分は防寒具をしっかり着ていてもつらく、この寒さの中、家畜の健康を守ろうと働くプロジェクトのメンバーには頭が下がりました。

最終的には、2017年の春に生まれる仔馬の子育てが始まる前までには全ての馬が健康になることを目指しており、今後も定期的にこの遊牧民のキャンプを訪れる予定です。

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プロジェクトで開発中の簡易迅速キット

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病気の馬から血液を採集

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市場で売られている馬肉(モンゴル人は、風邪予防に馬肉をしょうがとにんにくで煮込んだスープを食べるそうです)