2016年12月のニュース1:平澤正短期専門家による「植物水分生理学分野」の研修

2016年12月31日

2016年12月6日〜16日の日程、東京農工大学名誉教授平澤正教授を短期専門家として招き、「植物水分生理学」分野の研修が行われました。研修には、関連する農学科、植物育種・生理・生態学科、土壌及び水科学科から各2名、園芸及び農業バイテク学科と農業経済学科から各1名の計8名と、農業畜産灌漑省の農業局からも2名が加わり、合計10名が参加。更に、これらの研修参加者に加えて、大学院生や若手スタッフの若干名も、オブザーバーとして講義ならびに実習に不定期に参加しました。研修はYAUの3名のコーディネーターによる周到な準備・運営のもと円滑に進み、非常に有意義な機会となりました。

研修最初の3日間のメニューは講義です。講義ではまず、主に「植物と水との関係」について、植物体の水ポテンシャルと含水量、水ポテンシャルの測定方法とその構成要素、土壌—植物—水の関係、土壌—植物—大気の中での水の動き、水不足の生理作用への影響、耐乾性と水利用効率などについてお話しいただきました。続いて、平澤教授らが長年研究を行ってきたイネを中心に、イネ生産における水利用、耐乾性と水利用効率に関連するイネの生態生理的特性、作物の耐乾性向上についても講義が行われました。講義は受講生の理解度を確認しながら進められ、受講生との間では多くの質問が飛び交いました。

研修の後半は、植物水分生理学の研究を行う上で必須である植物葉の水ポテンシャルと光合成蒸散速度の測定方法の教授と技術習得が中心となりました。水ポテンシャルの測定には園芸及び農業バイテク学科のPressure Chamberが、また光合成蒸散速度の測定には農学科、植物育種・生理・生態学科のPhotosynthetic Meterが用いられ、無償資金協力「農業人材育成機関強化計画」による導入機材が活用されました。実習で、10名の研修参加者を2グループに分け何度も反復測定が行われる等、受講生全員が操作方法を習得できるように配慮しつつ実施されました。実習で得たデータについては、グループごとにデータ入力を行い、これらのデータに基づく作図や作表の指導が行われるなど、データ解析手法の初歩についても研修が行われました。

【画像】

平澤専門家による講義と受講生たち(2016.12.7)

【画像】

光合成・蒸散の測定実習(2016.12.15)

最終日には、両グループによる発表が行われ、活発な質疑応答が交わされ、平澤専門家からも講評をいただきました。また、植物水分生理に関連する実験方法や日ごろ感じている疑問点などにも、平澤専門家から適切な助言をいただきました。
また、研修期間の休日を利用し、平澤専門家・カウンターパートらとともに中央乾燥地帯(Central Dry Zone)への調査旅行へ赴きました。Nyaung Ooにて実施中のJICA技術協力「中央乾燥地における節水農業技術開発プロジェクト」、YAU Magway Campus、Magway DOA Office等を訪問し、平澤専門家に中央乾燥地帯の実態を観察いただきました。

本研修を通して、作物の水分生理に関する知識と実験技術の習得が、今後のYAUにおける研究活動の展開へとつながっていく重要な研修分野であることが再認識されました。そのためには、関連する機器類の操作や取得したデータの解析、解釈を若手教員が自律的に実施できるようになることが重要であり、プロジェクトでは、今回の研修を単発で終わらせることなく、研修から研究へと展開する長期計画に沿った継続的な取り組みとして発展させていくことを計画しています。