現地普及セミナー(3):麻酔科

2016年8月24日

ミャンマーの麻酔科学会所属医師は約650人、現役医師は約400人と言われています。日本の麻酔学会所属医師は約8000人であり、人口比率からみても日本の1/10程度で、圧倒的に少ない人数です。ミャンマーでは麻酔科の修士課程と博士課程があり(いずれも3年間)、2016年5月時点で博士号取得者は約50人です。一般的な麻酔技術は十分なので、当プロジェクトの研修員には移植医療などの最先端医療の麻酔技術と急性疾患や重篤疾患など集中管理技術を修得させたい、とヤンゴン第一医科大学麻酔科・集中管理教授は期待しています。

日本側では、プロジェクトの国内協力機関6大学のうち熊本大学が麻酔科研修を担当し、2015年度の研修員としてDr.Khin Kantkaw(修士課程修了)とDr.Lung Naing(博士課程最終学年在籍中)を受け入れました。彼らがミャンマーに帰国後、2016年5月31日に現地で普及セミナーを開催することとなり、熊本大学麻酔科の山本達郎教授、集中治療部鷺島克之助教、野中崇宏特任助教の3名がセミナー支援のためにミャンマーを訪れました。

セミナーはヤンゴン第一医科大学の教育実習病院であるヤンゴン総合病院の研修センターにて開催され、ヤンゴン第二、マンダレー、マグウェーの全4医科大学より麻酔科修士・博士課程在籍中の医師及び教員等、約50名が出席しました。帰国研修員Dr.Khin Kantkawは麻酔全般と集中治療部(ICU)での研修概要を報告し、その中で日本とミャンマーとの技術的相違点に触れ、印象に残った点としてシステマチックな患者のアセスメントや治療計画の作成、毎朝のカンファレンス、日本人の責任感やチームスピリットなども報告しました。Dr.Lung Naing は胸部外科麻酔・肝臓移植手術麻酔及びICUマネジメントについて両国の相違点に着目して報告し、研修の意義を理解する上でも非常に有意義であったと思われます。

山本教授は研修全体の説明に加え、2016年4月の熊本地震時に大学病院手術室で患者を守る医療者の様子をビデオの画像で紹介し、患者へのケアと安全性をアピールしました。また2016年度研修員候補2名・教授とも面談し、研修要望内容と将来展望を直接確認しました。セミナー閉会時にはヤンゴン第一医科大学学長も出席し、2017 年度以降の研修内容・期間について山本教授及びミャンマー側教授陣と協議を行いました。このような関係者同士の連携が成果を生んでいくものと期待されます。

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麻酔科普及セミナー参加者:ヤンゴン第二医科大学学長(中央)とともに

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熊本大学での研修についてプレゼンテーションする帰国研修員(Dr.Khin Kantkaw)

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2016年度研修員候補及びミャンマー側担当教授と面談する山本教授(右)