カヤー州ロイコー総合病院の医師、看護師が役者に

2017年8月18日

ロイコー総合病院では週に1度妊婦健診があり毎回60〜70名の妊婦さんが訪れます。産科の医師や看護師は、妊婦健診の際に、健診の重要性、妊娠中の栄養、医療施設での出産、母乳育児などについての保健教育を実施しています。プロジェクトではこれに寸劇を取り入れて、エンターテインメントの形式をとった保健教育(エンターエデュケーション:Enter-Education)を開始しました。

寸劇を用いた保健教育は珍しいものではありませんが、プロジェクトでは病院の医師や看護師が自ら劇を演じるということを重視しました。ロイコー総合病院があるカヤー州はタイとの国境に近い小さな州で、少数民族も多い地方です。日本の山村でも昔はそうであったように、地方の住民は病院の医師や看護師を近寄り難く感じていることが少なくありません。そこで、医師や看護師が、多少恥ずかしがりながらも、演じる劇をとおして、地元の妊婦さんたちが産科の医療スタッフに親しみを感じ、また医療スタッフの側も妊婦さんの生き生きとした表情に触れる機会となって、両者の心理的距離を縮めることにプロジェクトとしての狙いがあります。

ミャンマーでは地方農村部の妊婦健診受診率は7割を超えていますが、保健医療施設で出産する女性は3割に満たず、10人中7人の女性が自宅で出産しています。そのような現状を踏まえ、安全な妊娠と出産のために「継続した妊婦健診受診と医療施設での出産の重要性」を寸劇のテーマに選びました。

台本は、産科医長監修のもとプロジェクトの現地スタッフが作成しました。寸劇のあらすじは、定期的に妊婦健診を受けていて異常も早期発見できて病院で出産した女性と、夫や義理の母親に理解がないため妊婦健診を一度も受けずに自宅で出産して難産となり、病院に緊急搬送されてなんとか無事に出産できた女性、二人の物語です。

1週間の練習で初演を迎えました。70名の妊婦さんが見守る中、産科の医師、看護師、看護助手たちが、緊張したり恥ずかしがったりしながらも、堂々と40分の劇を演じました。妊婦さんも皆楽しんでくれましたが、「役者」たちも「練習は大変だったけど、楽しかった」と興奮していました。

ロイコー総合病院産科では、今後も月に1度ぐらいのペースで上演を続けていく予定です。病院の医師や看護師による寸劇という方法でのエンターエデュケーションには、脚色、配役などいろいろ難しい点もありますが、プロジェクトでは、このような手法を導入することによって、患者・妊婦が正しい情報を得ることができ、ひいては、より適切な受療行動にもつながっていくよう、カウンターパートへの支援を続けていきます。

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主人公の二人が買い物中に出会い、お互いの妊娠の経過を話すシーン

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自宅出産で突然の異常をきたした女性が病院に緊急搬送されたシーン

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観劇中の妊婦さんたち

【画像】寸劇が終わり、ほっとした表情で観客に挨拶する出演者と上演を指揮した産科医長(写真右から4人目)