1歳6か月児健康診査の試行−お母さんたちの育児不安に寄りそうために−

2017年9月4日

障害や発達の遅れを早期に発見し、早期からの発達支援に繋げていくことは大変重要です。それにより、二次障害を防いだり、障害を持ちながら生活していくすべを効果的に学習したり、社会参加への準備をすることができます。また、育児不安を抱える保護者を支えていくことにもつながります。

日本では、母子保健法により定められた乳幼児健康診査(満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児及び満3歳を超え満4歳に達しない幼児を対象)が、障害や発達の遅れの早期発見に大きく貢献しています。今日では、それ以外の月齢/年齢においても自治体ごとに健康診査が設定され、身長体重等の計測の他、医師による診察、発育発達の確認、保健師、栄養士、母子保健推進員による相談、歯科衛生士によるブラッシング指導等が行われています。

モンゴルの家庭病院でも乳幼児に対して母子健康手帳を用いた健康診断は実施していますが、日本のような定期健康診査は実施されていません。そこで本プロジェクトでは、パイロット区であるバヤンゴル区において、1歳6か月児の健康診査を試行することにしました。

健康診査の試行に先立ち、その主体となるバヤンゴル区保健センターと協議を重ねながら、健康診査で使用する問診票案を作成しました。その後、実際に健康診査にあたる同区家庭医109人を対象に研修を行うとともに、問診票案を見直しました。

このような準備の基、2017年5月8日〜12日、モンゴルで初の1歳6か月児健康診査が、区内4か所の家庭病院を会場として実施されました。5日間の受診者数は377人、これは対象者437人の約86.3%にあたります。健康診査を受診したお母さんの一人は、インタビューに次のように答えました。

「うちの子どもは他の子どもと同じように成長しているのか、そうでないのか、私たちは分かりません。(普段から)いくつかのことについてはお医者さまに尋ねていますが、そういった不安をぶつけることはできていませんでした。(今回の健康診査で)これまで分からなかったたくさんの疑問の答えを得ることができました。」

バヤンゴル区保健センター、家庭医の並々ならぬ努力で、1歳6か月児健康診査は6月以降も毎月第四週の水曜日・木曜日に継続して実施されています。現在、モンゴルでは乳幼児健康診査の実施を盛り込んだ母子保健法の制定が議論されています。バヤンゴル区での試行を続けながら、いかに家庭医の業務負担を軽減し、効果的・効率的に健康診査を実施することができるか、検証していきます。

また10月からは、健康診査の結果、発達の遅れがみられた子どもとその保護者に対するフォローアップとして「親子教室」の試行も開始します。育児不安を抱えるお母さんたちを支える教室となるよう準備を行っています。

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第一回健康診査開催の記念式典

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健康診査の様子