民主化の風に乗って新しいニュースに挑戦中

2018年8月29日

MRTV(ミャンマーラジオテレビ)は、現在は国営放送であるが、ちかく公共放送に生まれ変わる予定である。その民主的改革を後押しする技術協力プロジェクト「MRTV Next」が始まって2年が過ぎ、2018年6月より3年目が始まった。放送に関する様々なノウハウと機材の支援を通じてMRTVは改革の歩みを進めている。

プロジェクト1年目(2016年度)は、日本人専門家が約百人の記者とデスクを対象に研修を行い、主に国営放送と公共放送の違いを認識することから始めた。一言で言えば、国営放送は政府の発表をそのまま伝える放送局である。政府から指示されたネタを取材し、政府系通信社が送ってくる原稿をアナウンサーが読み上げれば事が足りる。一方、公共放送は言論の自由を行使し、国民が必要とするニュースをジャーナリスティックな視点で放送する放送局である。自分たちで情報のアンテナを張り巡らせて、自ら見聞きし、ニュースとしてふさわしい部分を切り取って放送する調査報道的な技能が求められる。

プロジェクト2年目(2017年度)は、記者たちの日常の取材に専門家がアドバイスを行った。いきなり本格的な調査報道は難しいので、短い企画ニュース制作からスタートした。大きなテーマを扱う場合は、身近な事例を探して紹介するのがコツだが、鳥の眼(俯瞰)と、虫の眼(身近な事例)の両方が必要なことも伝えた。実際には、2017年10月にヤンゴン郊外に日本の支援でできたティラワ経済特区の取材があった。ミャンマー経済に貢献しているか、雇用は増えたか、何か問題は発生していないかといった切り口でMRTV記者が取材し、7分の企画ニュースが放送された。記者の顔には達成感が溢れていた。指導をしている元テレビニュースマンの林樹三郎専門家は「取材現場で記者が遭遇した予想外のことにすぐに対応できるようになるには時間がかかるが、新しいことへの挑戦は見ていて気持ちがいいです」と語っている。また取材してきた映像をどのように短く編集するかという研修も行われた。記者たちはこれまで見様見真似でパソコンによる編集をしてきた。日本人専門家から初めて受ける本格的な指導に真剣に取り組んでいた。

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調査報道取材手法を指導する林専門家

以上がプロジェクトの一例だが、このほかにMRTV全体の組織改革、番組編成のノウハウ、予算づくり、機材支援など広範囲な強化策が進行中である。日本人専門家チームのリーダー、南部尚昭専門家は、改革を後押しして民主国家の報道機関としての緊張感を持ってもらうのがプロジェクトの狙いだと指摘している。

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手持ちカメラでの俯瞰撮影を指導する南部リーダー

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番組制作企画会議