日本人指導教員のミャンマー訪問(その1)

2015年11月16日

今年4月より医学教育強化プロジェクトの長期研修員として、ミャンマーの医科大学教員でもある医師12名が六大学(千葉大学、新潟大学、金沢大学、岡山大学、長崎大学、熊本大学)の博士課程で研究に従事しています。彼らはみな初めて日本に長期滞在し、ミャンマーとは大きく異なる環境で医学基礎系の研究に励んでいます。

彼らを受け入れている指導教員は、彼らの研究が実際にミャンマー保健医療の発展に役立つよう、そして彼らが日本での学びをもとに後輩医師育成を効果的に行えるよう計4年間の研究生活を支援していきます。これら博士課程研修員の日本人指導教員12名のうち次の3名が、2015年9月から10月にかけてミャンマーを訪問しました。

長崎大学病理学新野大介准教授(9月6〜8日)

長崎大学病理学福岡順也教授のもとで長期研修を行っているのはDr. Aung Myo Hlaingです。同研修員はヤンゴン第二医科大学出身のため、新野准教授は同大学を訪問し、病理学教授Prof. Myint Myint Nyeinと面談、及び教育病院の北オカラパ総合病院検査部を視察しました。また、公立病院との比較も兼ねて、私立ビクトリア病院の病理部も訪問しました。ミャンマー側教授との面談では、長期研修員に高度で最先端の診断技術を求めているとの発言があり、今回の現場視察を踏まえ、この点についても、さらに長期研修員との議論が深まることが期待されます。

熊本大学エイズ研究センター所長松下修三教授(9月13〜15日)

松下教授は、微生物学長期研修員Dr. Win Thidaを受け入れています。初日ヤンゴン第一医科大学にて、同教授の申し出により、学長Prof. Zaw Wai Soeをはじめ約40名に対しHIV-1感染症・AIDSの臨床と研究の現状についてプレゼンテーションが行われました。プレゼン後、今後の研究協力の可能性に関し、松下教授と微生物学科長Prof. Wah Win Htikeは長期研修員の研究プロトコールを検討すること、松下教授の帰国後も協議を継続することに合意しました。また、ミャンマーにて最初にHIV/AIDS治療を始めたWaibargyi病院(200床の感染症病院、所在地:北オカラッパ)を訪問し、ミャンマーでの同分野の第一人者と言われるProf. Htin Aung Sawと広範な意見交換を行いました。

千葉大学分子ウィルス学中本晋吾助教(10月20〜22日)

千葉大学の白澤浩教授のもとで、微生物学長期研修員のDr. Nang Nwe Winが研修を行っています。同研修員はC型肝炎ウィルスの研究を計画しており、日常的に指導にあたっている中本助教が来緬、ヤンゴン第一医科大学の微生物学科長Prof. Wah Win Htike等と面談しました。面談を通じて、保健予算から研究に割り当てられる資金が限定的であるという状況や、一方で、研究者としてもプレゼンテーションの能力向上などがさらに必要だという点が明らかになってきました。また、ヤンゴン総合病院と国立衛生研究所を訪問のうえ検査状況を視察し、特に肝炎ウィルス検査について聴取しました。

今回の訪問では、日本側の指導教員から異口同音にミャンマー長期研修員の実習不足、研究の経験不足が指摘されていますが、このように現地の指導教員との面談及び施設訪問を通じて、ミャンマーの厳しい研究環境を理解頂くとともに、さらに研究指導を進める上での課題について認識を深めて頂くことができたと思われます。

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長崎大学新野准教授(中央)とヤンゴン第二医科大学Aye Aung学長(中央右)及びMyint Myint Nyein教授(中央左)

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ヤンゴン第一医科大学Zaw Wai Soe学長(右)他に対しプレゼンを行う熊本大学松下教授(中央)

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ヤンゴン第一医科大学実習室を視察する千葉大学中本助教(右)とWah Win Htike教授(左)