プロジェクト活動

モザンビークの農業部門はGNPの27%、総輸出額の10%を占め、労働人口の約80%が従事している基幹産業です。同国北部ナカラ回廊地域の熱帯サバンナ地域は土壌と気候が農業に適しており、農業生産拡大の大きな可能性を秘めているものの、農業開発が進んでおらず、大部分は農地として活用されていない状況にあります。そのうえ、小規模農家は伝統的で簡素な農業技術に依存しており、土地生産性も低い状況にあります。

こうした背景から、ナカラ回廊地域を対象として、2011年4月より小規模農家の貧困削減、食糧安全保障の確保、民間投資を活用した経済発展に寄与する熱帯サバンナ地域の農業開発を目指す「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発プログラム(ProSAVANA-JBM)」が開始されました。

ProSAVANA-JBMは、かつてモザンビークと同様に広大な未開墾の熱帯サバンナ地帯を有していたブラジルが、日本との協力を通じ、1970年代から農業開発協力(セラード開発)に取り組み、その知見や農業技術を活用し、世界の食糧問題の解決に貢献することを目的としています。また、単に農業開発を進めるだけではなく、地域の小規模農家と農業開発に参入する投資家が共存できるモデルの構築を目指しています。

もちろん、ブラジルで培われた農業開発技術が、そのまますべてモザンビークで活用できるわけではありません。両国では農業環境や社会経済環境において異なる部分があることも事実です。

そこで、本プロジェクトでは、モザンビーク・ブラジル・日本の各農業研究者が協力し、まずは気象や土壌等の農業環境の把握のための活動を通じて、ナカラ回廊地域の2か所の地域農業試験場(ナンプラ農業試験場、リシンガ農業試験場)の研究能力向上を図ることにしています。そして、付加価値の高いダイズなどの商品作物とトウモロコシやキャッサバなどの伝統的食用作物を組み合わせて、多地点の連携試験を実施することによって、ナカラ回廊周辺地域に適合した、適正な作物作付体系と農業技術を選択するために農家や普及機関がツールとして使える「意志決定支援モデル」の確立を目指します。さらに「モデル」の実践としてパイロット農家の圃場で、地域農業環境に最適な新しい作付体系や農業技術の実証展示を実施し、試験場の技術移転に関わる能力向上も図っていきます。